2016年度 業績サマリー【前年度対比、前回予想対比】

池谷光司氏:それでは始めさせていただきます。まず2016年度の実績をご説明させていただきます。

2016年度の売上高は1兆9,066億円となりました。営業利益は51億円、経常利益は89億円、当期純利益は、燃費不正問題による特別損失を計上したこともあり、1,985億円の赤字となりました。なお、営業利益につきましては2004年の再生計画開始以来、12年にわたり通期営業黒字を確保しました。

昨年度は、燃費問題や為替の悪化、市場措置費用の増加などがございましたが、すでに第3四半期決算でもお話し申し上げましたように、11月以降、日産自動車の手法を参考にした経営改善が進んだことなどにより、通期業績が改善しました。

結果としまして、1月31日の決算発表の際に申し上げました通期見通し10億円に対し、売上高、各営利項目ともに上回りました。

2016年度 小売台数実績【前年度対比】

次に小売台数の実績について、ご説明させていただきます。一番右側の全世界での販売台数は926,000台となり、前年度から12パーセント減少しました。日本ですが、燃費不正問題による上期の落ち込みを挽回するには至りませんでしたが、足元の販売は堅調に推移しており、第3四半期に公表しました75,000台を上回り、80,000台の実績となりました。

北米は『アウトランダー』の販売が堅調に推移したことにより、前年を上回る結果となりました。欧州ですが、ロシアでの落ち込みが続いたことに加え、オランダ等で税制変更の影響を受け、アウトランダー・PHVが大きく減ったことなどによりまして、前年を下回りました。中国ですが、8月に現地生産化しましたアウトランダーの販売が好調に推移しました。

一方でアセアンでは、前年度好調でした新型の『パジェロスポーツ』の台数が減少し、アジア全体では前年を下回る結果となりました。その他の地域では、資源安による影響が続く中東・中南米の台数減が続いております。

2016年度 営業利益増減分析【前年度対比】

2016年度営業利益増減分析ですが、昨年度に対しまして、燃費問題の影響として360億円、為替の悪化として775億円、試乗措置費用の増加で322億円など、大きなマイナス要素がありましたが、全社を挙げた取り組みで黒字を確保しました。

詳細な分析ですが、まず台数・車種構成等で246億円の減益となりました。地域別の内訳は、スライド左上の表ありますとおりです。日本では燃費問題の影響、タイでは一昨年末の税制変更の影響による新型パジェロスポーツの台数減、中東・中南米での需要低迷により、減益となりました。

また、日本でのインセンティブ増加などにより、販売費でも223億円の減益となりました。これに対して、コスト低減は222億円の改善となり、このなかには日産自動車とのシナジー効果が早期に創出されたことによる改善が30億円強含まれております。

これらの結果、為替と措置費用を除いた営業利益は、1,148億円となりました。なお、為替の悪化と市場措置費用の増加を含めた営業利益は、51億円となっております。

2016年度 BSサマリー

こちらでバランスシートをまとめておりますが、燃費問題関連の支払い等ございましたけれども、10月20日の日産自動車からの第三者割当増資費もありまして、ネットキャッシュは5,400億円強となりました。

また、自己資本比率は46.5パーセントと、昨年度とほぼ同レベルを維持しております。今後も健全な財務状況を維持しながら、手元資金を有効な成長投資に積極的に振り向け、企業価値の向上に努めてまいりたいと思っております。

2017年度 業績サマリー【前年度対比】

ここまで2016年度実績についてご説明してまいりましたが、ここから2017年度の業績見通しについてご説明いたします。こちら全体のサマリーですが、売上高2兆円、営業利益は700億円、経常利益790億円、当期純利益は680億円を計画しております。当期純利益につきましては、1年で、一昨年2015年度に近い水準まで回復する見込みです。

2017年度 小売台数見通し【前年度対比】

小売台数の地域別内訳です。全世界での販売台数は1,029,000台と、前年度から11パーセント増加の計画としました。2017年度におきましては、地域別の事業計画や新商品投入スケジュールなどを前提として、重点地域を絞り込み、アセアン・北アジア・日本、この3地域を中心に台数を伸ばす計画です。

アセアンですが、今年度スタートしたインドネシアの新工場で生産する車種が販売を牽引するほか、フィリピンあるいはタイでも販売を伸ばす計画です。

北アジアのうち中国では、昨年現地生産化しましたアウトランダーの販売が好調に推移しており、2017年度もこの傾向を維持し、販売拡大を目指してまいります。

また、日本では、燃費問題によるブランド毀損などの影響があるものの、お客様との信頼回復や地道な販売促進活動に加えて、年度後半には『エクリプス クロス』を新規投入することで、販売を増加させる予定です。さらに他の地域でも着実に販売を伸ばす計画としております。

設備投資・研究開発費

設備投資・研究開発費の動向ですが、2017年度は売上高を伸ばすと同時に、これまで、やもすると不足しておりました将来成長に向けた投資も積極的に進めてまいる所存です。具体的には、17年度の設備投資は、インドネシア新工場の投資も加わり約1,000億円、前年度比で70パーセントと、大幅にアップする計画です。

研究開発費も、日産との技術の共有などで開発費はセーブできる反面、将来のために新規分野の技術開発を増額するため、2017年度は1,070億円の計画としました。当社は、今後の成長に向けて将来投資の拡充による魅力ある車づくりや、それを支える人材・仕組みづくりを進めてまいります。

2017年度 営業利益見通し増減分析【前年度対比】

2017年度営業利益見通しの増減分析ですが、2017年度の営業利益は700億円と、前年度の51億円から649億円増益の計画としました。販売関連としましては、拡販のための販売費もしっかり使いながら、重点地域であるアセアン・北アジア・日本を中心に台数を増やす計画でして、60億円の好転を見込んでおります。

コスト低減等で370億円の増益を見込む反面、その他は研究開発費等で121億円の増加を織り込んでおります。なお、幅広い分野で検討が進む日産自動車とのアライアンスにより、2017年度のシナジー効果として250億円をこのなかに見込んでおります。

また、為替の前提につきましては、右上の表がありますが、USドルで105円、ユーロで115円、タイバーツで3.05円と、前年に対し円高に想定しております。この結果、為替影響としては前年に対して約50億円の悪化を見込んでおります。

一方、市場措置費用は2015年度並みを見込んでおり、2016年度実績に対し、390億円好転する計画です。結果として、2017年度の営業利益は、700億円を確保する見込みです。

以上で2017年度の業績見通しのご説明を終わらせていただきます。続きまして、益子より、当社の今後の取り組みについてご説明申し上げます。

今後の取り組み

益子修氏:益子でございます。それでは、説明に入る前に、わたしの考え方をみなさんにお話したいと思うのですが、当社としてやるべきことについて話をさせていただきます。

やるべきことは、信頼の回復に尽きると思っております。昨年度、多くの方々にご迷惑とご心配をおかけした燃費不正問題、あるいはそれに類するような不正問題を再発させないことと、業績のV字回復を実現することで、信頼の回復を実現したいと考えています。

短い区間、単年度で考えるのではなく、持続的な成長に向けた道筋をつけることが必要です。2017年度は、新しい中期経営計画のスタートの年であり、単年度での業績回復と将来への布石を打つ年という、大きな意味を持っています。

このような考え方をベースに、これから当社の経営の状況と今後の取り組みについて、説明をさせていただきます。

2016年度の振り返り ~収益改善~

まず2016年度を振り返ります。2015年度は6パーセント前後あった営業利益率ですが、2016年度上期は、燃費不正問題による生産・販売停止の影響や、市場措置費用が増加したことで、マイナス3.7パーセントまで落ちました。

これに対し、下期は、経営効率の改善に取り組んだ結果、営業利益率はプラス3.5パーセントまで回復をしております。2017年度以降も、この業績の回復基調を継続し、V字回復シナリオを確かなものにしていけるよう、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

2016年度の振り返り ~社内改革の推進~

当社はこの半年で大きく社内改革を推進してまいりました。各マネジメントの権限を明確にし、意思決定の迅速化が図れる役員体制に変更するとともに、それに合わせた組織改編を行いました。また、月次損益の管理を徹底するPDCAサイクルを回すなど、経営の仕組みも変更しました。

それに加え、人事評価や報酬体系の見直し、日産自動車との人材交流、権限移譲の明確化などにも取り組んできました。このように、将来の成長に向けた経営の基盤づくりが着実に進捗しております。

これに加え、グローバルリスクコントロール部門の新設、社内教育制度の充実を通じ、不正問題の再発防止に向けた意識改革が進んでおります。

主要施策:アセアン

ここからは、今年度以降の取り組みについて説明をいたします。まずアセアン戦略ですが、インドネシアで先月、新工場が稼働しました。

開所式典には、インドネシア政府のジョコ大統領・ハルタント工業大臣にもご参列いただき、盛大な式典となりました。現在はパジェロスポーツを生産しておりますが、9月には小型MPVの生産立ち上げを準備しております。

経済が好調なフィリピンでは、政府の支援策である「CARSプログラム」の認定を受け生産を開始した『ミラージュG4』に続き、今月からは『ミラージュ』の生産も開始し、販売を伸ばしてまいります。

また、現地調達率を引き上げるために、プレス工場の建設を進めており、2018年初めには生産開始の予定です。アセアンの最大生産拠点であるタイでは、日産とのアライアンスを活かし、さらなる収益性向上を目指してまいります。詳細については後述します。

主要施策:中国

中国市場は2,800万台という規模にまで需要が拡大し、全世界需要の約3分の1を中国が占めております。当社のシェアは依然として低い水準にありますが、販売を伸ばすチャンスがあると考えております。

昨年現地生産化した『アウトランダー』は順調に販売を伸ばしております。台数の拡大には、ディーラーネットワークの拡張は不可欠となっておりますが、同時にディーラーのクォリティ向上にも取り組んでまいります。

このような取り組みにより、2020年代初めに30万台以上の販売を目指します。また、エンジンの現地生産プロジェクトを進めており、2018年12月には生産を開始する予定です。現地調達率を高めることで、収益力のアップを図ります。

グローバルモデルの投入

グローバルモデルの新商品となる『エクリプス クロス』を10月の欧州出荷を皮切りに各地域に順次投入していきます。このモデルがこれからの当社SUVブランドを担っていく存在だと考えております。世界初披露となった今年のジュネーヴモーターショーでは、スタイリッシュなクーペフォルムに高い評価が寄せられております。

地域戦略車種の投入

先ほど、インドネシアで生産開始する小型MPVの説明をしましたが、MPVはインドネシアでは人気のセグメントとなっております。また、この小型MPVは、インドネシアのみならず、周辺のアセアン諸国への輸出も予定している重要な地域戦略車です。

さらに、この車は日産自動車へのOEM供給も検討しております。ご覧の写真は、昨年のインドネシア国際オートショーで公開した『MITSUBISHI XM Concept』であり、この小型MPVのコンセプトとなっております。

アライアンスの進捗:共同購買・物流・販売金融を中心に

2017年度は、ルノー・日産アライアンスの一員として、新たな一歩を踏み出す年となります。実際に32のクロスカンパニーチーム(CCT)を発足させ、各領域でのシナジー検討を加速しています。

その結果、共同購買や物流、販売金融の面を中心に、具体的な成果が出始めています。例えばタイでは、車両共同輸送が始まり、今後、インドネシアやフィリピンへの展開も検討を進めています。また、購買ではベンチマークデータの活用により、昨年度すでに30億円を上回るコスト低減を実現しました。

今年度からは、いよいよ共同購買がスタートし、取り組みを本格化させていきます。商品や技術の面では、日産がインドネシアでMPVのOEM受けを検討しております。新技術の領域においては、当社のプラグインハイブリッド技術が日産車で採用されることも視野に入ってきております。

当社に強みがあるアセアン、日産が得意とするアメリカや中国など、それぞれの強みを活かしたシナジー検討を今後も積極的に進めてまいります。

当社の目指すべき姿

当社は将来の収益力を飛躍的に高めていくことが、みなさまからの信頼と期待を取り戻すことにつながると確信しています。今後は改革へ手を緩めることなく、さらに日産自動車とのアライアンスを活かし、規模の成長と収益のV字回復に取り組んでまいります。

具体的には、販売台数は2008年度以降100万台前後で推移してきましたが、これを25パーセント増やし、125万台を目指します。これに経営効率の改善努力を加え、営業利益率は6パーセント台を回復します。

いずれも2019年度までの時期中計期間中の到達を目標に詳細を詰めています。規律ある経営により、持続的な企業価値向上に、全力で取り組んでまいります。