コラム:ソフトバンクの独創的調達、ぼろ儲けの投資銀に潜む危険

コラム:ソフトバンクの独創的調達、ぼろ儲けの投資銀に潜む危険
 4月9日、ソフトバンクグループが資金調達の新たな方法を編み出し続けているおかげで、大手投資銀行は楽して手数料を得ている。都内で2017年撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
Quentin Webb
[香港 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ<9984.T>が資金調達の新たな方法を編み出し続けているおかげで、大手投資銀行は楽して手数料を得ている。直近では保有するアリババ株を担保に80億ドルのローンを獲得した。
孫正義会長兼社長の独創的なやり方を用いた前進は止まらない。時価総額780億ドルのソフトバンクは、昨年末時点の純債務が11兆5000億円(1080億ドル)と利払い・税・償却前利益(EBITDA)の4.3倍。国際的格付け会社2社から「ジャンク(投機的)級」の格付けを受けており、普通の基準に照らせばもう借金は限界を迎えたように見える。
ところが実態は全く異なる。ソフトバンクは巨額の資産も保有しており、この中には日米の通信事業、米配車大手ウーバーの大量の株式、英半導体設計のARM、アリババの29%株式などが含まれる。評価額はアリババ株の保有分だけで約1250億ドルに上る。
孫氏からすれば、これらの資産は使われ方が不十分な資源であり、最先端技術向けの投資に再生利用すべきものだ。そうした中で設立したハイテク投資ファンドの規模は980億ドルと前代未聞の規模に膨らみ、昨年末までの投資額は270億ドルに達した。1月には日本の携帯電話子会社の上場計画を発表。ニュースサイトのThe Informationは1月、ソフトバンクグループがウーバーかARMの持ち分を担保に資金を調達する可能性があると報じていた。
今回のアリババ株を担保にした融資には、ブルームバーグの報道によるとモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなど国際的な投資銀行11社が関わった。
投資銀行が熱を上げるのは無理もない。かつては米ゼネラル・エレクトリック(GE)や大手プライベートエクイティ(PE)が大手投資銀行に収入をもたらしていたが、今では孫氏がその過度の積極性、野心、保有資産で「時の人」となったからだ。トムソン・ロイターの試算によると、ソフトバンクが合併やローン、債券や株式の売り出しなどで投資銀行に支払った手数料は2015年初頭からの累計が7億5000万ドル近くに上る。
南アの家具製造・販売大手スタインホフがつまずいた例があるとはいえ、適切に進めさえすれば株式を担保とした融資は極めて安全なはずだ。ただ、ソフトバンクの高いステータスを考えれば、投資銀行は孫氏が模索するより新奇でそれだけリスクが高い手法にも恐らく全面協力するだろう。
一方でソフトバンクは既に、通信の周波数帯を裏付けとする社債やアリババ株に転換可能な証券などハイブリッド債といった分野にまで手を出している。投資銀行はこれほど向う見ずな顧客を相手にすることで、結局は道を踏み外す危険を犯しているのかもしれない。
●背景となるニュース
・ソフトバンクグループは保有するアリババ株を担保に80億ドルのローンを獲得した。ブルームバーグが6日、事情に詳しい関係者の話として伝えた。
・この案件にはモルガン・スタンレー、シティグループ、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ドイツ銀行、JPモルガンなど11の投資銀行が関与したという。
・ブルームバーグによると、このローンの金利はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に1.5%ポイント上乗せした水準となっている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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