時給1,500円!自動運転ロボの「監視バイト」が話題に

月島やつくば市などでロボット見守り需要増加



自動走行ロボットに関連する求人が目立ち始めた。アウトソーシング事業を手掛けるバーチャレクス・コンサルティングが自動運転ロボットの監視業務に関する求人を出すなど、社会実装の前段階となる業務が増加傾向にあるのだ。


自動走行ロボットの本格商用化を見据えた取り組みが活発化している証拠であり、今後こうした求人が爆増する可能性がある。

現在、ロボット関連でどのような求人が出ているのか紹介するとともに、将来どのような需要が生まれるのかを考察していこう。

■自動走行ロボット関連の求人
月島でロボットデリバリーがサービスイン

バーチャレクス・コンサルティングは、東京都港区、中央区、江東区、墨田区、千代田区、文京区などで自動運転ロボットの監視業務を行うスタッフを募集している。

▼東京都でのバーチャレクス・コンサルティング株式会社の求人|Indeed
https://jp.indeed.com/cmp/バーチャレクス-コンサルティング株式会社-5/jobs/l-東京都


ロボットが設定どおりの動きをしているかどうかを、オフィスからの遠隔監視と走行中のロボットに帯同して近接監視する屋外の業務、及び付随する事務処理全般を行う内容で、時給1,500円となっている。

都内各区で募集しているが、勤務地は中央区佃・月島となっている。おそらく、ZMPなどによるロボットデリバリーサービスに関連する求人と思われる。

ZMPはENEOSホールディングスとエニキャリとともに、2021年2月、及び2022年2月に月島・勝どきエリアで無人宅配ロボット「デリロ」を活用したデリバリー実証を行っており、2022年10月以降をめどにロボットデリバリーサービスをスモールスタートさせる予定としている。

出典:ZMPプレスリリース

2022年2月の実証では、エリア内の飲食店など27店舗が参加しており、複数店舗の商品を取り扱う本格的なサービス展開に期待が寄せられるところだ。


【参考】デリバリーロボットに関する取り組みについては「小売配送、自動運転技術の実用化が続々!日米中で(特集:自動運転が巻き起こす小売革命 第4回)」も参照。

ZMPも自らオペレータースタッフを募集

ZMP自身も自動運転ロボットのオペレータースタッフを募集している。業務内容はロボットの運行管理や関連業務、イベント実施時の受付・お客様対応、ロボット走行の遠隔ステーションからの監視、ロボット走行の近接監視――となっている。勤務地は月島で、時給1,100円だ。

▼自動運転ロボットオペレータースタッフ|ZMP|Indeed
https://jp.indeed.com/仕事?cmp=株式会社ZMP&t=自動運転ロボットオペレータースタッフ&jk=80b07e00db8a2266

つくばでもロボット見守りの求人

茨城県つくば市では、つくばまちなかデザインがロボットデリバリーのサポートスタッフを募集している。配達の際に危険がないかどうかを後ろから監視・サポートする仕事で、ロボットの知識は不要という。センサーによる自動運転と合わせ遠隔監視も行っているため基本は見守りとなるが、「危ない」と思った際に手元のリモコンで停止操作を行う。

これはおそらく、パナソニックホールディングスと楽天グループ、西友、つくば市による自動配送ロボットを活用した配送サービスに関連した求人と思われる。

4者は2022年5月からつくば駅周辺の約1,000世帯を対象に、西友つくば竹園店の取扱商品をデリバリーするサービスを行っている。

つくば市から約60キロ離れた東京都中央区の「Panasonic Laboratory Tokyo」から遠隔管制システム「X-Area Remote(クロスエリアリモート)」を用いた遠隔監視・操作のもと自動走行する仕組みのため、遠隔監視スタッフと近接監視スタッフは別々となっている模様だ。

【参考】パナソニックなどの取り組みについては「国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得」も参照。

宅配ロボットを活用する店舗運営スタッフも

自動走行ロボットから派生した業務としては、小売店舗運営の求人もあった。すでに募集を終えているかもしれないが、パナソニックが宅配ロボットを用いた小売店舗の運営スタッフを静岡県伊東市内で募集していた。

自動配送ロボットを活用する新規店舗の立ち上げ企画や、商品のピックアップ、配送ロボット設定作業、商品の在庫管理などを担う。

自動配送ロボットの需要とマッチする小売形態の模索や、複数台のロボットを効率的かつ効果的に活用するビジネス形態など、企画面を重視した求人が今後増加する可能性もありそうだ。

■自動走行ロボットの概要
技術の高度化・安定化とともに遠隔監視へ

自動走行ロボットは、技術レベルに応じて準遠隔監視・操作型(セミリモート型)、完全遠隔監視・操作型(フルリモート型)、完全遠隔監視型(モニタリング型)、完全自律型(フルオートノマス型)などに区分できる。

セミリモート型は遠隔監視・操作型で保安要員がつき、フルリモート型は保安要員なしで遠隔監視・操作を行う。モニタリング型は遠隔監視のみ行う仕組みで、フルオートノマス型は遠隔監視も必要としない技術水準となる。

開発企業の多くはモニタリング型やフルオートノマス型を目標に開発を進めているが、実証段階や初期実装期などにおいては、安全面を重視して帯同スタッフを付けることも多い。

今後、改正道路交通法の施行により歩道を走行するロボットは「遠隔操作型小型車」と位置付けられ、届出制のもと公道走行が解禁される運びだ。こうした規制面の動きに合わせ、全国各地で導入を検討する動きが加速し、まず近接監視・遠隔監視スタッフの求人が爆増する可能性が考えられる。

同時に、需要の多い大型スーパーなどでは、宅配ロボット向けに商品のピックアップなどを行う専門スタッフの求人なども出てきそうだ。

遠隔監視はコールセンター形式に?

なお、近接監視スタッフの需要は長く続かず、ロボットの安全性が確認でき次第遠隔監視のみに切り替わっていく。遠隔監視は、当初は1人が3台を監視するなど比較的厳重な監視体制が敷かれそうだが、安全性の向上とともにこちらも効率化されていくものと思われる。

遠隔監視は常時監視ではないため、ロボットから何らかのアラームが発せられた際に対応することが基本となる。このため、技術の高度化とともに1人が担当できるロボットの数も増加していく。サービスとして走行させる限り万が一の際に迅速に対応するスタッフは必要となるため、遠隔監視スタッフの需要は継続されていくことになりそうだ。

技術が完全に確立し、数千台、数万台規模のロボットが実装されるような将来においては、コールセンターのような形式で数千台のフリートを数十人体制で管理する――といったビジネスも生まれるかもしれない。

■【まとめ】ビジネスの観点で市場伸長し、人的需要も増加

サービス実装期に差し掛かり、今後さまざまな関連求人が出てくる可能性が高いが、これはバスなどの自動運転分野においても同様だ。

社会実装とともにサービススタッフの需要が生まれるが、自動運転技術はその後「どのように有効活用することが可能か」といったビジネスの観点で市場を伸ばしていくことが予想される。

技術開発の需要はまだまだ続くが、今後はサービス面における人的需要も増加していくことになりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転車の「リモート監視員」、100万人近く必要に?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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