神戸製鋼、不正発覚を隠蔽 数社からコスト負担請求も

神戸製鋼、不正発覚を隠蔽 数社からコスト負担請求も
 10月20日、神戸製鋼所は、製品の性能データ改ざん問題で、不正行為が明らかになったにもかかわらず、自主点検や緊急監査の際に報告していなかった事案があったと発表した。記者会見する梅原尚人副社長(手前)ら(2017年 ロイター/Issei Kato)
[東京 20日 ロイター] - 神戸製鋼所<5406.T>は20日、製品の性能データ改ざん問題で、不正行為が明らかになったにもかかわらず、自主点検や緊急監査の際に報告していなかった事案があったと発表した。一部管理職を含むグループ従業員が行っていたという。自主点検の信頼性にも疑問符が付きかねない状況だ。
会見には、梅原尚人副社長、山本浩司常務執行役員、勝川四志彦常務執行役員が出席。川崎博也会長兼社長は、体調不良のため出席しなかった。会見に出席した3人は、一連の不正について「全く知らないし、関与していない」と述べた。
隠蔽(ぺい)は、10月8日にアルミ・銅事業のデータねつ造を発表した後も行われていた。検査妨害に関与した数人以外の人がどれだけ知っていたかは、現在調査中。
梅原副社長は「即座に、これまでの自主点検や緊急監査のやり方が無効とは思っていない。他部署が検査するのでそれなりの客観性、有効性はある」としながらも「今回の内容を分析して、今後のやり方を考えたい」と述べた。
同社では、社内に設置している「品質問題調査委員会」に代えて、複数の外部委員のみからなる外部調査委員会を設置するとした。
<ビジネスに影響、ある>
データねつ造などが事業に与える影響について、梅原副社長は「現時点で、ビジネスに影響がないかと言うと、それはある」と述べた。
現時点で、賠償請求や訴訟はないものの、納入先で発生しているコストについて「その負担を数社から求められている」ことを明らかにした。また、「定量的には程度は読める状況ではない」ものの、神戸鋼の材料を使わずに、他社に注文を変えるという話もあるという。
経済産業省は12日、2週間程度で安全性の検証結果を公表することを指示した。同社は、納入先の企業に生データを提供するなどし、納入先の企業が進めている安全性の確認をサポートしている。約500社とした納入先のうち、どの程度の確認が取れているのかについて、勝川常務は「まだ、先が見えていない状況。何社終わっているかは差し控える。500社には全て連絡して、打ち合わせを始めた」という。
梅原副社長によると、定期点検の際に交換するものの「危険なのですぐ交換してくれ、使えないという話は今のところない 」という。
ただ、データ改ざんの程度を問われ「それぞれの検査項目で数字は違うし、インパクトは違う。一概に何%とは言えない」と述べるにとどめた。納入契約した数値と、実際に納入した製品の数値がどの程度乖離(かいり)しているか明らかになっておらず、不透明感がぬぐえない要因となっている。
<新たな不正事案も>
新たなに確認したのは、鉄骨・橋梁・輸送機器分野以外の厚板加工品。出荷先は1社で、出荷量は3793トン(2015年11月から17年9月出荷)。厚板測定の一部未実施、厚板測定データのねつ造が行われていた。これについては、厚板の原板の工場出荷の段階で厚さが保証されており、安全性に問題はないとしている。
また、日本工業規格(JIS)のJISマークを表示しているものについて、19日から、JIS認証機関である日本品質保証機構(JQA)の審査を受けたことを明らかにした。コベルコマテリアル鋼管(KMCT社)の秦野工場で、JIS規格を満たしている引張強度や結晶粒度の検査証明書のデータの書き換えを行っていた。これは、検査結果をJIS規格よりも厳しい社内規格を満たすために書き換えていた。
また、自主点検期間より前の出荷製品についても、JIS規格を満たさないものがあるとの指摘を受けており、現在、内容を確認しているという。
これまでは法令違反はないとしていたが、JIS規格に反していると、法令違反となる。
さらに新しい事案が出てくる可能性について、梅原副社長は「全くありませんとは言い切れない。点検を進める中であり得るかなと思っている」と述べた。
進退を問われた梅原副社長は「安全性の検証、原因究明・対策きちんとやるのが責任」と述べた。
*写真を差し替えました。

清水律子 志田義寧

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