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肝細胞がんに10年ぶりの新薬―エーザイ「レンビマ」の売り上げ拡大加速へ

更新日

今年3月、エーザイの抗がん剤「レンビマ」が日本で肝細胞がんへの適応拡大の承認を取得しました。肝細胞がんの1次治療薬としては10年ぶりの新薬。米メルクとの提携で免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」との併用療法の開発も進んでおり、売り上げ拡大が加速しそうです。

 

1次治療でのシェアはすでに8割

「この10年間、肝細胞がんアンメットニーズを解決しようと5つの薬剤が臨床試験を行ったがすべて失敗した。レンビマが臨床試験に成功したのは画期的な成果で、肝細胞がんの1次治療で主流となる可能性がある」

 

9月18日、エーザイが都内で開いたメディア・投資家向けの説明会で、近畿大医学部消化器内科の工藤正俊主任教授は、抗がん剤「レンビマ」(一般名・レンバチニブ)の肝細胞がんへの適応拡大に対する期待を語りました。

 

レンビマはエーザイが創製したチロシンキナーゼ阻害薬。腫瘍の血管新生や増殖に関わるVEGFRやFGFR、RET、KIT、PDGFRなどに対する阻害活性を持ちます。日本では2015年5月に「根治切除不能な甲状腺がん」の適応で発売。今年3月には「切除不能な肝細胞がん」への適応拡大が承認されました。肝細胞がんに対する1次治療薬としては、バイエル薬品の「ネクサバール」(ソラフェニブ、09年5月承認)以来約10年ぶりの新薬となります。

 

肝細胞がんを対象とした臨床第3相(P3)試験では、主要評価項目の全生存期間でネクサバールに対する非劣性を証明(レンビマ群13.6カ月 vs ネクサバール群12.3カ月)。副次評価項目の無増悪生存期間と無増悪期間、奏効率ではネクサバールを有意に上回りました。

 

厚生労働省の統計によると、肝がん・肝内胆管がんの国内患者数は4万7000人(14年度患者調査)、年間死亡者数は2万7114人(17年人口動態統計)。肝細胞がんは肝がん全体の約9割とされています。切除不能な肝細胞がんは治療選択肢が限られており、予後は良くありません。

 

エーザイによると、レンビマは肝細胞がんへの適応拡大の承認から5カ月ですでに4000人の患者に処方されており、1次治療でのシェアは8割に達したといいます。19年3月期の国内売上高は70億円を予想。30億円だった前期から倍増させる計画です。

 

キイトルーダとの併用療法開発に注力

レンビマはエーザイが将来を託す製品の1つ。抗がん剤「ハラヴェン」、抗てんかん薬「フィコンパ」、抗肥満薬「BELVIQ」とともに成長を牽引する「グローバル4製品」に位置付けており、エーザイは大型化を狙っています。

 

レンビマは、15年2月の米国を皮切りに、甲状腺がんの適応で世界50カ国以上で承認を取得。腎細胞がん(エベロリムスとの併用)でも40カ国以上で承認されています。3つ目の適応となる肝細胞がんでは、世界に先駆けて日本で承認されたあと、米国や欧州、中国、韓国でも相次いで承認を取得しました。

 

今年3月には米メルクとの間で、レンビマの共同開発・共同販促を通じてマイルストンなど最大6110億円を受け取る大型提携に合意。今年6月には米国で共同販促を始めたほか、提携の目玉である免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)との併用療法では、6がん種11適応の承認取得を目指して開発を進めています。

 

レンビマとキイトルーダの併用療法は、子宮内膜がんと腎細胞がんの2適応で米FDA(食品医薬品局)からブレークスルーセラピー(画期的治療薬)の指定を受けました。小野薬品工業とも提携しており、日本で肝細胞がんを対象に「オプジーボ」(ニボルマブ)との併用療法を開発しています。

 

レンビマの開発状況。【開発段階:P3】適応:甲状腺がん(中国)。適応:子宮内膜がん<2ndライン・ペムブロリズマブとの併用>(日・米・欧)ブレークスルーセラピーに指定。適応:腎細胞がん<1stライン・エベロリムスまたはペムブロリズマブとの併用>(日・米・欧)ブレークスルーセラピーに指定。【開発段階:P2】適応:非小細胞肺がん<RET転座>(日・米・欧・アジア)。適応:胆道がん(日)。【開発段階:P1/2】適応:固形がん<ペムブロリズマブとの併用>(米)。【開発段階:P1】適応:固形がん<ペムブロリズマブとの併用>(日)。適応:肝細胞がん<ペムブロリズマブとの併用>(日・米)。適応:肝細胞がん<ニボルマブとの併用>(日)。

 

18年3月期のグローバル売上高は前期比45.6%増の322億円。19年3月期は81.7%増となる585億円を計画しています。肝細胞がんへの適応拡大がドライバーとなるほか、メルクとの共同販促で市場の開拓が進み、売り上げは大きく拡大する見通しです。

 

レンビマの売上高推移。2014年度:4億円。2015年度:115億円。2016年度:215億円。2017年度:322億円。2018年度:585億円。

 

業績低迷に終止符か

エーザイはレンビマについて、ピーク時(2020年代半ば)の世界売上高を最大5000億円超とはじきます。メルクとの提携を通じた販路と適応症の拡大により、エーザイ単独で展開する場合と比べて売上高は3倍に増えるといい、そこから得られる利益もピーク時に2000億円を超えるとみています。

 

エーザイの18年3月期の業績は、売上高6001億円(前期比11.3%増)、営業利益772億円(30.7%増)。メルクから受け取った提携一時金320億円が業績を大きく押し上げました。エーザイが2ケタの増収増益となるのは、07年3月期以来11期ぶりです。

 

中期経営計画で21年3月期に売上高8000億円を目指すエーザイ。達成すれば、アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」の世界売上高がピークを迎えた10年3月期の水準を取り戻すことになります。アリセプトの特許切れ以降、長く続いた業績の低迷に終止符を打てるのか。レンビマの成否はそれを大きく左右します。

 

 

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