ファナック・三菱電、IoTで握手 海外勢に対抗
ファナック、三菱電機、DMG森精機の3社はあらゆるモノがネットにつながるIoT基盤の相互乗り入れで連携する。IoTの覇権を巡る競争は世界的に激しさを増している。これまでライバル関係にあったファナックと三菱電機は手を組み、先行するドイツや米国に対抗する。
協調して市場を拡大
18日、経済産業省が3社の連携を「産業データ共有促進事業費補助金」の採択事業にすると発表した。ファナックの「フィールドシステム」、三菱電機などが主導する「エッジクロス」、DMG森精機の「アダモス」間でデータを共有する。いずれも工場向けのIoT基盤だ。
工場は金属を加工する工作機械や製品を運ぶロボットなど雑多な機械であふれる。メーカーも製造年代もばらばらだ。それをつないで有効なデータを蓄積する役割を果たすのがIoT基盤だ。企業間再編で他社の工場を自社に組み込んだりする場合、企業が複数の会社の基盤システムを使うことも想定される。
データ共有が進めば顧客は工場の効率化で様々な手が打てるため、メリットは大きい。ただ、ライバル関係にあるファナックや三菱電機は連携に前向きとはいえなかった。
今回、3社は経産省の主導とはいえ協調領域を広げる方向にかじを切った。特にファナックと三菱電機は工作機械の頭脳とも言われる数値制御(NC)装置に関し、両社で世界シェアの過半を握るとみられる大手で、激しいシェア争いを繰り広げてきた。
連携についてファナックの稲葉善治会長兼最高経営責任者(CEO)は「大企業は部門毎にプラットフォームが違うというのはよくある話。そういう時につながらなかったら困る、ということになる」と話す。協調できる部分は協調して顧客の使い勝手を高め、結果的にIoT関連のシステムや機器の市場を広げる考えだ。
米・独・中が先行
IoTの覇権を巡る国際競争は激しさを増している。各国の得意分野を生かした戦略の違いも鮮明になりつつある。米国はクラウドを使った上位システムに強く、「インダストリー4.0」の提唱国、ドイツは中国との連携を強める。中国も「中国製造2025」を掲げ、国を挙げて製造業強化を推し進める。
独企業はこれまでも中国との「したたかな提携」を進めてきた。例えば産業用ロボット世界4強の一角、独クーカは中国の家電大手、美的集団の傘下に入ることで、中国市場へ攻勢をかける。
独シーメンスも最新鋭の自動化工場を中国に設けるほか、複数社とIoTで協業。一方で中国勢も力をつけており、華為技術(ファーウェイ)は独SAPなど大手と相次ぎ提携を進める。ファーウェイのIoT戦略の方針は「通信機器の提供に徹する」。畑違いのデータ分析などには手を出さず、他社との提携で顧客を獲得する。
東京大学の藤本隆宏教授は米国勢が力を入れる上位のクラウドシステムをIoTの「上空」、日本が強い製造現場や機械などの世界を「地上」と例える。今回の日本勢3社の連携は、地上の守りを固めるのが狙いといえる。藤本教授は「日本は高度な擦り合わせによる製造現場の強みを生かせば戦える」と分析する一方、「今打つ手を間違えれば、日本は草刈り場になる恐れがある」と警鐘を鳴らす。
日本勢がどこまで団結を維持し強みを発揮していけるか。それは日本の製造業の実力にも大きく影響する。