公道で自動運転の実証実験 NTTデータ
NTTデータは13日、自動運転技術による移動サービスの実証実験を大和自動車交通、群馬大学と共同で14日から公道で実施すると発表した。自社開発した運行監視や遠隔監視などのシステムと自動運転車両を組み合わせ、東京・豊洲地区の地下鉄駅、商業施設、マンションの3拠点を結ぶサービスを実証する。2020年までの実用化を目指す。
NTTデータ本社の最寄り駅である地下鉄有楽町線の豊洲駅付近の交差点、商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」、地区内のマンションを結ぶ公道で9月14日、19日、20日の3日間に実証する。
マンションの住民が、スマートフォンのアプリで乗降場所を指定して配車を依頼すると自動で配車し、目的地まで運行する。利用者が降車すると、自動的に回送する。NTTデータによると複数車両を同時に利用する点や乗降場所を利用者が指定できる点、利用者が希望する時間帯に乗車できる点で新規性が高いという。
トヨタ自動車のミニバン「アルファード」に全地球測位システム(GPS)やレーザーなどを設置し、自動運転ができるようにした車両を使う。NTTデータが開発した運行管制システムや車両の遠隔監視システムで走行ルートや車両の状態を把握する。
車内にはロボット開発ベンチャー、ヴイストン(大阪市)のヒト型ロボット「ソータ」を設置。運行案内をするほか「利用者の自動運転への不安感を和らげる効果を期待する」(NTTデータの町田宜久第一公共事業部営業統括部市場創造推進室課長)。
NTTデータは20年までに、一定条件のもとでシステムが全てを操作し、運転手は関与しない「自動運転レベル4」の移動サービスの実用化を目指している。町田課長は「システムの販売だけでなく、移動サービスの事業者と共同で事業を展開する」と話す。
発表会見後は報道機関向けの試乗体験を実施した。記者も車両に乗り込んだ。今回の実験は、安全性を確保するため運転手が介在する自動運転レベル2相当だ。
車両に乗り込むと、ロボットのソータが話しかけてくる。ソータに促されてシートベルトを装着し、準備が整った。
12時6分、NTTデータ本社から公道に出ると自動運転を開始した。確かに運転手がハンドルを握っていない。
順調に走り始めたのもつかの間、すぐに難易度の高い局面が訪れた。交差点を通過しようとしたタイミングが、ちょうど信号の変わり目と重なったのだ。すると運転手が手動運転に切り替え、車両を停止させる。「安全に配慮した」と運転手は説明した。
周囲のオフィスに勤務するビジネスパーソンの昼休みの時間帯と重なったためだろう、横断歩道で待つ歩行者が多い。信号が切り替わるのを待たずに歩き始める歩行者がいれば危険だ。
この交差点を通過すると、再び自動運転に切り替わった。今回の試乗体験の終点、ららぽーと豊洲の前まで進んだ。右折しようとしたところ、横断歩道に歩行者、前方には対向車、さらに右折する道路にも左折しようとする自動車が待ち受ける複雑な状況を迎えた。それでも歩行者が横断歩道を渡り、対向車の直進が終わるまで着実に停止。安全になってから右折し、終点に到着した。
相応に自然な運転を実現していると記者は感じたが、都市部ならではの課題もあるとNTTデータの町田課長は打ち明ける。今回の走行区間は高層ビルが多く、GPSがあまり有効に機能しないという。レーザーだけでは位置情報の精度を高い水準に維持することが難しいため、走行ルートがわずかにずれる恐れがある。今回の実験を通じて課題を洗い出し、改善していく方針だ。(島津忠承)
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