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上場会見:ランドネット<2991>の榮社長、データベースで売主を見つける

21日、ランドネットが東証ジャスダック・スタンダードに上場した。初値は公開価格(3830円)を38%ほど上回る5320円を付け、4600円で引けた。同社は区分所有マンションに関するデータベースを保有し、ワンルームタイプとファミリータイプの中古マンションを所有者から直接買い取り、不動産業者や投資家に販売する。不動産賃貸管理も行う。榮章博社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

創業時に榮社長自身が開発したデータベースの網羅的な情報は、営業社員の早期育成にも有効であるという
創業時に榮社長自身が開発したデータベースの網羅的な情報は、営業社員の早期育成にも有効であるという

―初値が公開価格を上回る水準で推移したがどう思うか
5320円が付いて非常に喜んでいる。だがもっと高くても良いと思う。まだまだランドネットの良さを表現しきれておらず、逆に言うとこの悔しさを毎年の決算で晴らしたい。業績を上げていきたい。

―この時期に上場する狙いや目的は何か
より大きくなりたいと思っている。そのためにシステムの担当要因をより多く雇用したい。採用にかなり苦戦するなか、上場というキーワードで少しずつ増えてきている。もう1つは知名度を上げることによって、顧客の信頼を得る。今は国内に3拠点しかないにも関わらず石垣島や札幌の物件までも扱っているので、顧客の信頼をより広く得ることでその辺りの動きを容易にする。また、知名度を上げることで営業社員の雇用を増やしたい。

―中古住宅流通市場で、各仲介会社は、買いの需要は豊富だが売り物件が出てこず仕入れに苦戦しているという話を聞く。豊富なデータベースを活用して仕入れに強いそうだが、足元の仕入れ状況や今後をどう見るか
マンションの情報を全部集めて見やすくしている。当社は売りたい顧客を説得するわけではなく見つける、発見する、出会いだと思っている。北は札幌から南は石垣島までの全てのマンションの情報を持っており、アプローチを続け、その過程で売りたい顧客を探すので、仕入れに困るという感覚はない。

例えば、リーマンショックや東日本大震災が起きた頃は景気が悪い時代だった思うが、そのような意識は全くない。独自のデータベースを最初から作ることで、仕入れに強い。競合したとしても利幅を削って買える限界が分かるので、それほど簡単には競合に負けない。仕入れに苦労するのは、不動産会社を通して物件を買おうとするからだと思う。

当社は売主に直接アプローチすることで中間マージンを省けるので、売主からは若干高く買い、当社にもしっかり利益が出る。20年間やってきて仕入れに苦労した記憶はあまりない。

―コロナ禍やオリンピックで世の中がかなり変わったが、中古マンションの投資市場はどう変わるか
当社が受けている影響は賃貸で、コロナ禍によって都心に住んでいた人が郊外に引っ越していると感じているが、郊外のマンションを買っているという状況ではないと思う。飲食店や旅行業界関連が苦しいなかで不動産を売却したいという話は聞こえてきている。だが、不動産市況としては、中古マンションに関しては前年対比で伸びており、売り上げが良い。売る人も買う人もいる。

コロナ禍は追い風になっていて、向かい風とは感じていない。リモートワークに非常にスムーズに移行でき、何かあった場合にはリモートワークに移れる体制を整えている。

―オリンピック後に不動産市場が一気に崩れるような予想があったが、どのような見立てか
例えば、宿舎が売りに出てくると思うが、当社は投資用不動産を手掛けているため、そこで1番動くのは「駅そば(傍)」の物件だ。築年数が新しくても古くても、かつ部屋が広くても狭くても、駅のそばにあることを重視しているため、オリンピック村は当社とは違う競争の商品と思っている。50平方メートルより小さく築古でも問題ないというものであれば、あまり影響を受けない。
仲内好広取締役:オリンピックに関して補足すると、東京での開催が決まってから一時期、海外マネーがかなり入ってきた。当社でも1ヵ月当たりの取扱件数に占める海外の顧客が20%を超える時もあったが、足元は毎月5%で推移している。海外に過度に依存したビジネスモデルではないので、オリンピックの後、仮に海外マネーが急速に引き揚げたとしても、当社の行っている事業への影響はないと考えている。

―より長期的に見て中古不動産市場はどう推移するか、事業の拡大と合わせて聞きたい
榮社長:景気が良い時も悪い時も不動産は動くと思っていて、その動くところに入りたい。動く商品に関して、当社は現在全国の区分所有マンションをターゲットにしており、それを戸建やアパートに広げていくのであれば、市場は十分にあるのではないか。

スキーリゾートの築古のマンションはなかなか売りづらいので、そこはあまり取り組まないが、そういったものは数が多くない。やはり動くところに当社の出番がある。全国的な視野で動き、買い取り販売を行うため、売主にとってはスムーズに現金化できる。買主にとっても当社が入ることで、瑕疵や設備、家賃滞納の問題をサービスでフォローする。安心して売買してもらえる。

―リフォーム・リノベーション事業を進めていくと棚卸資産回転率が落ちるという見方があるが、ITプラットフォームを整備すると効率的な事業運営ができると思う。両方が実現した場合に棚卸資産回転率はどうなっていくのか
リフォーム・リノベーションの事業を増やす。リフォームするには2~3ヵ月の期間がかかるため、6ヵ月ぐらい延びると思う。それはそれとして事業として成り立つので、拡大したい。それ以外に投資用不動産の領域はまだ拡大するだろうし、アパートの扱いも増やしていきたい。棚卸資産回転率は現状のものと、より大きくなるものが併存する。

リフォーム・リノベーション事業に関して、プラットフォームによる棚卸資産回転率への効果はあまりないと考えている。プラットフォームでやろうとしていることは、顧客に対するサービス強化で、顧客とやり取りするマイページという画面を作る。例えば投資用不動産であれば、そこで収支明細や売買契約書のやり取りや、電子契約などを強化しながら、サービスをより厚くしたい。

―今後IoT関連で家に関する情報が増えてくると思うが、データベースに取り入れたら面白そうな情報はあるか
賃貸事業部でIoT照明を付けており、空室率の改善になるかと思ったが、そこではないと考えている。当社としてはIoTよりも、デジタルのクラウドの保管庫のなかで顧客とやり取りすることを優先させたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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