築地市場にいる1万匹のネズミたちが、閉鎖後一気に向かう先

移転まであと3週間、要チュー意!

10月6日に閉鎖される築地市場には、推定1万匹のネズミが生息している。解体工事が始まれば、正門は開けっ放し。それはネズミたちの大脱出が始まる合図でもある。本日発売の週刊現代では、東京都を襲うネズミ大繁殖の恐怖を報じている。

銀座の街で大繁殖

東京都中央区築地市場からわずか1km足らず。東銀座にあるインド料理専門店『ナイルレストラン』オーナーのG・M・ナイル氏はこのところ、銀座の街の異変を感じ取っていた。

ナイル氏が語る。

最近、立て続けに子ネコほどの大きさのネズミを見かけました。飲食店の多い銀座7丁目や8丁目でも、何度もネズミを見ています。冬でも暖かい下水道があり、残飯などで食べ物も豊富な現在の銀座は、ネズミにとって繁殖に適した環境になっているのです。

10月6日には築地市場が閉じられようとしています。あそこには大量のネズミがいる。それらが逃げ出して大繁殖したら、銀座の街はパニックになるでしょう。そのうえ、赤坂や六本木、丸の内など、他の繁華街にも拡大しかねません

 

ナイル氏の心配は大げさなことではない。

閉鎖された築地市場は10月18日から解体工事が始まるが、隣接する銀座をはじめとする周辺住民や店舗関係者からは、ネズミの大脱出に不安の声が相次いでいる。

世界中から観光客が集まる銀座の真ん中でネズミを見たら、どう感じるでしょうか。もし高級飲食店の軒先にネズミがいたら、その店の魅力は半減するでしょう。衛生面でも、環境面でも、一般市民の生活に大きな影響が出ます。東京都は中途半端な対応ではなく、やるからには徹底的に駆除するべきです」(ナイル氏)

世界最大の魚市場、築地市場。世界中から魚介類が集まるこの場所は、ネズミが大量に暮らす場所でもあった。専門家によれば、その数はなんと1万匹にも及ぶという。

餌が豊富にある築地市場は、ネズミにとって最高の住処 photo by iStock

ネズミ駆除の専門家でねずみ駆除協議会会長の矢部辰男氏が言う。

築地市場の内外を何度も視察した結果、生息しているネズミの数は1万匹、あるいはそれ以上という数字が妥当かと思います。築地市場にはクマネズミとドブネズミの2種類いて、クマネズミは穀物や果実、種子などを好んで食べますが、数の上ではそこまで脅威ではありません。

問題は大半を占めるドブネズミです。穴掘りが得意で寒さにも強く、大きな成体で25cm程度にもなり、しかも凶暴です。ドブネズミは動物性タンパク質を好みます。築地市場のように、常に餌が供給される場所は格好の棲息場所となるのです。

築地市場の営業が終われば、そのネズミたちの餌が不足します。それと同時に、餌を求めて流出が始まるでしょう

ネズミが増えれば、病原菌を媒介するだけではなく、配電線を噛むことで火災を引き起こしかねない。もちろん、東京都も対策は取っている。都の築地市場管理課の職員はこう話す。

ネズミの一斉駆除は計6回を予定しており、すでに2回実施しています。これまでの駆除ではそれぞれ約700匹ずつ捕獲しました。さらに市場の外周部にはポリカーボネート製の波板を設置し、外に流出しないように対策を講じています。工事車両の出入り口などは細かな隙間を埋めるべく対策を立てていきます。

これと並行して、毒餌を撒き、ネズミ捕りカゴや粘着シートを設置しています。市場周辺には病院や飲食店、住宅も数多くありますから、これらの対策で一網打尽となればいいのですが……

豊洲市場への移転をひと月後に控えた9月中旬、本誌記者は築地市場を訪れた。そこで目にしたのは、都職員が話す対応策がまったく機能していない有り様であった。

たしかに築地市場の周囲には、ぐるりと白い波板が立てかけられてはいる。だが、10cm以上の隙間がところどころに空いており、ネズミの脱出を防ぐことはできそうにない。そもそも、正門などの出入り口は解体工事を行う業者のために開けっ放しになる。いくら周囲を囲ったところで、さして意味がない。

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