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上場会見:キットアライブ<5039>の嘉屋社長、Salesforce導入需要に応える

28日、キットアライブが札証アンビシャスに上場した。公開価格である1410円を18.16%上回る1666円の初値を付け、1266円で引けた。北海道のウイン・コンサル内でSalesforce,Inc.のクラウドサービス「Salesforce」を扱うクラウド事業部に始まり、セールスフォース・ドットコム事業部として拡大。成長に伴いテラスカイの出資を受けて2016年8月に設立。ウイン・コンサルから10月に事業を譲り受けた。上場や事業の今後について嘉屋雄大社長に、30日に話を聞いた。

札証で上場通知書授与式に臨んだ嘉屋社長は、北海道を面で支えて他社とともに元気にするという意志を新たにしたという
札証で上場通知書授与式に臨んだ嘉屋社長は、北海道を面で支えて他社とともに元気にするという意志を新たにしたという

―上場当日は初値についてよく問われたと思うが、3日が経過して、現在はどのような気持ちか
初値は公開価格よりも200円少し高い価格が付いて、株主の期待値の高さを感じた。ただ、その後公開価格を下回ってしまっている。公開価格で購入した株主に迷惑をかけないよう尽力していくよう気持ちを新たにした。

―案件の受注は、インバウンドかアウトバウンドか
紹介を受けることがほとんどだ。商談(成立)の確度がある程度高い段階で紹介されるケースが多い。

―今後、方針の変化はあり得るのか
まずは、紹介に対して十分に応えていくことが重要だと思っている。断らざるを得ないケースが増えており、十分に応えていきたい。そのうえで、北海道が中心になるとは思うが、地域に焦点を当てて営業・マーケティング活動をする方向がある。まずはセールスフォース・ジャパンも含めてパートナー企業とともに戦略を立てて紹介案件に取り組む。

―北海道にこだわる理由は
北海道は元々「サッポロバレー」と呼ばれ、IT企業がたくさんある土壌で、エンジニアも多く在住している。情報通信としてのビジネスがある程度出来上がっている土地だ。ITのビジネスを非常にやりやすい。東京と比べると規模は小さいが、東京の人材獲得競争が激しいなかにいるのではなく、北海道で獲得競争が厳しくない状態で優秀な人材を獲得できる機会が多いことが北海道にこだわる理由の1つだ。

ワークライフバランスの話になるが、例えば、自然が近くにあり、満員電車も東京と比較してそれほどでもなく、通勤時間も短い。仕事とプライベートの環境を切り分けながら豊かな人生を送れるのが北海道だと思う。一軒家を建てられることもその1つだ。それらを含めて仕事をしやすい場所として北海道を選んだ。

―従業員に支給する養育手当てと同額を、子供の健全育成を目的に地方自治体に寄付する取り組みを見てSDGs銘柄の側面もあるとの見方があるが、独自性の高い取り組みなのか
ほかの会社で同様の取り組みをする例を聞いたことはなく、どこかの会社から話を聞いたり、制度を見て始めたのではなく、自分たちで考えた。我々としては、特に北海道の地域で同じ取り組みをほかの会社にも真似てもらえたら嬉しい。そうしていくと額も増えていくので、もともとやりたいと考えていた「地域が面として支えられる」ことを実現できる。

―創業当初から考えていたのか
KidsAliveという制度で、その言葉自体は創業すぐの頃からあった。コンセプトとして、子供に対して何らかのことをやっていきたいと考えていた。それをなかなか具現化できずにいたが、SDGsを経営の根幹に据えることもあり、それらをミックスして、社会にも社員にもより良いことをできないかと考えて、規定を昨年に整備し、形になったのが今年のことだった。

―寄付先は札幌市なのか
現時点で3回寄付しており、寄付先は増やしていくことを検討している。
内田みさと取締役:札幌市の寄付の制度で、寄付をすることで札幌市から市内で活動している子供の育成支援の団体に支援が届くスキームがある。我々は子供の教育支援に使途を指定している。

―長期的な視野に立った制度なのか
嘉屋社長:SDGsに取り組むうえで一過性にしたくないという思いがある。会社が大きくなれば寄付額が増えていく制度を続けたい。

―1人当たりの年間残業時間60時間までを自習に充てる「もっとアライブ」という制度はあまり聞いたことがないが、キットアライブならではの制度か
オリジナルで、資格を取ったら資格手当を一時金として出すというものはよくあるが、我々はそうではなく、勉強する内容は仕事に関係すれば何でもいい。勉強すること自体に残業という形で給与を支払うというものだ。今であれば、4月に入社した新卒の社員がWebで集まって、資格を取るために1~2時間ほど勉強会を開いている。

―どのような発想が根底にあるのか
業界は日々進歩していくので、ITのエンジニアは自己研鑽が絶対に必要で、勉強しなければならない。新卒や30~40代といった年次などで、それぞれ勉強したいことが違う。会社が画一的なメニューを提供すれば良いものでもない。各自がそのステージによって自発的に学んでいくべきだ。ただ、勉強してもらったことに関しては、会社にもメリットがあるので、給料を払いたい。結果的にベクトルが合う形で会社も個人も両方成長していく。

―いつ頃から始めたのか
内田取締役:制度として運用していたのは2018年頃で、上場審査の過程で規定化したのがもう少し後だった。

―今期の業績予想を発表したが、増収増益のなか、経常利益が前年比で減少しているが、上場費用の支出など一時的な要因によるものか
嘉屋社長:上場関連費用と、上場で資本金が増えて1億円を超えたことから税金が増えている点を加味した。
内田取締役:上場関連費用がかなり大きかった。来期以降のスポット的な支出は未確定だが、今期に関しては一時的な要因となる。

―KPIの見通しについて可能な範囲で聞きたい
可能な範囲は、現状では今期予想までとなっている。
嘉屋社長:Salesforceへの需要は伸び続けており、事業環境が良好な状態であるため、ビジネスは順調に進捗している。社内体制を強化して対応していくことに尽きる。

―成長戦略について
Salesforceが世界的に年率20~25%で伸び続けるなかで、日本でも市場が拡大しているため、我々は北海道から商圏を広げる。道内の顧客はもちろん全国の顧客に対してセールスフォースを導入するビジネスは、ホワイトスペースが大きい。体制を強化しながら着実に進めていく。加えて、Salesforce,Inc.が会社を買収し続け(事業を拡げ)ているため、我々も追い付いて、ビジネスの幅を広げていく。

―テラスカイグループとの今後の関係について
グループから抜けるわけではないので、ともに取り組む方針は変わらない。そのなかで、各社それぞれに強みがある。我々はSalesforceだが、例えば、最近では、通常のWebのシステムとSalesforceをつなげていきたいといった話が出た時に、グループ会社にお願いして一緒に進めていく。顧客のニーズに応じて各社と一緒に案件に対応できる。

―株主還元の方向性は
配当に関しては、人材採用に主に資金を投入したいのでしばらくはない。しかるべき時がきたら株主に還元したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]