ハードウェア

仮想通貨相場の高騰でゲーマーはグラフィックボード入手がますます困難に


Ethereum(イーサリアム)などの仮想通貨相場が2017年後半から高騰しました。この相場上昇を受けて仮想通貨マイニングの収益性が高まり、マイニング目的のマイナーによるグラフィックボードの争奪戦が起き、その結果グラフィックボードの価格が上昇し続けています。本来、ゲーム用に作られたはずのグラフィックボードがゲーマーの手に渡りにくい状況が世界的に起こっています。

Here’s why you can’t buy a high-end graphics card at Best Buy | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2018/01/cryptocurrency-boom-creates-insane-global-graphics-card-shortage/

人気の仮想通貨イーサリアムの相場は、2018年1月初旬の大暴落を経てもなお、2017年11月の相場から比べて約4倍という取引価格を維持しています。


専用のASICマシンを使うことが事実上必須であるBitcoin(ビットコイン)に対して、メモリ容量が求められるイーサリアムはASICマイニングが効果的でないため、いまなおPCの高性能グラフィックボードによるマイニング競争が繰り広げられています。仮想通貨を採掘するマイナーが増えれば増えるほど採掘難度が高まる仕組みが採られているとはいえ、相場の急騰ペースは想像以上に速いため、収益性が高まっているのが現状です。

このような状況の下、必然的にマイナーたちが高性能で高収益を期待できる高性能グラフィックボードを買い漁るという現象が世界的に起こっており、アメリカの小売店ベストバイでは、高性能グラフィックボードの店頭在庫が常に切れている状態が続いているそうです。AMD Radon RX580やNVIDIA GeForce GTX 1080など高性能グラフィックボードは高収益なマイニングが可能であるため軒並み売り切れで、もっぱら店頭で販売されているのはマイニングにもPCゲームにも不向きなローエンド向けのグラフィックボードのみだとのこと。


旺盛なマイニング需要に下支えされてグラフィックボード価格も上昇しており、アメリカではもはや人気のグラフィックボードをメーカー小売価格で入手することは非常に難しい状況になっているようです。

日本の状況もアメリカほど品薄ではないものの、ほぼ同様。2017年末から2018年1月にかけて高性能グラフィックボードの最安価格は急騰しています。


PC Part Pickerのデータによると、アメリカでは2017年春に約250ドル(約2万8000円)で購入できたRX 580の価格は、2017年7月に350ドル(約3万9000円)に上昇し、秋に値下がりした後、2017年末から急騰し、記事作成時点では400ドル(約4万4000円)を超えているとのこと。販売店ベースの平均価格であり、とにかく商品を早く手に入れたいという客を狙った価格設定をしている例は除かれているとのこと。Amazonのマーケットプレイスでは600ドル(約6万6000円)以上の値付けがされたRX 580が販売されているそうです。

マイニングの収益性の現況を調べるためにArs Technicaが取材した、NVIDIAのGeForce GTX 1060・GTX 1070・GTX 1080の3種類のグラフィックボードを使ってイーサリアムをマイニングしているEdward氏によると、GTX 1060であればカード1枚につき1日に5ドル(約550円)、GTX 1080であれば1日につき8ドル(約890円)分の仮想通貨をマイニングできているとのこと。たとえメーカー小売価格を大幅に上回る価格設定がされている状況でも、数カ月で回収できる計算のため、仮想通貨マイナーの中には、朝起きて最初にすることはベストバイなどの小売店で高性能グラフィックボードが入荷しているかをチェックする作業で、価格に関係なく即買いするという人は多いそうです。

サウジアラビアのソフトウェア開発者のスレイマン・アラクエル氏によると、電気代が安いサウジアラビアはマイニングに魅力的な土地柄もあることから、地元のPCパーツ店でハイエンドのグラフィックボードを欲しいと告げると、「売り切れ」という返事とともに、「おたくもマイニングかい?」と言われるのが日常だとのこと。「中には、今後6カ月間に入荷するすべてのグラフィックカードを予約したというマイナーもいる」とアラクエル氏は述べています。


このようなマイニング需要が原因でグラフィックボードの価格が高騰したり、入手困難になっている状況に対して、グラフィックボードメーカーであるNVIDIAやAMDは高い利益を上げて大喜び……かというとそうではありません。本来、PCゲーム向けに製品化されているグラフィックボードがゲーマーたちの手に渡らないという苦情を受けたNVIDIAはヨーロッパの小売店に対して、仮想通貨マイナーではなくゲーマーに売るため、グラフィックボードの販売数を1人につき2枚までに制限し、マイナーによる大量買いを規制するようアナウンスをしています。

NVIDIA Asks Retailers To Stop Selling To Miners & Sell To Gamers Instead
https://wccftech.com/nvidia-instructs-retailers-stop-selling-miners-sell-gamers/

グラフィックボードメーカーからすれば、激しい相場の乱高下によって仮想通貨マイニングの需要が大きく左右されることからいつ需要が一気に消え去るかわからないため、グラフィックボードの製造ラインを増強することは難しいのが事実です。いつ消え去るか分からないマイナーたちのために、長く付き合ってきたゲーマーたちが割をくっているという状況が望ましいものではないのは確実。さらに、仮想通貨マイニングによって酷使されたグラフィックボードが中古市場に大量放出されることは、保守点検費用を高めたり、新規グラフィックボードの需要を低下させたりする危険性があることからも、マイナーがグラフィックボードを買い占める状況を望んでいないようです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Bitcoinの価格上昇で「趣味のマイニング」が復活か - GIGAZINE

AMDの「Radeon RX Vega 64」は史上最高のマイニンググラボでPCゲーマーは入手困難の憂き目に遭う可能性 - GIGAZINE

仮想通貨マイニングに特化したGPUアクセラレータを9台搭載するマイニングシステムをInno3Dが発表 - GIGAZINE

Bitcoinを思う存分堀りまくれるグラボ13枚搭載可能な「ASRock H110 Pro BTC+」 - GIGAZINE

ビットコインの高騰は数名による価格操作であった可能性があることを研究者が指摘 - GIGAZINE

ビットコインなど仮想通貨への投資市場の過熱を風刺するアニメーションが公開中 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ハードウェア,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.