プレステに頼らない ソニー系ゲーム会社の挑戦
ソニーグループのフォワードワークス(東京・港)は25日、スマートフォン(スマホ)向けゲーム「ソラとウミのアイダ(ソラウミ)」を10月から配信すると発表した。同作は「プレイステーション(PS)」で販売実績のあるゲームのスマホ版ではなく、ゼロから開発した。ヒット作に頼らず、アニメや舞台など多方面で通用するIP(知的資産)を生みだす力を磨こうとしている。
「ソラウミ」は広島県尾道市を舞台に6人の少女が「宇宙魚」を捕まえるアクションゲーム。少女たちとの会話を楽しみながら物語を進めるパートもあり、25日の発表会には声優陣が集結した。総監督を務めたクリエーターの広井王子氏は「4年かけてようやく90%まで完成した」と話す。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がスマホゲーム市場を開拓するため、2016年に設立したフォワードワークスにとってソラウミは、4日に配信を始めたゴルフゲーム「みんゴル」に続く2作目となる。ただ、背負っている役目は異なる。
みんゴルはPSのロングセラー「みんなのゴルフ」のスマホ版だ。知名度の高いゲーム発のIPを使うことで、ゲームから離れたユーザーを呼び戻したり、PSの潜在顧客を育てたりする効果が期待できる。今後、配信する予定の「ぼくのなつやすみ」「パラッパラッパー」も同様だ。
一方、ソラウミはスマホ向けのオリジナル作品だ。往年の名作と異なり、現時点の知名度は低い。育つかどうかを左右するのが、フォワードワークスの川口智基エグゼクティブディレクターが「ゲームを飛び出す」という言葉で表現した複数メディアへの展開だ。
ソラウミはまず、配信前の9月から声優陣による週1回のラジオ番組を始める。月刊誌「KADOKAWA電撃大王」での漫画の連載や小説化も決まっている。18年にはテレビアニメを放映し、舞台化の準備も進めているという。ありとあらゆる領域でソラウミと消費者の接点をつくり「IPのファンを増やす」と川口氏は話す。新作だからこそ、制作段階から多面展開を見据えた活動ができたと言える。
ただ、ほかのスマホゲーム会社もゲームキャラクターの多面展開を重視している。競争の激しい領域でフォワードワークスがどこまで突き抜けられるか。ソラウミは試金石となる。
(企業報道部 桜井芳野、佐藤浩実)
[日経産業新聞 2017年7月26日付]
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