トヨタ、モーター磁石でレアアース半減可能な技術開発

トヨタ自動車は20日、自動車用のモーターなどに使われるレアアース（希土類）「ネオジム」の使用量を半分にしても高温下で性能が損なわれない新型磁石を世界で初めて開発したと発表した。レアアースは電気自動車（EV）など電動車両の普及に伴い需要が急増。ネオジムの使用量を減らすことで主要産出国である中国の政策変更などの影響を受けづらくする。

電動パワーステアリングのモーター向け磁石を2020年代前半までに実用化し、車の駆動用モーター向けは今後10年内に製品化する。

トヨタは先端材料技術部を中心にネオジムより埋蔵量が豊富で価格も安い他のレアアースに置き換え、高温でも高い磁力を維持できる技術を開発した。他のレアアースを混ぜる配分やネオジムの量を減らす二重構造などが新技術の核となる。

ネオジムよりさらに希少なジスプロシウムなども使わなくて済む。実用化に向けて量産技術を確立し、今後、磁石メーカーと組んで製品化するための協議を始める。

自動車用モーターに使う磁石は電流が流れることで発生する高温の環境下でも磁力を高く保つことが必要だ。トヨタのハイブリッド車（HV）「プリウス」のモーターなどに使われる磁石では組成全体のうち3割弱がレアアース。使われるのは大半がネオジムだ。新技術ではネオジム使用量が減ることで価格も抑えられるとみている。

ネオジムは現在、中国産が世界生産の8割以上を占めるとされ、レアアースの生産は同国の環境規制の影響も受ける。各国のEVシフトで強力なモーター用のレアアース需要はますます高まる見通しだ。トヨタによると最も楽観的な予測でも25年時点でネオジムの供給不足になるとみる。

トヨタは昨年12月、寺師茂樹副社長が環境車戦略の大枠を説明し、30年に電動車の販売を全体の半分にあたる550万台以上にする計画を明らかにした。内訳は450万台がHVやプラグインハイブリッド車（PHV）で、EVと燃料電池車（FCV）が100万台となる。自社の電動車販売拡大にはモーターの材料となる磁石の技術も不可欠とみて実用化を急ぐ。

ホンダもレアアースの調達リスク回避のため、使用量の削減を進めている。大同特殊鋼とレアアースの一種であるジスプロシウムやテルビウムなどの「重希土類」を一切使わないネオジム磁石を開発し、ハイブリッド車（HV）用の駆動モーターで実用化している。

16年に発売した小型ミニバン「フリード」を皮切りに、コンパクトカー「フィット」や多目的スポーツ車「ヴェゼル」などにも搭載を広げている。今後も世界で販売する電動車両に適用させていく方針だ。