神鋼、鉄鋼製品も改ざん JR西、交換費用請求へ
神戸製鋼所が「線材」と呼ばれる鉄鋼製品でも品質データを書き換えて出荷していたことが明らかになった。これまで同社は不正の対象はアルミ・銅製部材としており、川崎博也会長兼社長も12日、鉄鋼事業での不正は「現時点ではない」と発言したばかり。稼ぎ頭の鉄鋼製品での不正発覚により、さらなる信用低下につながりそうだ。
品質証明のデータを改ざんしていたのは、海外で生産する線材。自動車エンジンの駆動を支えるばねやタイヤの補強材として使われており、神鋼が高い世界シェアを持つ製品もある。
一方、アルミ・銅製部材は飲料用の缶から半導体、魚雷まで幅広い企業に納入されていることが明らかになった。
三菱重工業や川崎重工業、IHIなどの防衛・宇宙分野に加え、パナソニックの半導体関連部品、ダイキン工業と東芝のグループ会社の空調関連機器にも不正な部材が使われていた。
納入先には米インテルや英ロールス・ロイスなど海外企業も多く、信用問題に発展すれば海外で事業を拡大している日本の素材産業にとって打撃になりかねない。
旅客機用のアルミ材は米アルコアのシェアが高いが、日本メーカーは近年、材料だけでなく鍛造など最終の部品加工まで手掛けることで欧米の顧客との取引を拡大し、素材メーカーの新たな収益源となっている。
そのさなかに神鋼の問題が起きたことで、成長に水を差す恐れがある。防衛装備品は自動車など民生品に比べ品質認証が格段に厳しい。取引停止に追い込まれるだけでなく、訴訟リスクを抱え込むことになる。
企業の国際取引に詳しい前田陽司弁護士は「仮に強度不足の部品が原因で事故などが起きれば、神鋼も損害賠償請求の対象になりうる」と指摘する。
国内では既に部品交換などの費用を請求する動きも出始めている。
JR西日本は12日、データを改ざんしていたアルミ部材を使った部品が新幹線の台車などに使われていると発表した。安全性に問題はないものの、強度は日本工業規格(JIS)の基準を数%下回っており、1年以内に定期検査で部品を見つけて交換する。
同日の記者会見でJR西日本の来島達夫社長は「次の契約や見直しはまだ決めていないが、(車両メーカーなどによる)費用負担はある」と発言。部品の交換費用などを神鋼や車両メーカーに請求する方向だ。
SUBARU(スバル)は安全性の調査を進めている段階だが、吉永泰之社長はリコール(回収・無償修理)に発展した場合は、「ルールに従い求償することになるだろう」との認識を示した。
神鋼は1カ月以内に原因や対策などを発表する予定。納入先への補償や代替品の供給などを迫られるのは必至だ。