オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
OBP-601の新規機序の潜在力

2020/07/08

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

トランスポゾンの機能と疾患の関係
ヒトのゲノムの約半分は、動く遺伝子と呼ばれるトランスポゾンで構成されている。そして、その大部分は、自己の転写産物であるRNAを逆転写酵素によりDNAへ書き換えた後に、ゲノムの他の箇所へ挿入するレトロトランスポゾンである(ヒトのゲノムの約40%)。いままで、トランスポゾンは機能を持たない“ジャンク遺伝子”と考えられていたが、近年の研究で、様々な疾患に関連していることが明らかになってきた。この機能と疾患の関係は、まだ完全に解明されたとは言い難いが、ゲノムのなかのレトロトランスポゾン(LINE-1)の蓄積が 、ゲノムの不安定化あるいはSASPの放出(炎症亢進)につながり、様々な神経疾患を惹起している可能性がある。

OBP-601は神経疾患を広範囲カバーする可能性
OBP-601は、脳内移行性を保有しており、脳内で、レトロトランスポゾン(LINE-1)の逆転写を阻害し、 LINE-1の蓄積を抑止する作用がある。そのため、SASP抑制とゲノムの不安定化の抑止の両方の効果を持ち、ALSを始めとした広範囲の神経疾患の進行を抑制する効果があると推察される。既に、HIV薬としての開発で、長期投与の安全性は確認されているため、Phase2からの試験で開発が推進できる。2020年6月、一時は権利返還も考えていたOBP-601を米国の新興バイオベンチャーであるトランスポゾン社へ導出 成功したことは(マイルストーン総額は3億ドル+販売ロイヤリティ)、ポジティブ・サプライズであった。

テロメライシン®の開発は順調
オンコリスバイオファーマ社にとって主力候補品であるテロメライシン®の開発は概ね順調に進行中である 。中国のハンルイ社と契約解消に至ったが、開発遅延が継続していたため、株式市場では成功した場合の収益を織り込んでいないとみられ、今回の契約解消はネガティブ・サプライズではない。むしろ、食道がんを対象に日本国内で先駆け指定、米国でオーファンドラッグ指定を受けているテロメライシン®に関して、全世界の食道がん患者の過半を占める中国・香港・マカオを対象としたライセンスアウトが期待できる。また、2020年6月に鹿児島大学発の化合物を用いて新型コロナ感染症治療薬の開発も発表された。継続して創薬の種が創出されることに敬意を表したい。

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