個別銘柄 4482 ウィルズ

2020年8月20日

2004年に設立され、上場企業の株主優待に関する業務の受託(プレミアム優待倶楽部)や企業のIR支援を行っている会社です。
ニッチな領域ですが、上場企業からのニーズは常に存在する領域であり、競合企業も少ないことからうまくいけば大化けする可能性があると思います。

また、このビジネスは順調に拡大すれば非常にレバレッジが効いてくる可能性がありますが、その可能性にはあまり注目されていないのでそちらもご紹介します。
管理人の私は数十銘柄の株式を所有していますが、ここも大化け候補として保有しています。

目次

企業概要

4482 ウィルズ

上場企業の株主優待に関する業務の受託(プレミアム優待倶楽部)や企業のIR支援を行っている会社です。
株主優待については改めて説明する必要もないかと思いますが、株式の権利付き最終日に株式を所有していた株主に対して、自社商品やクオカード、自社サービスの優待券等を提供することです。
大和インベスター・リレーションズ(IR)の調査によると、REITも含めて全上場企業3813社の4割に相当する1521社が株主優待を実施しているとのことです。(2019年9月末)

現在、コロナの影響で株主優待を廃止する企業も出ているので、この数は減少していると考えられますが、それでもかなり多くの企業が株主優待を実施しています。

ちなみに、株主優待は日本特有の制度であり、世界的にみても珍しいものになります。コーポレートガバナンスの観点でみると問題である点も存在しますが、おそらくこれからも存在しつづけると考えています。

株主優待の何が問題かというと、株式の所有数に応じて利益を享受するという株式の基本原則に反するからです。普通は1,000株の株主であれば100株の株主の10倍の利益を享受することができます。
しかし、株主優待は保有数の少ない株主に有利となるようなケースが多く、メリットが株式の所有数に比例しないのが特徴であり、ここが配当金との差となります。

では、なぜ企業が株主優待を導入するかというと、もちろん自社製品を知ってもらいたいという純粋な理由で導入する企業も一部存在しますが、多くの企業は、費用は抑えながら物言わぬ従順な個人株主を増やしたいからです。
一見すると、株主優待にかかるコストは高くなりがちと思われますが、まとまった株数を保有している株主に対して費用を抑える効果があります。
そして、優待目的で株を買った個人はそこまで企業の経営に関心ないことが多いので、余計な口出しをされなくてすみます。
このような事情もあり、日本ではこれからもなくならないと考えています。

なお、四季報ではウィルズは以下のように紹介されています。(6月26日)

【特色】株主優待商品交換サイト『プレミアム優待倶楽部』運営、機関投資家情報提供などIR支援も
【単独事業】プレミアム優待倶楽部68、IR‐navi15、ESGソリューション16、他1 <19・12>
【増益基調】株主優待商品交換サイトは契約社数順調増、既存顧客の株主数増加で1社当たりの優待ポイント利用料も伸びる。IR支援、ESG関連サービスの新規獲得進む。ソフト償却費等こなし、営業増益。
【新常態に対応】ブロックチェーン技術を活用し、オンライン上で議決権行使や質疑応答が可能な株主総会運営サービス開始。オンライン出席型決算説明会向けも始動。

【株主】
杉本光生              123(26.8)
蓮本泰之              54(11.9)
SUGアセット(株)             33 (7.1)
ウィッテン・ダレル            18 (3.9)
上川博史              16 (3.6)
青山洋一              15 (3.2)
神保(株) 12 (2.6)
杉本久子              9 (1.9)
SBI証券 7 (1.7)
(株)アスピレーション        7 (1.5)

【役員】
(社長)杉本 光生 
(専務)蓮本 泰之 
(常務)加藤 正明 
(取締)上川 博史 
(取締)山本 章代 
(取締)青山 洋一*            
(常勤監査)平野 喜和*     
(監査)鈴木 行生*            
(監査)野田 清人*

市場

ウィルズは株主優待に関する業務以外に、企業のPRなど広報全般を行っていることから、パブリックリレーションズ(PR)活動支援市場を見ていきたいと思います。
日本パブリックリレーションズ協会によると、2018年度のPR業売上高は推計で1,290億円とのことです。

PRというとマーケティングとに違いが紛らわしいですが、消費者、投資家などに特定の商品・サービスでなく企業を紹介すると捉えるものと考えていただくとよいかと思います。
近年、企業のコーポレートガバナンス、CSR、ブランド戦略を重視するようになってきていることや、SNS等により一瞬で企業イメージが悪化する可能性もある中で、この領域は重要度が高まっていると言えます。

競合

下記の表のような会社がPR業界の主要プレーヤーとして存在します。

企業名得意分野
ベクトルSNSなどネット媒体
サニーサイドアップ食品・飲食、スポーツ
プラップジャパン外資系企業、コンシューマー、ヘルスケア
共同ピーアールバランス型
ソーシャルワイヤーデジタル領域、インフルエンサーマーケティング
PR TIMES有料リリース配信サービス
ウィルズ株主優待支援、IR
電通パブリックリレーションズ官公庁、地方自治体

特定業界に強みを持つ企業や、特定の媒介に強みを持つ企業、ウィルズのようにニッチな分野にフォーカスした企業というように、それぞれが得意とする分野を持っているといえます。
そのため、各社がガチンコの競合というよりは、業界内でそれぞれ棲み分けているイメージのほうが実態です。
例えば、この中のベクトルなどはウィルズのサービスを導入しています。

なお、新規参入の障壁が高い業界とは言えないため、新規参入の増加により競争環境が激化する可能性は存在します。

自社

ウィルズの事業は単一セグメントではありますが、サービス毎の概況について情報を開示しています。
主要なサービスとして、プレミアム優待倶楽部IR-naviESGソリューションがあります。

また上記以外にも、決算説明会の企画・運営等も行っているとのことです。

プレミアム優待倶楽部

プレミアム優待倶楽部事業では、取引企業が発行した株主優待ポイントに関する利用プラットフォームの運営と実際の優待品の手配等を行っています。
また、各社のプレミアム優待倶楽部でのポイントを合算して使えるようにするプレミアム優待倶楽部POTALの運営も行っています。

要は、株主優待業務を集約・代行しているという感じです。

企業の中には、直接業務と間接業務とよばれる二種類の業務が存在しています。

直接業務とは、本業の売上に直接関係してくる企画運営、営業、サービス提供にかかわる部署の仕事などをさします。

一方、間接業務とは本業とは直接関係ないけれど、企業活動を続ける上で発生する業務です。
代表的なのは、経費処理や名刺管理、福利厚生などです。
これらの業務は、どこの会社でも求められることは大きく変わらないため、この領域に特化した専門会社に集約したほうが企業はコストを下げることや、品質を向上させることが期待できます。
そして優待に関する業務も企業にとっては間接業務にあたるので、外部に委託するニーズは高いと言えます。

昔は、株主優待は自社製品の紹介的な意味合いが強かったのですが、近年では株主コントロールの意味合いが強くなっています。ここに目をつけたのがウィルズです。

企業はいかに株主をコントロールするかに専念できるようにし、その他の業務は引き受けてしまおうというものです。

ウィルズの成長性に関して、IR等では何件の企業と契約したのかということが語られ、個人投資家も件数の増減に注目している部分が大きいと思います。
しかし、実際には、契約件数を多くとるよりも、株主に付与するポイント数の多い企業と契約することが重要となります。

要は、多数の株主を抱えている大企業ということですね。そこで、現在導入している企業の時価総額を見ていきたいと思います。

現在以下のような企業がこのサービスを導入しています。
(時価総額純、20/8/14現在、ポイント付与終了企業を含む。プレミアム優待倶楽部HPより作成 https://portal.premium-yutaiclub.jp/

株価(20/8/14)時価
総額
売上高営業利益営業利益率
百万円百万円百万円
2362夢真ホールディングス201887769,14552,5054,7209.0
9418USEN-NEXT HOLDINGS201880748,471175,7698,2394.7
6058ベクトル201990543,38237,5403,3248.9
6191エアトリ20181,92538,11824,3066802.8
2462ライク20191,60632,60451,0722,0003.9
3962チェンジ20181,98531,0947,0541,08215.3
9450ファイバーゲート20191,51630,9307,4241,23516.6
6238フリュー201982423,31627,4323,63813.3
2749JPホールディングス201925922,75331,7191,5394.9
7035and factory20182,33522,1703,91751213.1
9896JKホールディングス201968921,938368,4795,1111.4
3245ディア・ライフ201848819,91219,8663,33316.8
7323アイペット損害保険20191,70318,387   
3457ハウスドゥ201991317,79532,8791,8935.8
3843フリービット201975017,56155,2952,5884.7
6539MS-Japan201963415,8164,0991,70541.6
2311エプコ20191,45313,5364,15156013.5
3475グッドコムアセット20181,75512,89023,3771,7567.5
6067インパクトホールディングス20192,04412,2667,9095146.5
1431Lib Work20192,20711,9636,0361452.4
4436ミンカブ・ジ・インフォノイド201984011,5452,79152318.7
7033マネジメントソリューションズ20182,07811,4863,89544911.5
3810サイバーステップ20191,43711,30012,9986394.9
4662フォーカスシステムズ201967611,01422,7041,4286.3
8038東都水産20192,59410,443117,8571,3441.1
4310ドリームインキュベータ201997610,13222,595120.1
3275ハウスコム20191,1869,23913,0161,0177.8
7325アイリックコーポレーション20191,0118,6324,16947911.5
7590タカショー20194636,79717,3585313.1
2159フルスピード20194236,58721,1581,0745.1
2454オールアバウト20194666,33615,6054312.8
3464プロパティエージェント20198135,84822,6751,9048.4
3924ランドコンピュータ20199705,8079,0957097.8
9264ポエック20182,7845,6745,6422083.7
7228デイトナ20191,4755,3178,6076878.0
2352エイジア20191,1785,1981,87646324.7
2436共同ピーアール20191,2275,0155,7585028.7
3489フェイスネットワーク20199624,79117,1061,0356.1
6551ツナググループ・ホールディングス20185714,18910,6172202.1
7677ヤシマキザイ20191,4304,11836,0833511.0
2499日本和装ホールディングス20194013,6635,51162711.4
3497リーガル不動産20181,1413,29223,7282,3199.8
6181パートナーエージェント20191581,6938,187781.0
3477フォーライフ20196201,2409,6303313.4
3490アズ企画設計20191,0601,0085,509851.5

時価総額が500億円超えの企業は夢真ホールディングスだけで、コロナによる影響かポイントの付与は終了しています(過去に付与したポイント利用のみの状態です)。
残りは全て時価総額500億円以下であり、ポイント付与が終了した企業を除いた全社の時価総額合計は約5,900億円です。
ちなみに20年7月末での日本株の時価総額はおおよそ588兆円なので、0.1%しかシェアを押さえていない状態です。

   (億円)
日付一部二部マザーズPROJASDAQ StandardJASDAQ Growth合計
2020/7/315,654,76864,88268,82963987,7702,2725,879,161

ウィルズの今の状態が続くとなると当然ネガティブですが、一度大手企業が導入を決め、追随する企業がでてくれば業績が数十倍も夢ではないと考えています。
そういった意味で、大化けを狙う株として現物でじっくりと保有するのは非常に面白いでしょう。
また、ミンカブ・ジ・インフォノイドという投資家がよく利用する「みんかぶ」を運営する会社もこちらを取り入れていることも評価できると思います。

なお、ウィルズ自体は自社でこのサービスを優待にしていませんが、成長期の企業なのでまずは顧客獲得のために資金を使っていくべきです。

FY2020の2Q決算では、前年同月比で51.8%増であり、売上・利益とも今期の計画を上回って進捗しています。これは良い数字ですが、あまり即時性のない数字ですので、あくまで今後の契約進捗をチェックしていくべきでしょう。

IR-navi

IR-naviは上場企業が機関投資家向けにマーケティングを行うためのツールであり、主に機関投資家に関するデータベースを備えていることから株主の状況把握やターゲティングを行い、効率的にIR業務を行うことを可能にします。

上場企業の機関投資家に対するIRというとあまりなじみもないかと思いますので、少しどういうことを行っているかを紹介すると、

・セルサイドアナリスト(主に証券会社等に所属)やバイサイドアナリスト(信託銀行や保険会社などに所属)と業績結果や見通しに関する情報提供、コミュニケーション

・株主や株主候補に対する事業概況の説明、コミュニケーション

みたいなことを行っています。

ただの説明のように感じるかもしれませんが、このコミュニケーションをしっかりとっておかなければ企業の評価が高まらない、株主総会の議案に反対されるといったことも起こりうるのです。
経営陣の再任反対に回られたらたまらないので、株主構成にもよりますが、それなりの人材を配置して対応していることが多いです。

このサービスについては、至る所に散らばっている機関投資家情報をコツコツとデータベース化していることが最大の価値であると考えられます。
後から参入を検討する企業が出てきても、データベースの構築に時間がかかり、かつ競合しあうことからそこまで収益が期待できないとなると、参入を決める企業はなかなか現れないと考えられます。
一方、機関投資家の議決権行使に関しては、議決権行使助言会社が出てくるなど、年々注目度が高まっていることから、ニーズは伸びていくと考えられます。

FY2020の2Q時点でサービス利用数は297社です。

また、直近FY2020の第二四半期の決算発表資料によると、このサービスは前年同期比で13.3%の増収ということです。
2019年12月末時点より契約社数が16社増加し、297社になっているということで、確実にストック型の収入を積み重ねていることは心強いですね。

FY2019年度の数値については以下の通りです。

また、各サービスの原価率を有価証券報告書より作成したものが以下になります。

売上高売上原価原価率
260,013千円73,762千円28.4%
IR-navi
売上高売上原価原価率
122,548,1千円665,637千円54.3%
プレミアム優待倶楽部
売上高売上原価原価率
286,757千円218,474千円76.2%
ESGソリューション

見ていただくと分かる通り、非常に原価率が低く収益性が高いと思われます。
DBの追加・更新に関する外注費や保守メンテの費用はかかりますが、サービス提供社数が増えても変動費としてかかるものはほとんどないことが想定されます。

とうことで、大きな売り上げは期待できないかもしれないですが、この規模の企業にとってはキャッシュを安定的に生み出してくれる良い事業だと思います。

ESGソリューション

ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の三つの言葉の頭文字をとったもので、近年注目が高まっています。
ウィルズはアレックス・ネット株式会社を買収しており、その会社が主にアニュアルレポートや統合報告書等の作成支援をしています。

従来は、各社とも主に業績に関する報告に力を入れてきました。
決算説明会や会社説明会等を行うことで、主に投資家にアピールしていると言えます。
一方、ESGは会社のあらゆる取組を社会に発信していく点で、対象者が異なってきます。最近だとプラスチック削減の取組などが話題ですね。
持続可能は発展を遂げる企業であることが求められてくるに従い、ESGに力を入れる企業が増えてきました。
また、機関投資家の投資判断にもESGへの取組という観点が含まれてきています。

この事業自体は、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)に近い性質のものがありますが、この領域で企業との取引実績を積み重ねれば、ほかの領域でも取引が広がることが期待できると思います。

FY2020の2Qでは、前年同期比で11.8%の伸びを見せているので、それなりの成長と言えるでしょう。
一方、この領域売上が伸びるに伴い人件費等も増えることが考えられるので、利益貢献という点ではあまり期待しないほうが良いと思います。

まとめ

かなりニッチな分野で競合もいないビジネスを行っており、うまくいけば将来的に業績が数十倍になる可能性も秘めていると思います。

コロナや企業業績に左右される部分も多いですが、成長株の一つとしてポートフォリオに組み入れておくのが面白いと思います。

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