コラム:東芝、上場維持への見苦しい努力

コラム:東芝、上場維持への見苦しい努力
 4月26日、監査法人の変更という東芝の動きは、同社が上場廃止の回避に死にもの狂いになっていることを示している。写真は東京で2月撮影 (2017年 ロイター/Toru Hanai)
Quentin Webb
[香港 26日 ロイター BREAKINGVIEWS」 - 監査法人の変更という東芝<6502.T>の動きは、同社が上場廃止の回避に死にもの狂いになっていることを示している。
ロイターは26日、経営危機に陥っている同社が、昨年契約したばかりの4大監査法人の1つを切る方針だと報じたが、そうなれば準大手の監査法人を使うリスクを強いられかねない。当局と投資家の信頼を取り戻さなければならない同社にしては、見苦しい展開だ。
東芝は、上場廃止を回避するため出来ることをすべて行っている。廃止となれば、同社株の売買がより困難になり、大口投資家の多くは株を売却せざるを得なくなる。40万人近くの個人投資家が持つ東芝の株券は、紙くず同然となる。
ハードルは3つある。まず、東京証券取引所による上場維持可否の審査で、長年の内部管理体制の問題点が改善したと判断されなければならない。次に、来年3月までに債務超過の状態から抜け出さなければならない。そのため、2兆円超で半導体メモリー事業を売却する。3番目に、通期決算を速やかに、できれば5月15日までに、遅くとも6月後半までに公表しなくてはならない。
一見、PwCあらた監査法人を変更するのは奇妙な対応に見える。同監査法人とは、利益操作を長年見落としていた新日本監査法人に代わり、昨年契約を結んだばかりだった。利益相反があるため、4大監査法人の中から代わりを見つけられる可能性は低いと、日本経済新聞は報じた。準大手の監査法人は、東芝のような複雑で国際的な優良複合企業を適切に監査するだけの経験やリソースに欠ける恐れがある。
だがPwCあらたと東芝は反目している。関係者によると、監査する側は米連邦破産法11条の適用を申請した原発子会社ウエスチングハウスについて前会計年度分も調査したい意向だったが、東芝は反対。東芝の直近の決算では、数週間も延期した末、意見の表明を見送った。
この対立により、東芝が通期決算を期限までに公表できないリスクが生じた。東芝は理論上、監査法人の適正意見を得ずに決算を発表することができるが、そうなれば内部管理体制が健全化したと東証が判断することがより難しくなりかねない。
PwCあらたをこうしたやり方で切ることは、市場も不安にさせそうだ。だが東芝に、魅力的な選択肢はない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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