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【9424】日本通信株式会社代表取締役社長 福田尚久氏「通信業界を軸に、社会変革に本気で取り組み続ける」

※本コラムは2023年2月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。

MVNO事業におけるパイオニアとして唯一無二のポジションを確立し事業を拡大させてきた日本通信株式会社。

「安全・安心にデータを運ぶこと」をミッションに掲げ、さらに安全なデジタルIDへの取り組みも進めています。

代表取締役社長の福田尚久氏に差別化のポイントや成長戦略を教えていただきました。

目次

日本通信株式会社を一言で言うと

通信業界を軸に、制度・技術・ビジネス構造の三つの側面から社会変革を正面から真面目に考え、ここに本気で取り組み続ける会社です。

代表就任の経緯

当社に参画する前は、Apple本社にてマーケティング責任者として非常に密度の高い5年を送ってきました。iPodのローンチや直営店展開などにも携わって一定の達成感を得ましたが、2001年9.11の体験が大きな転機になりました。

それまでアメリカの会社のために一生懸命やってきたけれど、祖父母、親、みんな日本にいるわけです。40代を前に再度自身のキャリアを見つめ直し、日本に戻ることにしました。

業界についてはApple社での経験からもモバイル領域にしようと決めていました。モバイル領域について勉強していくと、世界各国の多様なモバイル通信事業者の中で1番面白そうな取り組みをしていたのが日本通信であった、というのが当社にジョインした理由です。

携帯事業はキャリアが主役の業界ですが、その歴史は浅く、まだ数十年ほどしかたっていません。垂直統合型で進んだ産業が成熟期を迎えると水平分業型に変わり、そこではパワーシフトが起こります。そして当時、私もモバイル業界でこのパワーシフトが起こると考えていました。

2002年にマーケティング責任者として入社し、ちょうど3年後の2005年にCFOとしてヘラクレス市場への上場も果たしました。通信はデジタル時代のインフラとして非常に重要です。しかし、当業界は規制業種であり、その規制を変えない限り、突破口を開けません。

創業者で現会長の三田とこの規制改革にひたすら向き合ってきました。そのような中、2015年には東証一部への上場を果たし、このタイミングで指名をうけ現職に就任いたしました。

以来、私が進めているのは技術基盤や制度面での改革です。会社として将来にわたって成長するために最も大事なのは製品力、サービス力で優位に立つ事、つまり差別化です。この改革実行にあたっては6年間赤字潜伏しながら組織を作り込み、遂に昨年度の黒字転換まで繋げることができました。

日本通信株式会社 2022年3月期(第26期) 決算説明会資料 より引用

事業内容について

異なる地点に、a地点からb地点に安全にデータを運ぶことをミッションとしています。これに最も便利な道具が携帯ネットワークです。 売上面で主力事業となっているのはSIM事業でして、音声・データ通信を低価格で提供しています。

MVNO事業者の中でも、キャリアから原価で音声・通信の提供を受けることができている当社には非常に大きな優位性があります。実際に、2020年「日本通信SIM」の提供開始以来、一定の評価をいただいています。総務大臣裁定を機に音声卸料金が約8割下がり、価格競争力が生まれた点、および通話定額プランの導入が可能となった点が、主な理由です。

  • MVNO(Mobile Virtual Network Operator):仮想移動体通信事業者の略。無線局を開設・運用せずに、自社ブランドで携帯電話やPHSなどの移動体通信サービスを行う事業者のこと。

現在までを振り返りますと、転換点は大きくは二つ、どちらも総務大臣裁定のタイミングです。

一つ目は2007年でして、ドコモのネットワークを原価ベースで借りることができるようになりました。これを機に、MVNOのマーケットは飛躍的に成長したと言えると思います。今やMVNO事業者は1400社を超えていますので、「産業を作った」と言っても過言ではありません。

二つ目は2020年、先のデータ通信に加え音声側も原価ベースで調達できるようなった時です。競争力を高めることができたという点で、今日の事業において非常に大きなマイルストーンであったと認識しています。

日本通信株式会社 2022年3月期(第26期) 決算説明会資料 より引用

先行してシェアを取りにいく企業もありますが、事業成長のスピード感には業界の規制緩和が密に関わりますので、我々としてはこのタイミングの見極めを重要視しています。

シェアが獲得できても規制緩和までに長い時間差があると持続的な成長は難しいのです。収益を上げながら成長曲線にいるのはおそらく当社だけかと思います。

一般に、規制緩和があった時はビジネスチャンスになると言われており、それを受動的に受け止めても十分なチャンスになるのですが、我々は規制緩和を起こすポジションにいる企業です。ある意味では事業機会を自分たちで生み出している会社と言えます。

もちろん短期で実現できるものではありませんので、上場企業としては継続的な情報発信を心がけ、株主の皆様にも支えていただきながら現在まで歩みを進めることができています。

また、セキュアに通信を提供しながら、さらにその質を高めていくことを目的にしているのがFPoS事業とローカル4/5G事業です。

日本通信株式会社 2022年3月期(第26期) 決算説明会資料 より引用

FPoS事業ではスマートフォンの中で発行したデジタルIDを活用し、安全性を確保した状態で通信する仕組みを利用します。デジタルの世界では、「間違いなく本人である」という「本人性」と、「本人の意志である」という「真正性」の証明がきちんとできないと、インターネット越しに何かをすることができないんです。

国としてはマイナンバーカードの利用を推進していますが、マイナンバーカードは限定的な用途でしか使えません。しかし、FPoSはマイナンバーカードを使いながら法律上の正当な本人確認手段として認められた唯一のスマホIDであり、低コストで「本人性」と「真正性」の両方を提供できます。群馬県前橋市をはじめとして各地方で展開しはじめているところです。

ローカル4/5G事業では顧客それぞれが自営のローカル携帯網を持つことができます。ローカルといっても、携帯キャリアと同じように基地局やコアネットワークを運用する仕組みが必要です。

もちろんコストが高くなっていいのであれば、キャリアに納入しているメーカーから同じものを購入すればできます。ただ私どもは、顧客にとって採算性のある価格での提供を目指して進めてきました。

特徴としてこれらを日本と米国市場で展開している点が挙げられます。先進的な事例の多い米国で実績を作り、その経験を生かして日本で展開することを目指しています。

中長期の成長イメージとそのための施策

2007年と2020年の総務大臣裁定を経て当社はデータも音声もドコモの原価ベースで調達できるようになりましたが、音声の直接接続だけがまだ叶っていない状況です。

しかし直近で、総務省が一定の条件を満たしたMVNO事業者に携帯電話番号の付与を認めるための法律整備に動いており、ようやくもう一息のところまで来ています。まさに我々が20年間ずっと目指してきたことで、これが叶えばSIM事業にとって大きなマイルストーンになるでしょう。

「ネオキャリア」と表現しているのですが、コストを抑えて当社の独自サービスを様々に展開できるようになることを中長期的なビジョンとして掲げています。

もちろんこれだけでも、規模の大きい、また非常に面白い事業体を確立できますが、これだけでは会社全体のミッションである「安全な通信の提供」は実現できません。そしてこれはFPoSやローカル4/5Gがあって初めて叶うのです。

私ども120人の会社ですので、アウトバンドの営業は現実的ではありません。いかに選んでいただけるようになるかが勝負なのです。事例付きでご紹介して、顧客から、あるいは企業や地方自治体から、「これはいいね」と言って頂いて、選んでいただく。選んでいただくための事例を今作っています。

FPoS事業については、今はまだ、FPoSと似たようなものは世界中を探してもありません。新しいサービスは、一つ事例ができればその納得性や利便性が伝わり浸透していくものです。日本だけでなく世界で注目頂いている取り組みなので、一つ一つ事例を作って広げていくことが大事だと思っています。

3年から5年ぐらいのスパンで見ると、極めて大きな可能性を秘めていると思いますので、事例作りを進めています。

日本通信株式会社 2023年3月期(第27期) 第3四半期決算説明会資料 より引用

また、ローカル4/5G事業についても、選んでいただくための事例をつくっているという意味で、FPoS事業と非常に近いフェーズにあります。

例えば病院で使用されているPHS電話は、現在院内でしか通信できません。この問題はずっと解決が待たれており、ローカル局の使用はそのソリューションの一つなのです。

ここに対し我々は、病院側にとっても投資を継続できる価格帯で提供できるようにと取り組んでいます。今年の1月にはその蓋然性も高まり、最初のプロジェクトとして病院に入れていくところです。システム開発やメンテナンスを担う事業者の方々に、事例を通じて当社を選んでいただき、そこから加速度的に広めていく方針です。

投資家の皆様へメッセージ

まずはSIM事業における我々の唯一性をぜひご理解いただきたいと思います。当社はキャリアから原価ベースで音声とデータ両方を調達できているという独特のポジションにあります。MVNO事業者の多くが売上を落とす中、当社が年率30%ほどの成長を実現していることも一つの成果だと思います。

加えて、デジタル社会への変革が必然となった今、自分が自分であることの証明をすることの価値がどれほど重要か、という点を一度考えてみてください。アメリカの半導体大手Nvidia社が基調講演でCEOに見立てたフェイク画像がそうと気づかれなかったように、AI技術の進展によって本人性の証明が難しくなってきています。そして、この問題の解決に取り組んでいるのがFPoS事業です。

通信もFPoSも安全にデジタル社会を生きていくために必要な道具であるということをぜひご理解いただくとともに、ここに挑む当社を応援していただけますと幸いです。

日本通信株式会社

本社所在地:東京都港区虎ノ門4-1-28 虎ノ門タワーズオフィス

設立:1996年5月24日

資本金:529,260,000円(2023年1月31日現在)

上場市場:東証プライム(2005年4月21日上場)

証券コード:9424

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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