民家から絶滅危惧カメ1万匹を押収、密輸目的か

「浴室も、台所も、家中がカメだらけ」、マダガスカル

2018.04.25
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マダガスカルのトリアラで、住宅に押し込まれていた絶滅危惧種のホウシャガメ1万匹が当局により発見された。(PHOTOGRAPH COURTESY DREEF ATSIMO ANDREFANA)
マダガスカルのトリアラで、住宅に押し込まれていた絶滅危惧種のホウシャガメ1万匹が当局により発見された。(PHOTOGRAPH COURTESY DREEF ATSIMO ANDREFANA)
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 マダガスカルの民家で、1万匹を超える絶滅危惧種のカメが押収された。

 4月、同国南西の町トリアラにある2階建ての家から悪臭がするとの通報を受け、警察官や環境省の担当者らが向かったところ、そこにはこれまで見たこともない光景が広がっていた。無数のカメが互いに重なるように、びっしりと床を覆っていたのだ。(参考記事:「【動画】犬と仲良しのカメ、いつも一緒の珍生活」

「想像を絶する、ひどい匂いでした。浴室も、台所も、家中がカメだらけでした」と、マダガスカル環境省の地方局長を務めるソアリー・ランドリアンジャフィザナカ氏は語る。

 この家にいたのはマダガスカル固有の絶滅危惧種、ホウシャガメ(学名:Astrochelys radiata)だ。9888匹は生きていたが、180匹は死んだ状態で見つかった。ランドリアンジャフィザナカ氏らが数えながら救助隊員とともに6台のトラックに積み込み、トリアラから30キロほど北のイファティにある民間施設「ル・ヴィラージュ・デ・トルチュ」(カメの村)まで運んだ。何往復もして、全部のカメを施設に運び終わったのは、翌日の早朝だった。(参考記事:「驚くほどかわいい、カメの写真17点」

カメの大部分は、生きてはいたものの、弱り、脱水症状になっていた。(PHOTOGRAPH COURTESY DREEF ATSIMO ANDREFANA)
カメの大部分は、生きてはいたものの、弱り、脱水症状になっていた。(PHOTOGRAPH COURTESY DREEF ATSIMO ANDREFANA)
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 現在カメの世話をしている獣医師のナ・アイナ・ティアナ・ラコトアリソア氏によれば、大部分は生きており比較的元気だが、発見から1週間で、574匹が脱水症状や感染症で死んだという。

 当局は犯人の手掛かりをつかんでいる。容疑者として、男2人とこの家の持ち主である女1人が逮捕された。ランドリアンジャフィザナカ氏によれば、同氏らが到着したとき、男2人は死んだカメを庭に埋めようとしているところだった。

 今回、カメの救助を手伝った米国の「カメ類保存同盟(Turtle Survival Alliance)」のリック・ハドソン会長によると、ホウシャガメは大きなものでは重さ15キロ、甲長40センチになる。小型から中型のものは隠しやすく、いずれ国外に密輸されていただろうという。(参考記事:「珍しい動物のペットが中国で人気上昇、心配の声も」

 ランドリアンジャフィザナカ氏は、度を超したカメの数から見て、組織的な犯行に違いないという。「人物を特定はできませんが、黒幕がいるはずです」

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