「あおり運転」後絶たず ドラレコの販売急増
「あおり運転」などの危険な運転による事故やトラブルが後を絶たない。10月には東名高速道路で夫婦が死亡した事故を誘発したとして男が起訴されたが、その後も摘発事例は続く。ドライバーの半数超があおられた経験があるとの調査結果もあり、自衛のため記録映像を残すドライブレコーダー(ドラレコ)の売れ行きは伸びている。
10月下旬の夕方、カー用品店「スーパーオートバックス東京ベイ東雲」(東京・江東)の売り場では、多くの客が、店員のドライブレコーダーの説明に耳を傾けていた。
夫婦で訪れた台東区の男性会社員(48)は急な割り込みなどでヒヤリとした経験があるといい、「東名高速の事故で危険を再認識した。何か起きた時の証拠を残したい」。
フランチャイズ本部のオートバックスセブンによると、ドライブレコーダーの売り上げは東名の事故で男が逮捕された直後から前年同時期の3.5倍以上に急増。11月も好調で、メーカーが増産しても品薄の製品もあるという。
警察庁によると、あおり運転などの「車間距離不保持」が原因の事故は今年1~6月に全国で837件に上り、前年同期(572件)から4割以上増えた。
日本自動車連盟(JAF)が2016年6月に行った調査では、あおられた経験が「よくある」「時々ある」は合わせて5割を超えた。無理な割り込みをする車が多いかという質問に「とても思う」「やや思う」は合わせて6割超に上った。
JAFや関連会社のJAFメディアワークス(東京)は13年から、インターネット上の「JAFセーフティシアター」で危険な運転などの動画を公開している。前方の車をあおった上で無理に追い越す危険な車や急に飛び出す子供など、実際の映像を題材に交通安全について考えるよう呼び掛けている。
運転中の出来事に激怒し、報復行為に出る行為は「ロードレイジ」と呼ばれ、海外でも問題になっている。九州大大学院の志堂寺和則教授(交通心理学)は「車は匿名性が高く、鎧(よろい)に守られ安全であると感じ、気が大きくなる人もいる」と分析。相手の顔が見えないことも攻撃行動に向かいやすくなる要因で、「いらいらしやすい人は自分の運転を見つめ直してほしい」と話す。
あおり行為を受けた場合はどうすればいいのか。警察庁の担当者は「高速道路上で停車するのは非常に危険」とし、落ち着いて最寄りのサービスエリアなどの安全な場所に待避し、110番するよう促している。
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