総務省有識者会議「Beyond 5G推進戦略懇談会」参加によせて | 藤原洋のコラム

~6Gモバイルへ向けて日本の取るべき進路とは?~

 

 総務省は、2020年1月21日、第6世代モバイル通信システムを先導するために5Gの次の世代である「Beyond 5G」に関する総合戦略の策定に向けて、「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開催すると発表し、第1回の懇談会(親会)が去る1月27日に開催されました。これは、5Gの産業化や知的財産の面で欧米や中国に対して、出遅れたことを反省し、先手を打とうという首相官邸からのニーズに応えたものであると言えます。

 親会の座長は、東京大学総長の五神真氏、座長代理は東京大学大学院工学系研究科教授の森川博之氏が務め、WG(作業グループ)の主査は、森川博之教授が、主査代理を、私が務めることとなりました。親会とWGの構成員を兼務するのは、森川東大教授と私の2人だけです。

 さて、6Gは、5Gをはるかに超える性能や機能を有する仕様になる可能性が強く、物理学上の地平を乗り越えるイノベーションが要求されるものと想定されます。そこで、五神東大総長とは、懇意にさせて頂いておりますが、物理学者であるため、この座長人事は、正に適任だと思われます。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000329.html

 

〇懇談会(親会)の構成員

 「Beyond 5G推進戦略懇談会」 構成員 一覧

(敬称略、座長及び座長代理を除き五十音順)

 

(座長)     五神 真    東京大学総長

(座長代理)  森川 博之  東京大学大学院工学系研究科教授

飯泉 嘉門       徳島県知事

内永 ゆか子    NPO法人J-Win理事長

木村 たま代    主婦連合会事務局長            

篠﨑 彰彦       九州大学大学院経済学研究院教授

竹村 詠美       Peatix Inc. 共同創設者・アドバイザー

徳田 英幸       国立研究開発法人情報通信研究機構理事長

藤原 洋         株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO

根本 勝則      一般社団法人日本経済団体連合会常務理事

 

〇作業グループ(WG)の構成員

 「Beyond 5G推進戦略懇談会 検討ワーキンググループ」 構成員 一覧

(敬称略、主査及び主査代理を除き五十音順)

 

(主査)    森川 博之       東京大学大学院工学系研究科教授

(主査代理) 藤原 洋          株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO

足立 朋子   株式会社東芝研究開発センターワイヤレスシステムラボラトリー主任研究員

栄藤 稔          大阪大学先導的学際研究機構教授

岡 敦子          日本電信電話株式会社取締役技術企画部門長

加藤 雅浩      株式会社日経BP日経クロステック先端技術編集長

北 俊一         株式会社野村総合研究所コンサルティング事業本部パートナー

宍戸 常寿      東京大学大学院法学政治学研究科教授

砂田 薫          国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主幹研究員          

寳迫 巌          国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所長

 

 

〇懇談会で審議される内容について
 さて、Beyond 5Gとは、2030年頃の導入が見込まれる、いわゆる「6G」のことで、Beyond 5Gについての議論が諸外国でも開始されつつある中で、その国際標準策定プロセスに日本が深く関与するためにも、Beyond 5Gに向けた取り組みを早期に開始することが必要なことから懇談会を立ち上げることとなりました。主な検討事項は、以下の4点となりました。

 

(1)2030年代の社会において通信インフラに期待される事項

(2)Beyond 5Gによりこれを実現するために必要な技術

(3)我が国におけるBeyond 5Gの円滑な導入及び国際競争力の向上に向け望まれる環境

(4)これらを実現するための政策の方向性。

 第1回会合は、去る1月27日に開かれましたが、2020年夏をめどに取りまとめを行う予定です。私からは、第1回目の会合においてプレゼンテーションを行い、以下の5項目について述べさせて頂きました。

1.Beyond 5Gの最高性能で国際競争力向上を目指す

当社のデータセンタービジネスは、5Gをベースにしたものからどのように進化するか?無線通信技術は、どこまで、進化するか?6Gインフラにおけるアプリケーションは、どのようなものになるか?等について。

2.世界の6Gを巡る動き

国際標準化団体(ITU)、米国、フィンランド、中国、ファーウェイ、韓国LG電子、米マイクロソフトの動向等について。

3.Beyond 5G とデータ流通の進化

5G時代のパブリック5G+ローカル5Gの関係性が、6G時代には、どのようなパブリックBeyond 5G+ローカルBeyond 5Gへと進化するのか?コアDC(データセンター)とMEC-DC(モバイル・エッジ・コンピューティング)との関係はどう変化するか?等について。

4.地域産業創生

5G時代からさらにBeyond 5G時代には、DCの地域分散化が起こり、地方創生のトレンドと同期していくつかの地域産業の創生へ向けての動きが始動すること等について。

5. 政府に求められること

高能率変調方式等では善戦したものの半導体産業の衰退等の5G時代の反省点をふまえ、省庁の壁を超えた施策、異次元のユーザーエクスペリエンスの研究開発、スタート時点での国際間連携等について。

 

●おわりに

 5Gの時に、立案が具体化したのは、2020年のサービスインの6年前の2014年の総務省の電波政策ビジョン懇談会に選任された時でした。現在も後継委員会である、新モバイル通信システム委員会構成員としてフォローアップ会議に出席しています。現在ホットな話題は、5Gにおけるドローン利用の技術基準とNR(New Radio)と呼ぶ4G帯域を用いた5Gサービスの実装に関わる技術基準です。これらの委員会活動に貢献することで、業界を先導する立場に立ち、業界に先駆けて5Gデータセンターの方向性を示すことができることとなります。実際に、2020年の5Gサービスインに先立つ2018年にサービスインすることができたと総括しております。

 さて、今回は、2030年の6Gのサービスインに先立つこと10年ですが、昨今の世界的な傾向でもあるアジャイル型研究開発の進行をみるにつけ、予想以上にBeyond 5Gの施策は、前倒しになる可能性があると考えております。特に、当社のようなデータセンターなどデータ処理用インフラサービスは、6Gモバイル向けのデータ・サービスを5Gインフラの下でも先行投入できる可能性が高いと考えております。

 新年早々のビッグニュースとして伝わっている、日本が世界に先駆けて、始動する総務省「Beyond 5G推進戦略懇談会」に情報通信業界を代表して貢献し、その成果を今後の事業展開に活かしていきたいと考えております。 

 

2020年1月29日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋