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【特集】「遠隔医療」はニッポンを救う! 診療報酬改定で関連株に“飛躍の時” <株探トップ特集>

4月の診療報酬改定で報酬が引き上げられる遠隔診療。市場拡大が見込まれるなか、関連銘柄も業績伸長の期待が高まっている。

―医療費増大と高齢化進展で普及待ったなし、拡大市場獲得するのは―

 急激な為替の変動に翻弄される東京株式市場。ここにきて、ようやく円安方向に振れてはいるものの、円高への警戒感は未だ払しょくされてはいない。そうしたなか内需株に目が向くのは必然ともいえる。そして、その内需株の一角でもある「遠隔医療関連銘柄」には追い風が吹いている。4月に改定される診療報酬でも、遠隔診療の拡大が推進される。急速に進む高齢化、過疎化、そして医療費の増大と遠隔医療の推進はもはや国家の命題といえる。関連銘柄の今を追った。

●診療報酬改定でスポットライト

 遠隔医療拡大に向けた取り組みが加速している。7日、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が2年ごとに見直される診療報酬について答申し、4月からICT(情報通信技術)を利活用した遠隔診療などの報酬を手厚くする。いままでは、対面診療と比較し診療報酬の加算が少ないことや制度上の不備などが本格的な普及を妨げていたが、ここにきて大きく前進した格好だ。

 遠隔医療については、かねてから人口が減少する地域や離島などで普及が求められていた。加えて、2025年には国民の4人に1人が後期高齢者になるという超高齢化時代を迎えることになる。急速に進む高齢者人口の増加で、今後入院による対応は実質的に困難な状況が予想され、在宅医療がその受け皿として考えられている。そして、これら状況を打開するためには、遠隔医療の拡大はもはや待ったなしの状況だ。株式市場においても、遠隔医療については一時注目のテーマとしてスポットライトが当たったが、いまはそれほど関心が高くない。ただ、もはや他人事ではない“2025年問題”だけに、折に触れて脚光を浴びることになりそうだ。

●潮流の変化肌で感じるMRT

 遠隔診療では、スマートフォンやタブレットを使用し、オンライン上で医師から診療を受けることができる遠隔診療サービス「ポケットドクター」に注目が集まっている。このポケットドクターはMRT <6034> [東証M]とオプティム <3694> が共同開発したもの。

 MRTではポケットドクターについて「現在約400の医療機関が登録しており、順調に拡大している。(診療報酬改定などの)ニュースが出たこともあり、医療機関からの問い合わせが増えている」(広報)という。また「当初は、遠隔診療という話を出しても、その言葉自体を知らないというような状況だったが、ここにきて社会の認識が急速に変わってきている」(同)と潮流の変化を肌で感じているという。業績はいまひとつの状況だが、これも成長市場を眼前にした積極的な初期投資の結果ともいえそうだ。株価は、多分に漏れず地合い悪に押されているが、今後の活躍の舞台を考えると成長期待への評価はこれからとみたい。

 一方のオプティムの株価は、商い薄のなか底値圏で反転攻勢の機をうかがう状況にあるが、ポケットドクターの有償展開で順調に医療機関を獲得している。また、農業分野では、新たにAI、IoT、ドローンによるピンポイント農薬散布テクノロジーの成功をもとにスマート農業アライアンスを進めており、この点も要注目といえそうだ。

●頭角現すノーリツ鋼機

 ある業界関係者は「周囲は、未来の話だった遠隔診療が現実になってきたと夢の世界の扉を開いたかのように語るが、そんな悠長な話ではない。遠隔診療を急速に進めなければならないほどに危うい状況の現れ」と懸念しつつも、「そこにビジネスチャンスがあるのも事実で、継続して事業展開を進める」と言う。

 そうした状況下、ここにきて急速にヘルスケア分野で頭角を現しているのがノーリツ鋼機 <7744> だ。2010年に遠隔画像診断支援サービスの「ドクターネット」をグループに迎え順調に拡大している。医療機関で撮影されたX線画像やCT、MRIなどのデータを、ドクターネットのシステムを介し、放射線診断専門医が読影しフィードバックすることで、医療サービスの地域格差や医師不足といった多くの課題克服で高い評価とシェアを誇っている。

 同社は、8日の取引終了後に第3四半期累計連結決算を発表。売上高が前年同期比11.1%増の414億8900万円、営業利益は同28.3%増の42億3700万円、純利益は同2.2倍の30億500万円と大幅増益となった。第3四半期累計期間では、ヘルスケア事業でレセプト・データの分析・調査や遠隔医療支援サービスが順調に推移、また第1四半期にグループに加わったジーンテクノサイエンスのバイオ医薬品の効果で創薬事業の採算が改善したことなども貢献した。1月16日に2982円まで買われ昨年来高値を更新。その後は全体地合いの悪化に抗えず急落。2000円を割り込む場面もあったが反転攻勢の気配も漂う。材料性・話題性も豊富で今後の展開に期待したい。

●エムスリーは異彩の強さ、米国展開でも要注目

 悪地合いで、多くの銘柄の株価が急落するなか、異彩の強さを見せているのがエムスリー <2413> だ。株価は2月6日に米国株の急落を受けて下げたが、その後は機首を立て直して上昇気流に乗る。きょう20日には、引け値こそマイナス圏に沈んだものの、一時4485円まで買われ上場来高値を更新、急激な円高に振り回される主力株を横目に内需株の本領を発揮している。同社はインターネットを利用した医療関連サービスの提供を行っており、医療従事者の情報ニーズに応える会員制サイト「M3.com」、また診療に役立つ最新の医療情報、医薬品情報を、製薬企業のMR(医薬情報担当者)がM3.comサイト上から伝える「MR君」を展開しており、遠隔診療のニーズが高まるなか医師の強い味方になりそうだ。また、一般の人々からの健康や疾病に関する質問にM3.comの登録医師が回答する「AskDoctors」などでも需要を捉えている。

 さらに注目したいのは米国での展開。16日、同社は米国で治験支援事業を行うウエーク・リサーチ・ホールディングスの全株式を取得して完全子会社化し、治験事業に参入したと発表。ウエーク社は米国で12ヵ所の治験実施施設を運営し、神経科を中心とした複数の疾患領域に対応している。エムスリーでは、米で運営する医師向けWebサイト「MDLinx」を活用し、ウエーク社が運営する治験実施施設と組み合わせることで効率的な治験施設サービスを構築するとしている。

 そのほかでは、高いセキュリティーで、より簡単な遠隔画像診断支援サービスなどを行うイメージ ワン <2667> [JQ]にも目を配りたい。株価は、全体相場にも大きく揺さぶれることなくしっかりした展開。2月6日に直近安値426円をつけて以降、ジワリ上値指向をみせている。

 「今後も参入企業は増えそう」(前出の業界関係者)で、市場拡大を背景に成長期待が高まるなか、遠隔医療関連株への注目度は一層高まりそうだ。

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