Nobuです。

本日も閲覧ありがとうございます。
今回も皆様にとって有意義な内容を、財務会計を本職とする者の立場からお届けしたいと思います。


さて、先日のブログで「財務基盤が強固な会社」の見分け方をご紹介しました。
私は本職での総合商社、プライベートエクイティで投資業務を経験し、個人でも10年来に渡って株式投資を行っていますが、とりわけ個人投資家がパフォーマンスを確保する上で最も避けなければならないのが増資であると考えています。

特に小型株になると、東証一部の大型株と比べてキャッシュフロー経営を意識した経営者が激減し、「アグレッシブ経営」や「攻める経営」という大義名分の下で、安易な大型増資を実施してくるケースが多発します。


とかくベンチャー界隈では、増資などのエクイティファイナンスを発表した経営者に対して、「おめでとう!」と全面賞賛されているのを目にします。

小型株の某葬儀業者T社(東証一部)は借入を避けるために、増資を連発していたりするケースもあり、
特に、増資の資金使途が運転資金などと発表されていると、財務を本職とする身としてはゾッとする訳です。

本来は株主価値を守るために、経営者はデットファイナンス(銀行借入)を最大限に駆使し、増資は最後の選択肢、であるべきなのです。


個人投資家としても、ファイナンス(資金繰り)に対する知見、財務諸表を読む力が求められています。
増資を予測して避けることができるかどうか、でパフォーマンスは大きく変わるのです。

逆にいえば、大型増資で株価が暴落した直後に投資を実施すれば、直撃を受けた個人投資家たちの資金を最大限に活用し、自らのパフォーマンスを高めることができます。財務が強化された状態を、安い価格で買える訳です。



前置きが長くなりました。
本日は、カジノ関連銘柄として個人投資家に大人気、2743 ピクセルカンパニーズを取り上げます。
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尚、私は現時点で投資を行っていません。
吉田社長は成長意欲も高く、分野としても成長ポテンシャルは高いとは思いますが、同社の財務状態が悪く、資金繰りの観点で増資実施が近いと予想するからです。私の予想では、今年の夏には増資が来ると踏んでいます。

マージャンと同じで、直撃を避けることが、最大のポイントなのです。
増資が行われて株価が下がり、一方で財務基盤が磐石となった時点で、投資検討を行う戦略をオススメします。
加えて、実績のあるCFOが招聘されるような機会があれば、好材料です。

同社のIR資料を見ると、カジノビジネスを不動産ビジネス(アセットマネジメント)スキームと捉えて、ビジネスモデルを組上げていることが発表されています。

製造したスロットマシーンを投資家に売却(流動化)し、リースバックを受ける形で、カジノ側へ転貸するスキームです。
フリートマネジメントを志向する以上、尚更トップマネジメントの中に資金繰りが分かる人間が必要となってくる訳です。

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Twitterでも度々呟いていますが、影響力のある方々がこぞってピクセルカンパニーズを推奨しているのを目にします。短期の値幅取りを狙うのであれば良いとは思いますが、私個人の考えとしては、財務諸表を読めない個人投資家に現在の同社を推奨することは憚れる訳です。


ここで、ピクセルカンパニーズを増資警戒企業と看做している理由を簡単にご説明します。
私がどういった視点で、各企業の財務を判断しているか、少しでも参考になれば幸いです。

今回、具体的な企業の財務諸表を用いてご説明しますので、合わせてこちらの記事も読んで頂けると理解が深まると思います。

【過去記事】 



まず、ピクセルカンパニーズのBSを見てみましょう。
財務が悪い会社の典型的なアイテムがあることが分かります。

赤枠で囲んだ「前渡金」、過去記事でもご紹介した「長期貸付金」、そして「長期未収入金」です。

これらは将来受け取る権利を有する債権ということで「資産の部」に計上はされますが、資金繰りを悪化させる悪しき資産です。つまり、外部会社のためにお金を融通してあげている金額です。

これらアイテムは、黒字で財務磐石な企業であっても「?(疑問譜)」が付く項目ですが、赤字会社である同社のような企業では取引先に対して交渉上のパワーバランスが弱いことを示しています。


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この見方を裏付けるべく、半期ごとに提出されるCF計算書を検証しましょう。
重要なポイントになります。


まず最上段で、営業活動(税引前当期純損失)から5億4,348万円が流出。
加えて、棚卸資産の増加や、当期の前渡金で5億863万円もの資金が流出していることが分かります。

また、前期には、ただでさえ営業活動で資金がマイナスなのに、外部会社へ4億5,350万円もの資金融通(貸付)を行っています。
結果、資金繰りが回らなくなり、当期に9億2,412万円もの増資を行っている訳です。


株主が泣く泣く増資に応じて、そのお金が外部会社に流れている訳です。
キャッシュマネジメントに配慮を欠いているとしか言えません。

本来、株主であれば、この財務諸表を見た瞬間にIR部門へ詳細の開示を要求し、場合によっては怒り狂わないといけないのです。

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さて、既に過去に使ってしまったお金は仕方ありません。
今後どのような展開が予想されるかを見ていきましょう。

ピクセルカンパニーズの純資産の部を見てみると、9億円の増資をしたのだから磐石かと思いきや、赤字の結果、累損が溜まりに溜まって、株主資本は第三四半期終了時点で8億5,776万円(発行済みの新株予約権を含めても9億5,400万円)しか残っていません。
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当期は第三四半期までで▲8億3,495億円の純損失であり、先日通期では▲15億7,100万円の赤字になると発表がありました。
開示の中身を見てみると、やはり「貸付金が回収不能になった」として減損損失を計上してきました。
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従来申し上げているように、外部に資金を融通する「貸付金」は正当性が極めて低く、銀行の融資審査でもゼロ評価となることはザラです。

BSに貸付金を計上している会社に投資をする場合は、IR部門へ内容(特に無担保融資かどうか含む融資条件)の開示を要求しましょう。

【過去記事】 



この結果、ピクセルカンパニーズが本決算で発表するであろう財務諸表では、株主資本が僅少となり、2019年度には増資をしないと債務超過が視野に入ってくるバランスシートになることが予想されます。
同社への投資を検討されている方は、ここも含めて自ら本決算の内容を確認をし、リスクマネジメントを行って頂ければと思います。


最後に、ピクセルカンパニーズが2019年に急速に業績を回復し、大型増資を避けることができるシナリオがどの程度あるのかPLを検証してみます。

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当期の大幅な赤字に至っている理由は、吉田社長の説明する通り、システム開発による先行費用やテストマーケティング等の積極的な販売費が原因なのでしょうか?

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これも、会計を学ばれた方なら、Noであると分かるはずです。

ピクセルカンパニーズのPLを下から上へ辿ってみると、売上総利益率が5%しかないことに気付きます。
そうです、経費が原因ではなく、販売原価(COGS)が高すぎるのです。
マカオのテストにかかる営業費用は、本質的な問題ではないのです。

吉田社長の説明にある「先行して発生したシステム費用」というものが、即時に経費で入ってくるのか、全てバランスシートに繰り延べられて将来のマシンの販売と共に原価計上されるのか、はたまた償却といった形で経過計上されるのか、は同社の会計方針を確認しないと分かりません。

しかしながら、いずれにしても売上総利益は、現在の棚卸資産に計上されている旧在庫が最低でも一回転し、原価の軽い新在庫に入れ替わらないと改善されません。時間がかかるのです。


このことから、私は2019年も引き続き、ピクセルカンパニーズは赤字を計上し、早い段階で大型増資を実施、既存ホルダーが泣きを見ることを予想する次第です。

 
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こうしたフローで財務諸表を一度見るだけで、増資によるストップ安を直撃で受けてしまうリスクをミニマイズできます。

是非この記事を参考に、財務諸表を読み解く練習をして頂ければと思います。


参考になりましたら、Retweetやコメント等で 応援頂けると嬉しいです。

ではまた!