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MS-J、東証1部昇格最短狙う-経理など人材紹介需要で好業績

更新日時
  • バブル崩壊が追い風、コーポレートガバナンスコードなどの恩恵も
  • 人材コスト増で、特化型でもニーズ変化つかむ必要-立花証の入沢氏

特化型人材紹介で首位を走るMSーJapanは、日本の上場企業やベンチャー企業、大手会計事務所などの管理部門募集を引き受ける。バブル崩壊後のリストラブームの反動などが商機へ転じて好業績が続いており、昨年末のマザーズ上場から最速1年で東証1部への市場変更を狙う。

  1990年代後半に大手メーカーが初めて本格的なリストラに踏み出した際、ターゲットとされたのは高年齢・高給の総務や人事、経理などの専門職。しかし収益が減っても管理部門の業務量自体はさほど減らず、企業は一定の体制が必要であることを再認識。その後簡単に優秀な人材を補充できなかった苦労やコーポレートガバナンス・コード導入など時代の変化も加わり、管理部門の重要性を見直す企業が増えるとともに特化型人材紹介のビジネスチャンスが広がっている。

Matching Service Japan CEO Takahiro Arimoto

有本隆浩社長

Source: Matching Service Japan

  同社は昨年12月15日、会社設立から27年目で東証マザーズに上場。有本隆浩社長はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、上場まで時間がかかった経緯について「安定かつキャッシュフローがあったことから必要が無かった」と説明する。ただ事業拡大に舵を切って上場したからには「一番大きな市場で大きなチャレンジをしていきたい」と抱負を語る。既に東証1部指定の上場基準はほぼ満たしているとして、「最短で行きたい」と述べた。

  東京証券取引所は12年3月以降の申請分から、マザーズ企業が東証1部指定となるにはマザーズ上場から1年間経過する必要があると取り決めた。条件としては、市場変更時見込みで株主数が2200人以上であることや流通株式数が2万単位以上、直近3カ月間の月平均売買高が200単位以上、時価総額が40億円以上、最近2年間の利益の額の総額が5億円以上か時価総額500億円以上などがある。

東証1部への過去最速はAPカンパニーなど

  現行制度下でマザーズから1部に市場を変更した最速記録は「塚田農場」など居酒屋を展開するエー・ピーカンパニーなど。直近では16年3月18日上場で、ことし3月21日に東証1部に市場変更となったアイドママーケティングコミュニケーション。アイドマMは1月13日に東証1部または2部への市場変更を申請したと発表、流動性向上や株主層の拡大期待で株価は2カ月間で562円から835円へ約5割上昇した。

  総合型がシェア上位を占める人材紹介業界にあって、同社は経営管理部門や弁護士などに特化。前期実績営業利益率は39%と、業界首位のリクルートホールディングスの7.2%などを上回る。6万人の登録者に対し、経理だけで50項目の詳細なキャリア分類を設けているほか、会計士なら勘定科目のどの部分を経験しているのかまで把握。職種別に詳細なデータを作成することで「他社が3カ月要するところを1カ月でマッチングし、ミスマッチが大幅軽減されることで退職率も変わってくる」と、有本社長は高収益の背景であるマッチング能力の強みを語る。

  矢野経済研究所によると、2016年度の人材紹介業市場は前年度比9.5%増の2300億円と7年連続でプラス成長となる見込み。中でも高度な専門性を有するハイスペック人材に対する需要は高まっており、人材紹介事業者は高収益が見込めるこうした人材の取り扱いを強化している。立花証券の入沢健アナリストは「総合型のように全部やっていると職種ごとに濃淡が出る」として、今後1-2年は特化型の方が優位だと予想。ただ、足元で人材集めのコストが上昇する中では「特化型でも時代のニーズにマッチしていないと厳しい経営を迫られる」ともくぎを刺す。

交流サイト開始で「次の一手」

  同社は3月29日から「Manegy(マネジー)」のサイト運営を開始する。管理部門のほか、弁護士や会計士など合計350万人を対象に専門情報を発信、自由な情報交換の場を提供する。「管理部門特化型の市場は安定・高収益だが、さらに成長するには次の一手が必要だった」と有本社長。広告媒体としての価値が将来順調に高まるようになれば「人材紹介業の売上高は今期計画比4倍の100億円、管理部門特化型市場でシェア13%から40%と、揺るぎないトップシェア企業になる」ともくろむ。

  16年3月期まで5期連続で増収増益と業績は順調。今期計画の売上高24億1100万円(前期比20%増)、営業利益9億4700万円(同21%増)は「達成が視野に入っている」と有本氏は言う。

  23日の株価は前日比0.6%高で始まり、一時3.1%高まであった。午前終値は0.4%高の3515円。

(最終段落に株価を入れて更新します.)
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