コラム:米ETF市場にも高リスク志向の波

コラム:米ETF市場にも高リスク志向の波
 5月24日、かつては刺激の乏しかったETFでリスクを取る動きが強まっている。世界最大のETFスポンサー、ブラックロックの子会社は先週、自動車ローンやクレジットカード債権、学生ローンなどを裏付けとする証券化商品に投資するETFの承認申請をSECに提出した。写真はニューヨークで2016年10月撮影(2017年 ロイター/Brendan McDermid)
Tom Buerkle
[ニューヨーク 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米シティグループのチャック・プリンス元会長は2007年に、その後の世界金融危機につながる狂乱的な貸し付けについてこう語っていた。「音楽が演奏されている間は踊らなければならない」。今また、かつては刺激の乏しかった上場投資信託(ETF)でリスクを取る動きが強まっている。
世界最大のETFスポンサーで、iシェアーズを手掛けるブラックロックの子会社は先週、自動車ローンやクレジットカード債権、学生ローンなどを裏付けとする証券化商品に投資するETFの承認申請を米証券取引委員会(SEC)に提出した。住宅ローン債権を裏付けとするETFは以前から存在するが、その他の消費者債務を裏付けとするETFは初めとなる。
この申請の2日前に公表されたニューヨーク連銀のデータによると、第1・四半期の米家計債務残高は12兆7000億ドルと過去最高を記録した。特に学生ローンはこの10年間で2倍以上に膨らみ、残高1兆3000億ドルのうち延滞と返済不履行の比率が11%に達した。また自動車ローン市場についても残高が高水準に達しているとの指摘が当局者から度々上がっている。
今月初めにはニュージャージー州に本拠を置くフォースシェアーズが、S&P総合500種指数に4倍のレバレッジを掛けるETFの立ち上げを申請し、SECからいったん承認を得た。フォースシェアーズは小さな企業で、ETF運用の経験がない。
この手のETFは以前から存在するが、モーニングスターによると運用資産は総額360億ドルにすぎず、レバレッジは何年も3倍が限度となっていた。SECはメアリー・ホワイト前委員長の時代にはレバレッジ型ETFの発行を抑制する姿勢だった。ジェイ・クレイトン新委員長の考えは異なるのかもしれないが、米紙ウォールストリート・ジャーナルによるとSECはその後、フォースシェアーズの申請についての判断を保留し、その理由は説明していない。
SECの判断にかかわらず、ファンドの作り手のリスクテイクの意欲はとどまるところを知らないようだ。ETFのスポンサーは、高いリターンを求める投資家を惹きつけようとしている。
スポンサーは市場で傑出した存在になろうともしている。ステートストリートの旗艦ETF「S&P500連動型ETF」は運用資産が2290億ドルに上る。
米ETF業界は、投資家が簡単に市場を利用できる手段を提供して支持を集め、急速に成長してきた。新たな投資戦略は、投資家にとってもファンドにとっても高いリスクを伴う。
●背景となるニュース
*米資産運用大手ブラックロックの子会社は19日、自動車ローンやクレジットカード債権、学生ローンなどを裏付けとする証券化商品に投資するETFを立ち上げるため、米証券取引委員会(SEC)に登録届け出書を提出した。
*ブラックロックが認可申請したiシェアーズETFは、JPモルガン・コンシューマー・コア・アセットバックト・セキュリティーズ指数との連動を狙う。消費者信用を裏付けとする資産担保証券(ABS)に連動する米ETFは初めて。
*16日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、SECは2日、S&P総合500種指数に対して4倍のレバレッジを掛けるETFの立ち上げを求める申請をいったん承認したが、その後この判断を保留しており、このETFはまだ取引が開始できない状態。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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