東急の新ビル「見えない難問」は解決できる? 渋谷ストリーム、「川沿いがにおう」の声も

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何らかの対策は考えられるのだろうか。東京都建設局河川部の担当者は、今回の環境整備で設けられた「壁泉」が改善の役割を果たすのではないかと指摘する。

渋谷川では、上流の下水道化によって失われた水の流れを取り戻すため、1995年から現在の渋谷ストリームの位置よりやや下流の並木橋付近で再生水を放流する「清流復活事業」が行われてきた。この放流口をより上流に移設したのが壁泉だ。

渋谷駅や代官山方面ともつながる渋谷ストリーム。よみがえった渋谷川は新たな人気スポットになるか(写真:東京急行電鉄)

これによって、従来は水がほとんどなかった並木橋より上流の区間にも川の流れがよみがえることになった。「今まで流れていなかった水が流れることによって、今後においは軽減されていくのではないか」と前出の担当者は話す。壁泉の本格的な放流が始まったのは、渋谷ストリーム開業と同じ9月13日。水の流れが戻ることによってにおいが消えていくかどうか、注目される。

進むか、川の「におい対策」

清流復活事業で流れが戻った川の「におい対策」は、都内の桜の名所としても親しまれる目黒川の例がある。渋谷川と同様、下水道の増水時には水が流れ込むこの川では、気温の上がる夏などに「においが気になる」といった声が区に寄せられるという。

においの原因について、目黒区は「汚水が目黒川に放流され、川底に堆積したヘドロの有機物が腐敗することにより発生するのが大きな原因ではないか」(土木工事課)と考えているという。そこで、川の水質改善に向け、川底をならして水量が少なくても川が流れやすくなり、ヘドロをたまりにくくする「河床整正」やヘドロの除去などを実施している。

こうした水質改善の取り組みによって、においや川の水が白濁するといった現象については「以前よりはだいぶよくなっているのではないかと思う」(同課)。ただ、抜本的な改善には至っていないため、同区は流域の周辺区とも連携し、下水道の増水時も水が川に流れ込まないよう施設の改善などを引き続き都に求めているという。

新たな渋谷の顔として、今後人気スポットになるであろう渋谷川の周辺。ごみごみとしたイメージが強かった渋谷の街にあって、さわやかな風が吹き抜け、水と緑の感じられる広場や川沿いの遊歩道は貴重な憩いの場だ。官民連携によって整備された「都会のオアシス」を誰もが快適に楽しめるよう「におい」についても改善や対策が進むことが期待される。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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