顔パス引き出しも検討 セブン銀、ATMに顔認証
セブン銀行とNECは12日、9月下旬から順次導入する次世代ATMを公表した。最大の特徴は顔認証機能だ。ATMで口座開設などに必要な本人確認ができるほか、技術的には手ぶらでお金を引き出せるサービスを提供することも可能になる。キャッシュレス化の進展でATM利用が減るなか、入出金だけでない新たな機能を加えて収益を確保する狙いがある。
「金融だけでなく、生活のあらゆる場面で使えるATMをめざす」。セブン銀行の舟竹泰昭社長は12日の記者会見でこう強調した。2020年夏までにまず都内のATMを刷新し、24年までには国内全てのATM約2万5000台を置き換える計画だ。投資額は数百億円という。
新型機には顔認証カメラのほか、免許証など本人確認書類やQRコードを読み取る装置も搭載した。免許証とカメラの画像を照合することで本人確認が可能になり、その場で口座を開設できる。10月から数カ月の実証実験を経て、実際にサービスを展開する計画だ。
このほか、カードを使わずに出金したり、高解像度カメラで利用者の血流を測定して健康状態を測ったりするサービスも可能で、今後導入を検討する。近距離無線通信「ブルートゥース」を使って、ATMの利用客のスマホにクーポンを発行することもできる。
認証や情報発信など多様な機能を盛り込んだ背景にあるのは、キャッシュレス化など金融サービスを取り巻く環境変化だ。セブン銀の4~6月のATM利用件数は1日あたり89.6回と前年同期比5%減った。入出金の手数料だけでは収益をまかなえず、新たな収益機会が必要になっていた。
メガバンクはATMの削減に動いている。三菱UFJ銀行と三井住友銀行は9月から店舗外のATMを相互開放し、近接拠点の削減に乗り出す。一方で、ATMを収益源とするセブン銀は台数を増やし続けていた。次世代機の投入により、ATMを巡る銀行間の戦略の違いはより明確になる。