ブリッジレポート
(3194) 株式会社キリン堂ホールディングス

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ブリッジレポート:(3194)キリン堂ホールディングス vol.45

(3194:東証1部) キリン堂ホールディングス 企業HP
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長

【ブリッジレポート vol.45】2018年2月期業績レポート
取材概要「2018年2月期決算は計画を上回り、第二次中期経営計画は好調な滑り出しとなった。2度目の業績予想上方修正が発表された4月12日以降・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年5月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂ホールディングス
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年2月 116,450 1,298 1,835 635
2016年2月 112,902 1,699 2,320 826
2015年2月 108,033 952 1,437 619
2014年2月 103,055 1,820 2,282 942
2013年2月 101,761 1,924 2,242 882
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
株式情報(4/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,975円 11,332,206株 33,713百万円 9.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
35.00円 1.2% 130.54円 22.8倍 1,232.85円 2.4倍
※株価は4/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数。
 
(株)キリン堂ホールディングスの2018年2月期決算概要などについてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤としてドラッグストア・保険調剤薬局を運営する(株)キリン堂を中心とした持株会社。
医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサルティング等も手掛ける子会社も有する。ドラッグストア事業では、近畿2府5県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川においてドミナント戦略を進めており(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)、関東1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)でも店舗展開をしている。グループ店舗数は359店舗(FC1店舗を含む)。
連結子会社は、下記4社。持分法適用関連会社として中国で主に卸売を展開するBEAUNET CORPORATION LIMITEDがある。
連結の従業員数は1,710名。(いずれも2018年2月28日現在)
 
 
 
【同業他社比較】
ドラッグストアを中心業態とする上場企業は、以下の14社が挙げられる。(売上規模順)
 
前回レポート作成時からは売上高、時価総額とも同社の順位に変化はないが、時価総額は大きく増加した。
 
 
2018年2月期のROEは利益率の上昇により過去6年で最も高い9.8%に上昇した。
第2次中期経営計画では、2020年2月期10%以上を目標としており、今19年2月期も10.2%の計画である。
 
 
2018年2月期決算概要
 
 
新店寄与、既存店も好調で増収。新規出店に伴う経費増を吸収し増益。売上、利益とも計画を上回る。
売上高は前期比8.8%増の1,266億66百万円。新店が寄与したことに加え、既存店売上高も同3.2%増と好調だった。小売事業において集客増を図った結果、相対的に利益率の低い雑貨等が伸張したことなどから粗利率は同0.3P低下したが、増収効果により売上総利益は同7.5%増加した。
新店増による人件費や施設費などが増加したが、既存店と調剤部門の伸長がこれを吸収し、営業利益は同49.2%増の19億37百万円。売上、利益ともに期初および修正計画を上回った。
 
◎出退店状況
2018年2月期の出店は21店舗、M&A等による増加が6店舗(全て調剤薬局)で、店舗数は27店舗増加した。退店は12店舗。2018年2月末のグループ店舗数はFC1店舗を含む359店舗となった。
 
◎既存店の状況
2018年2月期の既存店売上高は、前期比3.2%増と好調だった。客数、客単価ともにそれぞれ同0.4%、2.8%増加した。9月、10月に客数はマイナスとなったが台風の影響による一時的なものであり、11月以降は2月を除き再びプラスで推移した。
顧客の利便性向上、来店動機創出につなげるべく、主に購買頻度の高いハウスホールド商品や食品の導入・拡大を目的とした売場改装を計画通り35店舗で実施したほか、ポイントカード会員の拡大とポイントカードを利用した会員向け販促を推進した。
2018年2月期の既存店月間平均カード会員数は、126万人と同2.2%増加した。
売上高に占めるポイント会員売上高の比率は8割近くに達している。今後も既存店売上の安定的な拡大に向け顧客の囲い込みを一段と進めていく。
 
 
◎PB商品売上高の動向
全体の粗利率向上につなげるため、当期も引き続き、相対的に粗利率の高いPB商品の売上構成比率上昇に取り組んだ。
ヘルス&ビューティケア(HBC)商品については、成分強化や規格増量などリニューアルの推進、潜在需要を開拓するPB商品へチャレンジするほか、機能性表示食品の届け出への対応も進めた。また、セルフ販売を基本とした価格訴求型PB商品については、フェイス数アップや専用什器の展開などに努めている。
通期の新規開発SKU数は258SKUで、うちHBC商品は89SKUであった。
小売事業の商品売上高全体に占めるPB商品の比率(PB比率)は9.6%。HBC商品売上高に占めるPB商品売上高の比率は10.5%。第1四半期、第2四半期と低下していたが、下期は機能性表示を取得した商品の投入など、販売強化に注力し上昇した。
 
 
集客強化のため雑貨等の売上高は好調だった一方、健康食品はダイエット関連が低調だった。相対的に利益率の低い雑貨等が伸張したことに加え、雑貨等自体の利益率も低下したことなどから、小売事業の粗利率は前期比0.2P低下した。
 
 
新店増で販売費、人件費が増加したが、販管費全体ではほぼ計画通りだった。
 
◎調剤事業について
調剤薬局、調剤薬局併設型ドラッグストア計10店舗を新たに出店したほか、M&A等で6店舗(全て調剤薬局)を取得、既存店1店舗に調剤薬局を併設、1店舗を閉店した結果、2018年2月末の処方せん取扱店舗数は16店舗増の78店舗となった。
処方せん応需枚数は前期比11.2%増の103.4万枚、調剤売上高は同15.2%増の116億77百万円となった。
調剤技術料の加算獲得に向け、かかりつけ薬剤師の育成や在宅支援の取り組みの強化を引き続き進めていく。
 
 
現預金、たな卸資産等の増加により、流動資産は前期末比17億20百万円増加。固定資産は有形固定資産の増加等で同16億6百万円増加し、資産合計は同33億26百万円増加の493億80百万円となった。一方、長期有利子負債の増加などにより、負債合計は同22億27百万円増加の356億13百万円となった。純資産は同10億99百万円増加の137億67百万円。この結果、自己資本比率は前期末より0.4P上昇の27.8%となった。
 
 
税金等調整前当期純利益の増加等により営業CFのプラス幅は拡大。有形固定資産の取得により投資CFのマイナス幅は拡大したものの、フリー・キャッシュフローはプラスに転じた。
長期借入金による収入などにより財務CFのプラス幅は拡大した。
キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2019年2月期業績予想
 
 
増収・増益予想
売上高は前期比3.8%増の1,315億円を計画。新規出店15店、退店10店を計画。
営業利益は同33.2%増の25億80百万円の計画。第二次中期経営計画の柱となる重点課題(①既存店の活性化、②ヘルス&ビューティの強化、③作業システム改革、④調剤事業の拡大、⑤関西ドミナントの推進)に取り組み、国内営業基盤の拡大と営業利益率の改善を図る。
ROEに関しては、中計の目標である「10%以上」となる10.2%を目指す。
配当は、同5円増の35.00円/株の予定。予想配当性向は26.8%。
 
 
2019年2月期の重点課題
 
同社は、2018年2月期を初年度とする3か年の第2次中期経営計画を策定している。
2期目となる2019年2月期の重点課題と取り組みは以下の通り。
 
 
 
(2)重点課題と進捗
重点課題 ①既存店の活性化
重要な既存店活性化策である売場改装を、2018年2月期は35店舗で実施した結果、食品の取り扱いを強化したことから客数、客単価はそれぞれ3.1%、1.0%増加し、売上高は全既存店増収率3.2%を上回る4.3%となった。
2019年2月期は前期を上回る45店舗の改装を予定している。

ポイントカード会員の拡大のために「会員向け販促の推進」を実施した結果、既存店月間平均において、2018年2月末時点で会員客数が前年比3.4%増加。2019年2月期からは、自社電子マネー付きポイントカード「KiRiCa」を導入して、さらなる利便性とサービスの向上につとめる。

また、既存店による地域の未病対策サポートの一環として、健康フェアやセミナーを実施している。2018年2月期には、店舗での健康フェアを144回、健康セミナー・介護セミナー等を22回、健康イベント(HANSHIN健康メッセ)を1回実施した。
今期も内容を充実させて健康提案を発信していく。
 
重点課題 ②ヘルス&ビューティの強化
同社は「PB商品の機能性表示の取得」に注力しており、2017年11月に商品名「EPA&DHA」で機能性表示を取得した。取得後の売上高は前年比で31%増加している。
2018年2月期のHBCのPB商品売上高構成比は前年比0.8p低下の10.5%であったことを受けて、機能性表示取得の追加、健康志向食材PB商品開発、新素材を取り入れたPB商品開発などにより、2019年2月期には11.2%にまで引き上げる。

また、顧客視点のPB商品開発・販売にも取り組んでおり、2018年1月にキリン堂PB「アインシアオーシェリー」についてのグループインタビューを実施し、顧客の要望を吸い上げた。
新規の顧客に対してはトライアルセットの継続販売とラインナップの追加などで対応。既に購入経験のある顧客に対しては、継続購入特典、ビューティスタッフと相談しやすい環境整備に取り組んでいる。
 
重点課題 ③作業システム改革
新POSレジの導入により作業時間を短縮し、確保した時間を接客に使い、顧客関係性強化を図る。
また、パートナー社員(パート・アルバイト社員)の登録販売者の資格取得を推進するほか、評価制度も導入しパートナー社員を含めた全社員で顧客サービスの向上を推進する。
 
重点課題 ④調剤事業の拡大
調剤併設型ドラッグストアのフォーマットを確立させ、かかりつけ薬剤師の育成と在宅支援の取り組みを強化する。
2019年2月期には処方せん取り扱い店舗を8店増の86店舗とする。調剤売上高は前期比0.7%増の117億56百万円を計画している。
18年4月に行われる調剤報酬改定は、調剤基本料および後発医薬品調剤体制加算の見直し、薬価引き下げにより、前回改定のあった17年2月期の実績をベースに、売上高に対し6.4%のマイナスインパクトとなると同社では試算している。
これに対して、処方せん枚数の伸び、かかりつけ算定・地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算の取得で対応する考えだ。
 
重点課題 ⑤関西ドミナントの推進
2019年2月期は、ドラッグストア11店舗(うち調剤薬局併設4店舗)、調剤薬局3店舗、M&A1店舗の合計15店舗を出店し、閉店は10店舗の予定。
 
 
今後の注目点
2018年2月期決算は計画を上回り、第二次中期経営計画は好調な滑り出しとなった。2度目の業績予想上方修正が発表された4月12日以降、株価は大きく上昇した。このモメンタムを維持する上で鍵となるのが、同社が最大の課題と認識している「収益力の向上」であり、その指標として投資家はROEと営業利益率に注目すべきだろう。第二次中計の中間点となる2019年2月期では「ROE10%、営業利益率2%」の達成を目指すが、2017年から積極的に出店してきた新規店舗と好採算の調剤事業がその実現にどの程度寄与することになるのか注視したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年5月29日に提出している。