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【保有株分析】クックパッド(2193)

お家騒動でPER20倍付近まで落ち込んだクックパッド。しかし、ビジネスモデルの圧倒的優位性は変わらず、大筋の成長モデルには陰りは無いと判断しています。

 

①事業の成長は期待できるか
・確固たる強みは:圧倒的No1のレシピ量とブランド
国内でのダントツ地位に死角はありません。情報の量・質共に他の追随を許さず、いまもメディアとして進化を続けています。投稿したレシピがコンテンツになるうえ、蓄積すればするほどクックパッドへのロイヤリティが高まる仕組みに敗戦の要素が見当たりません。あまり公開していませんが、レシピへのアクセスを”データ”として活用し、食関連の企業に販売する事業なども明確な競争優位を持つ差別化収入源として強いです。(http://just4youcom.hatenablog.com/entry/2016/05/23/115452


・成長ストーリー:海外進出によるレシピのグローバル活用
多少のアレンジは必要ですが、ほぼ日本と同様のスキームで海外進出が可能と考えます。各言語領域のレシピサイトをM&Aしながら海外事業を拡大しておりますが、こうした”国をまたいだレシピ共有”ができるようになることで、食文化の活性化+レシピコンテンツのグローバル活用といった更なるビジネス拡大が見込まれると期待します。なお、クックパッドはさまざまな食文化の中でもユニークな”日本食”を抑えていることも、海外競合との戦いで注目すべき要因かと思います。

 

②株価は割安か
・PERは割安か:お家騒動で急落した2017年初頭で20倍と、高成長・高収益モデルの企業としては割安水準だと考えます。
・成長性やテーマ性は織り込まれているか:今後の展開が不透明であり、成長性は一時期の評価からは大きく割り引かれて考えられているものと想定します。

 

③株価の成長は期待できるか
・テーマ性はあるか:無し
・一部上場による伸長はあるか:無し
・その他、成長が期待できる要因はあるか:本業の海外展開における飛躍の一本足

 

④リスクは許容できるか
・チャートは入りやすいか:サルでも回せるスキームを残して、前社長の退任が決まりました。株価は大きく毀損しましたが、このレベルの成長企業がPER20倍台で獲得でき、ビジネスモデルでの優位性は全く損なっていないという点に、大きな魅力を感じます。
・テールリスクは許容できるか:穐田前社長の完全撤退により、お家騒動は落着したといえます。次いでリスクを想定すべきは”レシピ動画”サービスですが、これもリスクとしては限定的といえます。理由は優良コンテンツ普及の爆発力の欠如です。CGMメインの食品レシピ情報とは若干異なり、動画を撮影できる利用者に限りがあり、料理人や食品系企業などの仕掛け人がレシピ動画を投稿しているケースが殆どです。そうなりますと、レシピ情報が数万単位で増えていくという事は考えにくいですし、仮に一般の方も気軽に動画が投稿できたとしても、動画作成側のスキルの問題で高い質を担保できるコンテンツとはなり得ない(≒気軽なレシピ投稿ができない)と思いますので、クックパッドを喰う競合というよりは別カテゴリのサービスとしてとらえるべきでしょう。動画サービスも、同等のコストをかけて追撃すれば追いつけない量ではありませんし、動画の流通している流通先を圧倒的な資金力を背景に抑えていけば、結局明確な収益源が確立していないレシピ動画サービスは早晩立ち行かなくなるでしょう。

海外展開が成功するのかという点に、明確なビジョンを打ち出せていない点が問題であり、当然公開企業として非公開の戦略という事も十分ありますが、海外戦略がうまくいくかの展望が見えてくれば企業に対しての評価は回復していくでしょう。

 

クックパッドの本質はCGMであり、運営者どうこうではありません。そういった意味では、レシピサイトにリソースを集約させようとする佐野氏の戦略は合理的に評価できると私は考えます。今後の成長に最も期待している企業の1つです。