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三井E&Sの信用買いとショートの記録的増大をまとめてみる


最初にお断りしておきますが、文書だけで構成されかつ長いです。時間がない方は見出しと太文字だけを追っていただければ良いと思います。

2月9日 まだ何者でもなかった時代

12月25日(703円)の頃通期の上方修正IRが出されたこともあり5連騰などがあり、実はひそかに脚光を浴びていた7003三井E&S。それもあって信用買いはこの段階で既にかなり積み上がっていた。発行株式数の12.3%ほどの信用買いを積み上げ、それに目をつけたファンドが既に5社空売りをしかけていた。(括弧内は発行株式数に対する空売り比率)
JPM(1.22)
Barclays(0.49)
モルスタ(0.71)
XTX(0.52)
GOLDMAN(1.51)
この段階で判明しているファンドの売残は4.9%。一般人の空売りはこの段階では0.9%。合計すると5.8%となっていたが、この後事態は一変する。正直この段階でも5社でもヘッジ介入はかなり多い方ではある。

2月14日 決算発表から2連続ストップ高へ

これまで赤字が続いてきた同社が儲かる事業に全振りしたことで、残存事業のほぼ全てが黒字となり、株価が最も上がりやすいマイナスからプラスへの変換のタイミングとなった。これを受けて翌日・翌々日の2日連続でのストップ高となる。

この2連続ストップ高でほぼ取引ができない中で、Barclays・モルスタ(モルガンスタンレーMFGU証券)は売増しを行っている。

2月22日 ホワイトハウス声明

3連休前の木曜日の午後。ホワイトハウスから港湾クレーンを中国製から国産に切り替える方針であること、および、そのクレーン事業はパセコ社(三井E&S子会社)であることが声明として発表された。7003は秒でストップ高に張り付く。連休明けの2/26もあっという間にストップ高に貼りつく。

3月8日 加熱は続く 一時2898円

三井E&S買いの勢いは続き一時2898円をつけた。買えば上がる三井E&Sの人気は高く、信用買いも2110万株まで積み上がる。(発行株式の22%)三井E&Sの浮動株は16.3%。明らかに買残が積み上がりすぎていた。

異常な信用買い残=極度の需給の悪化、に目をつけたファンド陣は空売りを強めていく。

3月1日段階で空売りのファンドは11社まで増えショートの合計は13.7%まで膨れ上がる。一般の空売りが3月1日段階で1.5%程度であり、合計15%程度。それでも、まだ空売り側は信用買残22%までの差分は売り増しできる状態にあった。Nomura Internat・MERRILL LYNCH・Integrated Core・UBS AGとういこところは1700~1800円台で空売りに入っている。

3月11日 ストップ安

日銀のマイナス金利解除に関する見通しと米ハイテク株安が重なり3月11日から日本市場は大幅に下落。その下落と一気に上がりすぎた7003は大きく反落し-500円のストップ安となってしまう。

この機会を見逃さず損切りで退散したのがXTX社。ストップ安でもまだ2053円であったので、3桁時代からのショートポジションを持つ同社は、かなり含み損を抱えた状態であった推測するが、潔い撤退を敢行し、7003と縁を切っている。(多少は残っているのかもしれんけど)

また、この3/11の下落の最中にメリルリンチとIntegreted社がショートの半分を利確(損切り)している。放っておけばまだ下がりそうなものだが、大きく動いたときに少しだけ確定しておくというのは、一般投資家にも参考になりそうだ。

3月12日 2連ストップ安は免れる

同日も特売りではじまり、すごい勢いで株価は下落したが、奇跡的(?)に寄りつくことに成功した。
この日のファンドの売買状況は以下

売り増したファンド
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL +0.06%
Barclays Capital Securities Ltd +0.38%
BNP Paribas Financial Markets +0.14%
Jefferies International Limited +0.08%

買い戻したファンド
MERRILL LYNCH INTERNATIONAL -0.23%
Nomura International plc -0.46%
JPM Securities Japan Co Ltd. -0.06%

この日ファンドが全力で売り崩しに出たら間違いなく2日連続でストップ安になっていたと思われるが、Barclays以外は様子見、もしくは買戻しとなっている。朝一での下落は信用買いの強制決済の影響も大きかったと見る。買い玉が減れば、理屈上ファンドは買戻しが必要になってくる。この日7003は1800円まで下げた後、1931円まで反発となった。

一般人の信用買いだが、この日どの程度比率が下がったのだろうか。出来高的にもレーザーテックを抜いて東証1位になるなど、加熱が続いていた7003はこの日を最後に翌日から増し担保規制に入る。

3月13日 増担保規制へ

増担保規制が入り、買いが入りづらい状況の中株価はじりじりと下げた。増担保規制=新規の空売りが制限されるとうことから、ファンドの積極的な売増しは影を潜めた。しかし、ここをチャンスと見て崩しにかかってきたのがモルガンスタンレーだ。3月15日に0.77%・3月22日にも0.81%の売りを入れて全力で崩しにきた。

3月25日にはJPMORGANも0.51%を空売って再inしてきた。

3月27日に増し担保解除となるのだが、解除前日の3月26日は翌日の解除を受けての買いを期待した買いが入り大幅に上昇。結局増し担保入り前の株価1981円に対し、増し担保最終日の終値2133円と増し担保期間中に株価は上昇した

一般人の信用買いは3月22日段階で19.7%とあまり減っていないが少なくとも増えてはいない。現物での買いにより株価が上昇したことが伺える。そのまま解除日を迎えることになった。三井E&Sにとっては増担保規制がずっと続く方が株価は上がっていたかもしれない。

3月27日 増担保規制解除

増担保規制が解除され、新たな買いが入ることも期待された7003だが、株価は朝から下落した。増し担保解除期待で前日に増加した信用買いがヘッジの売増しになって翌日振ってきたと考えられる

GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL +0.05%
MERRILL LYNCH INTERNATIONAL +0.56%
Nomura International plc +0.34%
BNP Paribas Financial Markets +0.03%
JPM Securities Japan +0.52%

株価が2000円を超えて高値にあるうちに大きくショートポジションを取ったのはUBSとゴールドマンでこの2社はかなり利益が出たのではないかと推測する。

増し担保翌日は結局-8%近い大きな株価下落となった。

この大きな下落の日、メリルリンチが0.56%で再in。前日の信用買い勢を崩しにいったということになる。

3月29日 米国でクレーン業者選定IR


引き続き下落を続けていた7003だが、事実確認中としていた米国港湾クレーンのパートナー企業を選定していることを示すIRが発表された。株価は僅かに+0.6%上昇。

信用買いは20.7%と先週に比べて1%上昇して再び20%の大台にのせる。増し担保が解除され再び信用買い増加への道が始まった。

一方信用の空売りも3.1%まで+1.1%上昇。ファンドの空売りは14%とこちらも+1.2%上昇。ショート両者の合計は15.1%

4月1日 東京市場の地合悪化

3月29日IRを受けて株価は約1.8%上昇。モルスタが0.65%買戻ししている。一方で、USBがこの日0.65%で再参入。

4月に入り東証全体の地合も悪く、7003は翌4月2日に-9%近く下げた。この日にモルスタが再度0.61%売増し。ファンドのJANEが0.58%の空売りをして、即日に利確して撤退している。(デイトレ?)

翌日4月3日も地合が悪く、7003も-6.5%と大きく下げたが、この日JPMsecと野村が大きめの利食い。一方、モルスタは怒濤の1.33%の売増しの攻勢をかけている。

4月5日 地合悪化の中増える信用買い

新年度に地合悪化が続き株価下落が続いていたにも関わらず、4/5時点での信用買いは21.7%とさらに1%増加

信用売りは0.2%増加し3.3%、ファンドの売りは一気に2%増加し16%。ショート勢合計が19.3%。0.5%未満のファンドの売りは見えないので、ほぼ信用買いと空売り+ファンド空売りが並んだ状態となったと考えられる

4/5を境にいったん7003株価は落ち着き、4/5~4/11に5連騰となった。4/11には1896円まで戻している。

信用買いとほぼイコールまで増加してしまったファンドと一般人の空売りゆえ、売り玉がないためか、大きめの空売りはこの期間には入っていない。ただし、モルガンスタンレーは空売りの手を緩めておらず、空売りの残量は一時5.5%まで増加。ゴールドマンサックスも3%を超えた


4月12日 買残急増と怒濤の売り崩しへ


東京市場の地合い悪化は続き、7003も4/12~4/19に株価は一気に-336円下落して4/19の終値は1560円となる。

5月の7003決算に向けて、いつ上方修正IRが出てもおかしくない時期に入ってきたこともあってか、信用買いはさらに増加した。これまで20%程度の買残が一気に5%増えて25.2%となった

これをファンドが見逃すはずもなく、ファンドの売り残も21%まで増加。一般人の空売りは2.9%に落ち着いたが、ショート勢の合計残高は23.9%まで上昇。ファンドの0.5%未満の売残も加えればほぼぴったり買残の残高と一致になったと考えられる。

買残と売残が同量増えたが株価が大幅に下落したということは、現物が売られていると推測される。

また、素人の買い方による株価の上がり方に比べて、ファンドの売り方は
効果的に株価が下がる売り方をしているとも言える。

この4/12までの期間に大きく売り増ししたのはやはりモルガンスタンレー(5.28%)、ゴールドマン(3.8%)、野村(2.15%)、UBS(2.14%)。合計11社のファンドが大小の空売りで株価を崩しにいっている。直近ではゴールドマンの空売り比率は4%を超えている。

総括:信用買いから見るファンドの戦略


文字ばかりたくさんになってしまったが、一言で言うと信用買いが増えるタイミングで買残の同量が売り崩されて株価が大きく下落していることが分かる。

私たち一般人が週1で知ることのできる正確な信用買い残高は、ファンド側はある程度早めに把握しているようである。その残高から空売り分を差し引いた残高がファンドが仕掛けられる空売り量となる。

一般人の市場での買いによる上昇とファンドの売り仕掛けは、株価はファンドの売り側に導かれることも分かる。

一般人の信用買いはほぼ6ヶ月期限。対してファンドは無期限。

本決算時には決算期待で信用買いが最も増加して、買い残はおそらく前代未聞の発行株式数の30%超えになると考えられるそこで積み上がる買残が全て売りとなって決算翌日に振ってくる可能性がある。増し担保前日と翌日の大幅下落が、さらに大きくなって再現されるということだ。

同社の浮動株は16.3%であり、どんなに現物の買い入れがあっても30%の売り埋めを消化できるだけの現物買いの増加はあり得ない。ヘッジファンドが買わない限り30%となった信用買いの買い手はいないのだ。繰り返すがヘッジファンドの買戻しに期限はなく、含み損覚悟でいつまでも持つことだって可能である。6ヶ月待てば時間切れでヘッジファンドの勝利になるのだ。

また、株価が上がったとしても信用買い勢は上がればすぐに売るので、その意味でも株価は下がりやすい状況となる。

今の7003の株価の動きは需給が全てと考えられる。ある意味ファンダメンタルはもはや関係なく、本決算における好決算はただの株価下落へのスイッチにしかならない可能性がある。そのタイミングで買い残が積み上がってしまうからだ。

今の三井E&Sの株価が上昇するには、含み損覚悟で信用買いしている各者が現引きすることがまず必要である。そうなれば、ファンドは買戻しを進めざるを得なくなり、株価は上昇する。

新規の信用買いは今は需給が相当悪いことを理解して判断すべきで、正直今危険性のかなり高まっている三井E&Sに信用買いでinするなら他にもっと需給が良い株がたくさんあることを理解して判断してもらいたい。

この悪需給を乗り切るには、現引き現物を持ちながら長期間待つこということに尽きるのではないかと考える。

決算や上方修正期待は今かなり高まっていると思われるが、今現在ファンドの売残が減少しているとか、撤退が伺える状況ではなく、まだまだ買戻しも進んでいない

別のシナリオでヘッジファンドが大敗するような可能性もあるのかもしれない。しかし、それを期待するのは楽観的すぎる気がする。

現在1500円程度の株価は維持している7003だが、ここから買残30%勢の強制ロスカットがはじまったら少なくとも1200までは落ちるだろう。証拠金が維持できなくなる可能性がある方は今のうちに対処しておくべきです。

私は700円台からの現物ホルダーですが、少しだけ上の方で買った信用が残ってしまっている状況。(現引き用に少し買っていた)が、大幅な損を覚悟で切っていくつもりです。

<上記文書はあくまで私見です>


*********4/23追記********

4月19日 4月3週目-336円下落で買残減少

4月第3週は日経平均の主力銘柄である半導体装置関連各社が大幅に株価下落。東京市場全体としても週足-2455の大幅下落。三井E&Sは需給悪と相まって先週末の大幅下落も併せて一気に-336円下落して1500円台に突入した。

三井E&Sのみならず、値がさの半導体銘柄の下落によって信用買いの保証金維持率が維持できなくなった人もいたか、4月19日現在の7003の信用買残は発光済み株式数の25.2%→22.1%と3%縮小した。

ファンドは週の初めは売増しを進めていたが、木曜日と金曜日に大きくショートカバーしている。おそらく、地合悪化によって水曜日と木曜日に信用買残が減少したものと推測される。また、この地合に乗じた信用売りも増加しており、その分ファンドの売り代も縮小したと考えられる。

信用売りは3.2%と0.4%増加ファンドのショートは21%→18%とやはり3%縮小した

19日(金)にモルガンスタンレーは-1%と大きめに買戻しているほか、UBSも-0.4%と大きめにショートカバー。

18・19日と大きめにファンドが大きく買い戻しているにも関わらず株価は大きく下げているのは、ファンドが置いた板に買残が投げられたからだろうか。ファンドは買い戻しても株価は上昇させないというところに、まだまだ下げる意思を感じざるを得ない。そして、まだ売残を大量に残している。

ゴールドマンだけは音なしで週末は静観。ショートのポジションを他社に減らさせているが、このあたり何らかの会社間の調整があるのだろうか?(明らかにそれは違法だが)

ちなみに、翌月曜日は上方修正を狙った買いで株価は大きめに上昇。おそらく信用買いだろうから、それなりに買残割合は上昇している可能性はある。逆説的だがE&Sに信用買いさせないためには、市場全体の地合が悪化し、各自の保証金比率が下がるのが有効なのかもしれない。

<4/23更新終了>

4月26日 進む信用残整理


4月第4週の株価推移は信用買残推移とほぼ連動した。4月19日週に7003の上方修正IRは発表されず、ゴールデンウィーク前にポジションは減少推移していった。それと歩調を合わせてファンドの買戻しも進んだか、株価は上昇。は木曜日こそ大きめに下がったが、残る4日は上昇。週足で+132と8.4%と大きく上昇した。東京市場の地合いが改善し、7003の信用買いを現引きする人と、現物買いする人が一定いたものと推測する。

信用買い残の推移は株価とほぼ連動した。

4月22日 1574円(+0.9%) 信用買残 -182100(-0.17%)
4月23日 1627円(+3.3%) 信用買残 -53600(-0.05%)
4月24日 1661円(+2.1%) 信用買残 -209800(-0.2%)
4月25日 1560円(-6.1%) 信用買残 +1985800(+1.9%)
4月26日 1692円(+8.5%) 信用買残 -2036300(-2.0%)

上記5日の株価の上下動は日経平均の上下動とも一致。地合が良い日は信用買いが整理され、地合が悪い日に信用買いが増えている。4月22日から3日間進んだ信用買残整理だが、それをぶち壊すかのように4月25日に新規の信用買残が流入してしまった。

4月22日~4月24日のヘッジファンドの動きはまちまちで持ち高を減らすファンドと増やすファンド、いずれも小幅な動きとなっているが、大きく信用買残が増えた4月25日はファンド7社もショートポジションを拡大。Barclays・モルスタMUFG・野村・UBSが大きめに売りを増やしている。日銀の緩和継続で大幅上昇した4月26日に信用買残が大幅縮小するが、歩調を合わせてファンド7社がショートポジションを縮小。BNPは0.5%未満となり報告対象から外れている。(0.48%なので一時的と考えられる)ゴールドマン・野村・Baclaysが大きめにポジションを縮小した。

4月26日は前日に増えた信用買いで捕まった人が、株価が戻ったことでこれ幸いと売り埋めで解消した様子。ファンドは引き続き売りポジションを保有しているので、株価が上がらないように買戻ししたいのだろうが、地合いが良い日(株価が上昇する日に信用買残が減少する時)にファンドが買戻しする時は何不利構わず買わざるをえないからだろうか、株価は大きく上昇している。

地合悪の日に信用買残い勢が投げ売りする日に株価が上昇しないのとは対照的である。(一定現物買いもあったとは思うが)

1週間のトータルでは信用買残は22.1→21.6%と0.5%だが減少。ファンドのショートポジションは17→19%と2%上昇。

また第三の勢力である信用売りだが、3.2→4%と増加しややボリュームを持ってきた。信用売りとショートポジションの合算は、発行株式数の23%。あくまで推測の数字ではあるが、やはり信用買残と同量のぎりぎりまでファンドが売っている状況が推測される。

5月14日の決算発表に向けて、今後決算期待の信用買いは見込まれるので、信用買いが大きく減少することはないように思えるが、決算をまたぎたい信用買い勢がどの程度いるのか。7003の信用残状況は1日タイムラグはあるが、日々公表されているので関係する人はチェックすることをお奨めする。

浮動株16%に対して、上がったらすぐに売りたい信用買い勢20%。仮に決算後に株価が上がったとして、その売りたい人の買い玉を買うのはやはり信用買い。その信用買いのリレーが続いていった先がどうなるのか。賢明な読者の方はお分かりだろう。

もしくは、決算発表翌日の寄りからファンドの大量の売りが入り上昇すらしないのだろうか。

今誰もが好決算と分かっている7003。誰もが好決算と分かっている株が上がりづらいのもまた事実である。

(また、過度なボラティリティが予想されるので、安易な空売りも推奨しない。)

<5/6更新終了>

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