デンカ(4061)

 

株価 2613円(2020/5/20)

 

◎テクニカル分析

同社の株価もコロナショックの影響を受け、3月中旬に大幅に下落した。しかし、その後4月の初旬に急騰した。富士フィルムホールディングス(4901)が、同社の製品でかつ新型コロナウイルスの治療薬の有力候補であるアビガンの増産を行うことを発表したことがその背景にある。デンカがアビガンの原料であるマロン酸ジエチルを供給する(5月の中旬から)。その後、株価は下落したが、25日移動平均線を下回ることなく、少しずつだが右肩上がりになっている。今週か来週が買い時である。ただし、アビガンは実際に効果があると決まったわけではなさそうなので注意が必要である。加えて、あくまでも治療薬であるため、例え効果があったとしてもこれによってパンデミックを収束させることはできないということに留意しておく必要がある。

 

◎業績

2020年5月13日に公表された2020年3月期決算短信によれば、前年同期比で、売上、営業利益、経常利益は各々7.8%減、7.7%減、8.5%減となった。主な原因は、一部の製品の原材料価格の下落を受けた販売価格の見直し、米中貿易摩擦やコロナショックによる販売数量の減少およびヘルスケア分野における先行投資の増加。

 

同社の強みは化学で、それに関する材料を様々な分野に提供している。

以下に、セグメントごとに解説する。

 

 

1. エラストマー・機能樹脂部門

同社のセグメントの中で最も売上高が高い。自動車や家電、建材などの化学材料を提供している。前年同期比で、売上は16.7%減となった。主な要因は、クロロプレンゴムの需要減退と、原材料価格の下落によるポスチレン樹脂とABS樹脂の販売価格の見直し。

 

2. インフラ・ソーシャルソリューション部門

インフラ整備のためのセメントや特殊混和材、コルゲート管などを提供している。前年同期比で、売上は0.1%減となった。セメントや肥料、耐火物・鉄鋼用材料の販売が、前年を下回ったことが主な要因。

 

3. 電子・先端プロダクツ部門

半導体や電子部品の搬送に必須なキャリアテープや特殊接着剤などを提供している。前年同期比で、売上は1.4%増となった。全体的に販売数が上昇したことが主な要因。

 

4. 生活・環境プロダクツ部門

食品包装用シート、かつら製造に用いられる合成繊維、プラスチック製の雨どいなどの建築材料などを提供している。前年同期比で、売上は5.3%減となった。かつら製造に用いられる合成繊維の販売数量が前年を下回ったことが主な要因。

 

5. ライフイノベーション部門

インフルエンザワクチンや様々な検査試薬、薬の材料などを提供している。前年同期比で、売上は4.1%増となった。輸出を含めた販売数量(特にインフルエンザワクチン)の販売数量が前年よりも増加したことが原因。

 

6. その他の部門

前年同期比で、売上は6.8%減となった。子会社の売り上げが前年を下回ったことが主な要因。

 

今後の展開

同社の直近の5年間の業績を見てみると、売上高と利益は緩やかだが右肩上がりになっている。しかし、コロナショックにより実体経済の構造は変わってしまったため、それに適応する必要がある。

 

今後、同社が成長していくには、ライフイノベーション部門が鍵となってくる可能性が高い。実際に、コロナショックを受けてヘルスケアの需要は世界で高まっている。また、このパンデミックにより人々の意識は変わり、自分の健康に気を使う人が増加したと考えられる。このことから新型コロナウイルスだけでなくヘルスケア全般のマーケットが伸びてくると予測される。