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シャープ(6753)に見る日本の将来

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今日の話題株は、過剰投資と見通しの甘さから巨額の負債を抱え、昨年8月1日に台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)に吸収され、東証二部に降格されたシャープ(6753)について、思いのたけを書き綴ります。

シャープは、一時は上場廃止、解体の危機となりましたが、鴻海精密工業(ホンハイ)の強力なリーダーシップにより、今年度経常損益は、前年1,924億円もの赤字から99億円の黒字に転換し、不死鳥のごとく復活してきました。

株価も87円から333円にまで復活しています。

これからシャープの動きには、注目です。

1 私とシャープ株10年史

唐突ですが、私は2008年リーマンショック直後に、これは100年に一度のチャンスと思い、シャープの株を買いました。

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その結果、東日本大震災が発生する前にシャープの株は1,200円にまで上がり、私もたちまち100万円ほどの含み益となりました。 

しかし、人間の心理は恐ろしいものです。
100万円では満足できず、株価の目標値を200万円に軌道修正しました。

その理由は、シャープ株の最高値は2,500円だったからです。

当時は太陽光発電が脚光を浴び、また、亀山モデルと世界中から賞賛された液晶テレビの一人勝ちで、堺工場に液晶パネル製造工場を新設、国内ガラケーの約50%を抑えるなど、シャープは松下も蹴落とすほどの勢いで、前途洋々たる大企業への道を歩んでいるかのように見えたからです。

甘かったです(涙)。

私の考えなどディトレーダーからしたら、赤子の手をひねるようなものでした。
世界はコモディティの方向に進んでいることに私はまったく気がつきませんでした。
技術が進めば進むほど、その技術はすぐに普遍化し、製造単価が下落してしまいます。そのため、自転車操業のように最新の生産設備への巨額投資を進めて、先行者利益を図ろうとしますが、ライバル企業もまた、競争の中で、品質に差がない製品を作るので、ますます製造単価が下がり、利益を生むよりも過剰な競争で、負債を生んでいきます。

まず、これで会社が清算にあったのが、SANYOです。

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SANYOは蓄電池の技術とシェアが世界最高レベルにあったのが、テレビや洗濯機などでガタガタとなり、結果的にはパナソニック(松下電器)に吸収されてしまいました。
その後も、山水やビクターなど名門といわれる企業も消えて行きました。

ですが、2011年3月11日の日を迎えるまでは、シャープは安泰に私には見えました。

実際には東日本大震災は起爆剤には見えましたが、コモディティ化の見通しの甘さにあったのはまず間違いがありません。

震災後半年間は、シャープの株価は極端には下がっていなかったので、ここら辺が売却する最後のチャンスでした。
しかし、私には売れませんでした。

人間の心理として、損はしたくはないからです。
よく株式投資で成功するためには、損切りを覚えなくては絶対にダメだといわれます。
誰にだって、見通しの甘さがあります。

 

どんなに株価を研究しようとも、地政学という世界共通の事象には抗うことはできません。
見通しが甘かったときは、すばやく損切りし、被害を最小限に食い止め、またリベンジの機会を待つのが、株の極意です。
ですが、私にはそれがどうしてもできません。できないから三流の株愛好家のままです。
さて、シャープ株ですが、ここからひたすら下がって行きました。

歯止めが効きません。
毎年度数千億円を超える巨額な赤字を出し続け、ついには本社まで売却という状況にまで追い込まれました。
私もいつしかシャープの株価を見るたび、胸がえぐられるような思いとなり、もはや見るのも怖い状況に追い詰められました。

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また、当時持っていたその他の株も軒並み下がってしまい、含み損を数百万円抱えることになってしまいました。

毎日が死にそうでした。
1,200円だったシャープの株価は、1,000円を切り700円を切り、500円を切っても止まりませんでした。

https://chart.yahoo.co.jp/?code=6753.T&tm=ay&type=c&log=off&size=m&over=m65,m130,s&add=v&comp=


そして東証2部に降格し、銀行からも見放されました。

残る選択は、産業革新機構による東芝との合併と台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)による買収の選択を迫られ、結果的にホンハイに買収され、外資系企業傘下となりました。
この日が2016年8月1日です。
株価もついに87円にまで下がりました。
生まれて初めて、購入した株が1/10以下となったことを実経験しました。
ここまで来るとむしろ爽快で、空元気かもしれませんが、シャープ以外でカバーしているからいいやとシャープの株は最初から持っていないことで心を整理するようになりました。
ここに、私の弱さがあります。
株がへたなチキン野郎です。
むしろ、ここぞと攻め込まなければなりませんでした。

このときどんどん買い進め、ナンピンを進めていれば、あっという間に含み資産が何倍にもなって転がり込むところでした。

実際、87円を底値に株価は上がり続け、今や333円と約4倍にまで跳ね上がり、業績は回復しました。

https://chart.yahoo.co.jp/?code=6753.T&tm=6m&type=c&log=off&size=m&over=m65,m130,s&add=v&comp=


本当に私はばかです。

2 シャープはなぜ業績が急回復傾向にあるのか

シャープが台湾企業に買収されるなど、当時日本人の誰もが、信じることなど誰もできなかったのではないでしょうか。
売上額が4兆円もある日本有数の大企業が、下請け工場専門のホンハイに吸収されるとは信じがたかったと思います。
しかし、グローバルな目で見ると、もはや企業は国単位というのではなく、地球規模で動いています。
象徴的な事件は、IBMがコンピューター製造部門を中国のレノボに売却したことでしょう。

https://www.lenovojp.com/business/img/logo_lenovo.png

これでIBMも終わりか、IBMブランドのThink PADも終わりかと思っていたら、レノボブランドはしっかりと国際社会に受け入れられています。 

IT革命の時代には、技術はすぐに陳腐化してしまい、特定の企業が先駆者利益を独占する時代ではなくなったということでしょう。
さて、今後のシャープの未来ですが、さまざまな投資家は、未来は明るいと口々にいっています。
中国に4KのTV工場を建設するとともに、アメリカ本土にも工場建設計画が立ち上がっています。
IGZO技術は液晶パネルの付加価値に大いに貢献しており、また東南アジアやインド中国等巨大市場にシャープブランド信仰は根強く残っています。

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何しろ、鴻海精密工業(ホンハイ)は中国人の経営です。中国人には華僑社会があり、そのネットワークはユダヤ人ネットワークをしのぐとさえいわれています。
PM2.5問題の解決はまだまだ先であり、空気清浄分野ではプラズマクラスター技術を持つシャープの独壇場です。

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また、PM2.5問題に絡めて、クリーンエネルギーに対する需要はますます高まります。そのときに効率の良いシャープの太陽光発電は、いっときの需要過多による値崩れから見直しが急速に高まっています。
さらに液晶TVの分野でも、内製品がもはやシャープとパナソニックに限られた中で、大画面需要が高まっている中で、大画面技術は限られたメーカーのみであり、高度な技術やノウハウがますます求められていますが、韓国勢にはまだその技術はありません。いわば日本勢の一人舞台です。
有機ELパネルの技術は韓国勢の方が進んでいる中で、IGZOや大画面液晶パネルだけで勝負できるかどうか、若干の不安はありますが、シャープは元々技術力に定評がありました。

シャープは販売力がなかったため売れなかったというジレンマを鴻海精密工業(ホンハイ)が販売先を確保するということで、見事に補完関係が成立しています。
このようにシャープの未来は明るいと思います。
株価の判断はしませんが、できることなら、これからもどんどん上がっていって購入した額に達したら、今度こそ絶対売却したいと思います。
シャープの株価が87円の頃、東芝は400円、NECは350円でした。
半年後、シャープの株価が東芝やNECを逆転することとなるとは、いったい誰が予想したことでしょうか・・・。