コラム:求む、ソフトバンク分割に立ち上がるアクティビスト

コラム:求む、ソフトバンク分割に立ち上がるアクティビスト
12月10日、孫正義氏率いるソフトバンクグループの株価は、各事業の価値の合計よりも大幅に低く評価されている。写真は2018年5月、東京で行われたカンファレンスで発言する孫氏(2019年 ロイター/Toru Hanai)
Liam Proud
[ロンドン 10日 ロイター] - 孫正義氏率いるソフトバンクグループ<9984.T>の株価は、各事業の価値の合計よりも大幅に低く評価されている。資金力と気骨のあるアクティビスト(物言う投資家)にとっては、一世一代の勝負を賭けるべき標的かもしれない。
米サード・ポイントのダニエル・ローブ氏やエリオット・マネジメントのポール・シンガー氏のような豪腕投資家にとって、株式時価総額820億ドルのソフトバンクグループは、攻撃対象としての条件を全て満たしている。
まず、企業統治がお粗末だ。孫氏は最高経営責任者(CEO)と会長を兼務し「フォースを感じる」自身の能力などを頼みに、共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーのような金食い企業に投資している。株価も不振で、過去半年間の配当を含めたリターンはマイナス15%だ。
この結果、ソフトバンクグループ株は理論上の資産価値を大きく下回る水準で推移している。同社は中国の電子商取引大手、アリババ・グループの株式1360億ドルを所有。傘下の半導体設計大手、アーム・ホールディングスの企業価値は、孫氏が2016年に買収する前の株価に基づくとおそらく220億ドルだ。上場している通信事業会社、ソフトバンク<9434.T>および同業の米スプリントの株式時価総額は、それぞれ190億ドルと430億ドル。
巨額ファンド「ビジョン・ファンド」が投資する株式を含め、主に未公開株式を360億ドルも保有している。これらを合算して債務を差し引くと、ソフトバンクグループの企業価値は2150億ドルとなり、現在の株式時価総額を161%も上回る。
アクティビスト主導で組織を分割すれば、この差を縮めるのに役立つだろう。あるいはアーム、スプリント、アリババの株式を株主に譲渡するところから始めてもよいかもしれない。
ただ、後者には厄介な問題がつきまとうことが明白だ。米ヤフーの事例で明らかになった通り、アリババ株を売ると巨額の税金を掛けられるため、株式価値に見合った利益を得るのは難しい。それでも売却益はコストを上回るだろう。
グループのウェブサイトによると、孫氏はソフトバンクグループ株式の22%を保有しており、これが改革を強行する際の大きな障害となる。同社の重要な決定には株主の3分の2以上の賛成が必要だ。例えば株主の4分の3が投票に参加した場合、孫氏は3%の株主の支持を集めるだけで動議を否決できる。この壁を越えるには、アクティビストが多数の株式を取得するか、幅広い株主の支援を得る必要が出てくる。
しかし、立ち上がったアクティビストは賛同者に事欠かないだろう。米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、キャピタル・グループやタイガー・グローバル・マネジメントといった投資会社は、ビジョン・ファンドの損失と統治を内々に批判している。
2020年、1人のアクティビストがそうした不満を味方に付け、ボロ儲けを企てるかもしれない。
●背景となるニュース
*11月26日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、キャピタル・グループやタイガー・グローバル・マネジメント、サウスイースタン・アセット・マネジメントといったソフトバンクグループの主要株主は、ビジョン・ファンドの損失と統治を内々に批判している。[nL4N2864VI]
*同紙によると リフィニティブの調べで株式保有率2%のキャピタル・グループは幹部らに対し、ビジョン・ファンド第2弾の資金調達を助けるための融資計画に孫氏が加わるべきではないと述べた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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