コラム:業界の信頼回復を妨げるルノー・日産の「裏賞与」
Olaf Storbeck
[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ルノー・日産自動車<7201.T>連合のカルロス・ゴーン会長らの経営幹部にひそかに支給されようとした賞与のからくりが、実行される前に明るみになった。これはお手柄だ。事態が判明しなければ、こそこそ隠れてうまくやろうとすることは絶対に割に合わないのだと痛い思いをして学んだ、これまでの数多くの自動車メーカー首脳と同じ目にゴーン氏も遭うところだった。
ロイターは13日、ルノー・日産・三菱自動車<7211.T>のアドバイザーが、ゴーン氏ら幹部に非公表の賞与を支払う目的でオランダに新たな会社を設立する構想があると伝えた。新会社は3社連合が新たに生み出す相乗効果の8%を受け取り、その一部が幹部に回る形だ。
こんなやり方が株主の支持を得られるとは到底思われない。ルノー株主の多数は昨年、拘束力を持たない決議ながらもゴーン氏の報酬案を拒絶した。結果的にルノーが昨年ゴーン氏に支払った報酬額は、2015年の720万ユーロから700万ユーロに減少した。日産の会長として得た分を合わせた15年の報酬額は1560万ユーロだった。
新会社設立を通じた賞与支給は、ルール違反ではないが正当化するのは難しい。フランスの企業統治に関する行動規範には幹部に支払われる「すべての」報酬は公表されなければならないと記されている。
もちろん好業績は高額の報酬に値する。トムソン・ロイターのデータによると、過去5年間のルノーの年間平均株主リターンは24%と、ダイムラーやBMW、フォルクスワーゲン(VW)をしのいでいる。一方、15─18年にルノー・日産・三菱は、仕入れや設計、製造を共同化することによる相乗効果を25%強引き上げて55億ユーロにすることを目指している。だからといって、現状でゴーン氏がモチベーションを欠いている証拠はほとんど見当たらない。
VWのディーゼル車排ガス規制逃れを経て、自動車業界は「正直こそが最善の行動」としっかり学んだはずだ。今は、ほぼすべての欧州の自動車メーカーが、公道におけるディーゼル車の排ガス量が試験時より多くなっていないかどうか厳しく監視され、十分な信頼を得ていない。そんな時に裏で賞与を支給するような行為をしても、自動車業界にとって何の益もない。
●背景となるニュース
*ルノー・日産・三菱自動車のアドバイザーは、カルロス・ゴーン氏らの経営幹部に対して非公開で追加の賞与を支給する計画を策定した。ロイターが関連文書の内容を確認して分かった。
*3社の統合強化に関してゴーン氏に助言している投資銀行アルデア・パートナーズの説明では、オランダに登記した非公開有限会社に3社が統合強化で新たに生み出す相乗効果の8%を支払う。「幹部に相乗効果を追求する機会を積極的に促す」目的で、現金や株式賞与として支払うという。
*オランダの非公開有限会社は、独立した財団が完全に保有し、株主への報酬公表やフランスの給与税負担を回避できる仕組み。
*関連文書に付随したメモによると、ゴーン氏はこの計画を支持しており、詳細についてなお詰めが行われているという。
*ルノー・日産連合の広報担当者はロイターの報道について、同連合やそれぞれの企業が提供した情報に基づいたものではなく、そうした決定は下されていないと述べた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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