日本でも深刻化するPFAS問題:バイデン政権は規制を強化、アメリカでは企業に対する訴訟が相次ぐ【スリーエム(MMM)】PFAS除去製品を開発する室町ケミカル(4885)にとってはチャンスに

PFASとその影響

PFAS(有機フッ素化合物)は人工的に作られた4700種類以上の化学物質で、「フォーエバーケミカル(永遠に残る化学物質)」とも呼ばれます。
水や油をはじき、熱に強く化学的に安定であるため、産業界で広く使われてきました。
しかし、自然環境には分解されにくく、人体に長く蓄積されやすい性質から、その有害性が問題視されています。

スリーエムが1兆8000億円の和解金支払い・PFAS製品から撤退

化合物「PFAS(ピーファス)」の有害性が注目され、米国では企業に対する訴訟が相次いでいます。
工業製品大手スリーエム(3M)は最大125億ドル(約1兆8000億円)の和解金支払いで地方政府などと暫定合意しました。
2025年までにPFASを使用した製品の製造から撤退する事も表明しました。

デュポンなど化学3社も12億ドル近い和解金支払いで合意しており、PFAS問題の解決への一歩となっています。

国際的な規制強化

このPFAS問題に対し、バイデン政権は規制強化を進めています。
欧州連合(EU)も製造や輸入の規制検討に入り、世界的な規制強化が進行中です。
米環境保護局(EPA)はPFAS量の調査や飲料水の安全基準引き上げなど、3年かけて規制を強めるロードマップを公表しました。

検査の精度向上と安全基準の引き上げにより、今後は個人が健康被害を訴える例や、PFASを使用する川下製品を作る企業の責任を問う訴訟などが増える可能性があります。
米マクドナルドなどもPFAS不使用品に切り替える方針を発表しています。

汚染状況と除去コスト

非営利の米環境保護団体によれば、22年6月の時点で米国50州3000カ所近くの飲料水でPFASが安全基準を超えていました。
除去は難しく、高コストが掛かるとされ、ミネソタ州はPFAS除去・処理する費用がPFAS1ポンド(約454グラム)あたり270万〜1800万ドルかかると試算しています。

日本でのPFAS問題

PFASの健康リスクについて、米国全米アカデミーズは「免疫の抗体反応の低下、血中のコレステロールが多くなる脂質異常症、乳児や胎児の発育への影響、腎臓がんのリスク上昇」を科学的に立証しています。
その一方で、日本ではPFASの血中濃度の指針が存在せず、具体的な摂取量と影響の関係は未確定の部分が多いのが現状です。

しかしながら、東京都多摩地域で行われた住民の血液調査では、全米アカデミーズが示す健康リスクが高まるとした基準を超える血中濃度が、参加した住民の半数以上で確認されました。
また、日本国内でのPFASの高濃度検出が報告されており、全国的な調査の必要性が訴えられています。

日本政府や日本企業の対応

日本では、PFOSとPFOAの製造や輸入を原則禁止し、PFHxSの規制も予定しています。
さらに、環境省は2023年1月にPFASの総合戦略を検討する専門家会議を立ち上げ、総合的な対応の検討や分かりやすい情報発信を目指しています。
水質の具体的な目標値を話し合う専門家会議も設けられています。

PFAS問題は日本でも深刻化の兆候を見せており、その影響範囲は今後さらに広がる可能性があります。
これからの国や企業の対応が、PFAS問題の解決に向けた重要な一歩となります。

室町ケミカル(4885)、PFAS除去製品の開発進行中、新たな市場を開拓へ

室町ケミカル(4885)は、日本全国で増大するPFAS問題を解決する新たなビジネスチャンスを捉えています。
同社は、イオン交換樹脂技術を活用したPFAS除去製品の開発を進め、営業部隊も始動しています。
この製品開発は、国際的にPFAS問題が深刻となり、日本でも高濃度のPFASが検出され、健康リスクが増大している現状を鑑みると、重要な対策となるでしょう。

室町ケミカルは福岡県を地盤に事業を展開し、医薬品、健康食品、化学品の3つが主要な事業となっています。
特に、化学品事業ではイオン交換樹脂の販売・加工が主力であり、これがPFAS除去製品の開発に繋がっています。

PFAS問題は、公衆衛生を脅かすだけでなく、飲料水供給や産業利用水の安全性にも影響を及ぼす可能性があるため、同社の取り組みは大きな影響を及ぼす可能性があります。
室町ケミカルのPFAS除去製品が成功すれば、新たな市場の開拓と事業拡大につながるでしょう。

一方、医薬品事業では高水準の輸入原薬が引き続き売上を支え、健康食品事業では新規案件の立ち上げで既存製品の低迷を補う方向性を見せています。
また、開発費が重くなる一方で、好採算の自社製品の比率が増加しているため、持続的な収益性の改善が見込めます。

室町ケミカルは、社会的課題の解決と事業の成長を両立させる取り組みを進めており、今後の動向に注目が集まります。

毒の水:PFAS汚染に立ち向かったある弁護士の20年
毒の水:PFAS汚染に立ち向かったある弁護士の20年

コメント

nikkeimatomeをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました