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マグロ完全養殖ツナぐ餌

極洋フィードワンマリン、生存率の壁に挑む

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2017年も残すところ1カ月。年末年始の食卓を彩る食材がマグロだが、乱獲の結果、資源量は激減している。この危機を救うと期待されているのが天然資源に頼らない完全養殖だ。エサを工夫して稚魚の生存率を高める取り組みが進む。軌道に乗れば日本の食文化を守るだけでなく、事業としての魅力も高まる。

11月23日、記者は愛媛県の南端にある愛南町を訪れた。黒潮の分流が入り込む入り江には直径約50メートルの輪がいくつも浮かぶ。極洋フィードワンマリン(愛媛県愛南町、林泰史社長)のマグロ完全養殖用のいけすだ。

従業員がワイヤの先についた針にサバを付けていけすに放り込む。直後に「きたっ」と叫ぶ。マグロがサバに食いついたのだ。やがて丸々と育ったマグロが揚がった。

従業員はすぐさま頭部からワイヤを入れて神経をつぶし、エラを大きく開いて内臓を除く。ワイヤから通った電気で背骨を折られたマグロはまったく抵抗しない。計量器に載せて「54キロ」と叫ぶ従業員。充実した表情がのぞいた。

完全養殖は人工授精で生まれ育った親から採卵し、ふ化・育成まで全てを人工的に管理する。「人工種苗由来」とも言われ、天然の稚魚を捕まえて育てる「天然種苗由来」の養殖とは異なり、マグロの資源量にダメージを与えない。

「限りある資源を未来につなぐ時代にマッチした商品だ」。11月22日に松山市で開かれた極洋フィードワンマリンのマグロ出荷披露式。同社に出資する水産大手の極洋の今井賢司社長はこう述べて初出荷を祝った。今井社長の言葉にもあるように、マグロのブランド名は「TUNAGU(つなぐ)」となった。

マグロの養殖の難所が稚魚の生存率の低さだ。極洋フィードワンマリンの場合、受精卵のうち、海上いけすに移せるぐらいの大きさの「沖出し稚魚」にまで育つ比率は1%にすぎない。共食いなどで死んでしまうことが多いという。

極洋フィードワンマリンでは、魅力的なエサを稚魚に与えれば共食いを防げると考えている。その処方箋は、同社に極洋とともに出資している配合飼料大手のフィード・ワンが用意している。

フィード・ワンは北海道立総合研究機構と共同でホタテの内臓からアミノ酸を抽出する技術を確立した。これを魚粉などと混ぜて稚魚用のエサにした。「稚魚が好んで食べるようになった」とフィード・ワンの生活管理部の秋元淳志部長代理は語る。稚魚の健康に配慮し、ビタミンやミネラルなども入れている。

フィード・ワンが開発した飼料「アンブロシア」は、極洋フィードワンマリンのいけすでも17年夏から使われている。実験段階だが、沖出し稚魚になるまでの生存率が現状の2倍の2%近くまで上がることを確認した。今後は生存率2%を保つことを目指す。

成魚にも有効な配合飼料の研究開発が今後の課題となる。ブリやハマチが基本的に配合飼料のみで育つのに対し、マグロのエサは大半が生の魚。マグロを1キログラム太らせるのに必要なエサは13~14キログラムに達する。生エサ自体の資源確保は大きな課題だ。配合飼料であれば味や色といった品質の管理もしやすくなる。

マグロの完全養殖を世界で最初に成功させたのは近畿大学だ。豊田通商と組んで量産している。

近大は1970年に水産庁の委託を受けてクロマグロの養殖の研究を開始し、79年に人工ふ化と稚魚の生産に成功した。その後、クロマグロを傷つけずに育てる条件を確立し、2002年に完全養殖をなし遂げた。03年にはアーマリン近大を設立。04年に同社を通じて完全養殖クロマグロの出荷を始めた。

マルハニチロは10年に民間企業で初めて完全養殖に成功、15年に商業出荷を始めた。17年には極洋フィードワンマリンが続いた。同社は17年度の出荷量を60トンと見込んでいる。18年度に200トンに伸ばし、早期に1000トンに増やす考えだ。日本水産も18年初めに出荷開始を予定する。

日本全体のクロマグロ供給量は15年で約4万5500トン。一方、人工種苗によるものは943トンにすぎない。この数字には親が天然魚の分も含まれているため、完全養殖魚はさらに少なくなる。だが、それは伸びる余地が大きいとも言える。

近大は「育種研究」を進めている。完全養殖の成功で、成長しやすいクロマグロや飼料が安く済む個体を選んで次世代に遺伝子を残せるようになった。遺伝子を直接切り貼りする最新技術のゲノム編集も活用、マダイなどで基礎研究を進める。

マルハニチロは元気がよく食欲が旺盛な稚魚を沖出し前の時点で間引いている。個体としては優れていても、エサを過剰に食べたり、他の個体を追いかけ回したりする稚魚は生存率低下を招くとの考え方だ。

また、マルハニチロはエサにドコサヘキサエン酸(DHA)を入れたところ、生存率が高まったことも確認している。

極洋フィードワンマリンの関係者の視線は海外にも向いている。このほど、ニューヨークで日本食材の展示会に出展し、完全養殖マグロを披露した。米国や中国・韓国系の食品業界の関係者は、味や赤身の色持ちの良さを高く評価していた。

天然志向が強い日本とは異なり、資源管理への意識が高い欧米では、完全養殖に価値を見いだす文化がある。天然ものより高く売れる可能性もあり、大きな商機になるとの期待は大きい。

(森国司、大阪経済部 岩井淳哉)

[日経産業新聞 2017年12月1日付]

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