再送-〔アングル〕大手行の4―9月期決算、みずほ苦境 邦銀全体に収益性の下方圧力

[東京 14日 ロイター] - 三菱UFJフィナンシャル・グループなど大手銀行グループが14日までに発表した2017年4―9月期決算では、みずほフィナンシャルグループがひときわ苦境に陥った結果となった。高コスト構造による収益力の低下が鮮明となり、今後10年で約1万9000人を削減する抜本的な構造改革に踏み切る。ただ、マイナス金利の長期化やグローバルな規制強化は、邦銀全体の収益性に下方圧力を掛けており、他行も追随を余儀なくされる可能性もある。
<ライバル行も驚き>
「思いのほか悪くて驚いた」―─。みずほの決算発表を受けて、ライバル行のある役員はこう評した。
3メガ銀行グループが発表した同期の連結当利益は、三菱UFJが前年同期比27.8%増の6269億円、三井住友フィナンシャルグループが同17%増の4201億円、みずほだけが同11.5%減の3166億円となり、明暗を分けた。
中でも注目されたのが、本業の収益力を表す実質業務純益だ。みずほは同40%減に低迷。三菱UFJは3.4%減に留まり、三井住友は同9.7%増となった。
みずほの佐藤康博社長は「基礎的な収益力、特に経費に大きな課題を残している」と分析。そのうえで、1.9万人の削減のほか、グループ全体の約500拠点を24年度末までに約400に減らす構造改革策を打ち出した。
<トップライン収益落ち込みの懸念も>
実際、営業経費を業務粗利益で割った経費率は、みずほが悪化の一途をたどっている。13年度に61.8%だった経費率は、この4―9月期に72.4%にまで悪化。最も高コスト体質と言われてきた三菱UFJの65.1%さえ上回る惨状だ。
大幅にコストを引き下げるための策である人員と拠点の削減。しかし、単純にコスト引き下げで終わらないリスクもはらむ。別のライバル行首脳は「店舗削減は、必ずトップライン収益の減少につながる。そのハンドリングが難しい」と打ち明ける。
<他行にも波及するか>
佐藤社長は「トップラインを引き上げるのは、グローバルな競争激化やマイナス金利の継続で難しい」と指摘。三菱UFJの平野信行社長も「銀行のトップラインがこれほど厳しく低下している国は日本以外はない」と述べ、「取り組むべきは未来志向の構造改革」と強調した。
三菱UFJは9500人分、三井住友は4000人分の業務量の削減を5月に発表している。両社とも退職者と採用抑制で対応し、希望退職は募らない方針だ。三井住友は店舗削には踏み切らず、国部毅社長は「店舗削減よりも、店舗運営の効率化が必要」との考えを示した。
ただ、収益環境の悪化の深さと速さによっては、さらに追加策が必要になる可能性もありそうだ。

布施太郎

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