無人化に体験価値... 18年「ネットの次の変化」占う
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)
2018年はインターネットをビジネスで活用するきっかけになった「Mosaic」というブラウザーが登場してから25年、つまりインターネットビジネスがスタートして四半世紀を迎えることになる。そう考えるとインターネットももう新しいものではない。
「ネットビジネス」という言葉からついデジタルビジネス全般をインターネットが起こした変化の延長で考えてしまいがちだが、このところの大きな技術革新はもう「インターネットの次の新しい変化」が起きていると捉えるべきなのだろう。そんな視点を持ちながら、18年のビジネストレンドの方向性を考えた。
(1)無人化&体験価値
サービス業における人手不足はますます深刻な状況になっている。外国人労働者の雇用も増えているが現実的に追いつかない中で、無人化への投資が加速するだろう。
ロボティクス、セキュリティー、無人レジ、顧客のスマートフォン(スマホ)による決済、オーダーのセルフ化。これらのテクノロジーにより店舗などの運営効率が高まるとともに、低コストへの圧力の高い業務はますます無人化が進む。
一方で人の手は、より体験価値を提供できるところにシフトしていくことになる。飲食、アパレルなども体験型の新業態への挑戦が進むだろう。
(2)価値交換プラットフォーム
17年は後半からビットコインに代表される仮想通貨がブレークした。現状はまだまだ既存通貨に換算した時の値上がり期待による投機的な動きがそのブームの中心である。しかし今年はブロックチェーン技術による本格的な価値交換としての活用がスタートすることになるだろう。
実はブロックチェーン技術の要素であるピアツーピア(P2P)はかつて「ナップスター」という音楽配信サービスで話題になり、コンテンツの違法配信技術として認識が広まってしまったが、当時からひとつの管理者に依存しない価値交換の仕組みとして期待されていた。今回のブームはようやく中央集権的でない価値交換の仕組みというイノベーションへの挑戦が、様々な分野で始まるという期待がある。
コンテンツの権利交換の分野での挑戦のほか、シェアリングエコノミー分野なども活用が期待される領域である。最近メルカリが仮想通貨を決済で使えるようにするとの報道が出たが、物々交換のような独自の仮想通貨を発行するといった動きが出てくると面白い。
(3)マルチコミュニティー
昨年の大きなトレンドであった「働き方改革」も、具体的なアクションがどんどん出てくる年になるだろう。中でも兼業や副業を認める企業は大きく増えることになると考えられる。ユニコーンベンチャーとして世界中でコワーキングスペースのサービスを提供していて話題のウィーワークも日本でサービスを開始。デジタルによるコミュニケーションに不自由がなくなってきたことで、働く場所としての大企業のオフィスの考え方も変わりつつある。
都会の大企業に籍を置きつつ、地方創生のためのプロジェクトで働く人なども増加するだろう。日本ユニシスが実験として昨年に提供を始めた「YOITOKO」のように、都市部の人々に地域のプロジェクトをマッチングさせるサービスのニーズも高まる。
大都市か地方か、大資本か零細かという二択論ではなく、どちらも実現し、多様なコミュニティーに同時に属するというライフスタイルが、昨年話題になった人生100年時代の生き方、働き方としても急速に普及するだろう。結果的に人口減少の中でも人の移動も増え、定住者は少なくても活性化する地方も増えることも期待されている。
18年は「店」とか「オフィス」とか「お金」とかの意味の本質をあらためて示すようなサービスの登場が増える年になるのかもしれない。
[日経MJ2018年1月19日付]