国内のAT1債、クレディS無価値化の影響は限定的か
三浦和美-
日本のAT1債の本質的な価値が変わるわけではない-マニュライフ
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三井住友FGとMUFGが4月にそれぞれAT1債を起債予定
UBSグループによる買収が合意されたクレディ・スイス・グループの「その他Tier1債」(AT1債)が無価値となったが、国内金融機関の円建てAT1債への影響は限定的との見方が出ている。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔クレジット調査部長は、AT1債の仕組みはグローバルである程度統一したプラットホームがある半面、金融行政の運用は日米欧で全く異なると説明。クレディSの事例を受けて日本のAT1債の本質的な価値が変わるわけではないとした上で、「債券価格についてはスペキュレーションで連想売りが出る可能性はあるが、それ以上でもそれ以下でもない」と話した。
ブルームバーグのデータによると、直近の昨年12月に起債された三井住友フィナンシャルグループ(FG)のAT1永久劣後債は、発行から5年6カ月後に期限前償還(コール)可能になるNC5年6カ月が、買収合意発表前の17日時点で前日比18銭安の99円87銭。一方、同NC10年は1銭高の99円94銭だった。
20日のアジア市場では、東亜銀行(バンク・オブ・イースト・アジア)のドル建て永久債などアジアの金融のAT1債の一部が記録的な下げに見舞われた。
国内の発行市場では、三井住友FGと三菱UFJフィナンシャル・グループが4月にAT1永久劣後債をそれぞれ起債する予定となっている。
AT1債は調達資金をその他Tier1(資本の基本項目)に算入でき、自己資本の増強を目的に発行される。スイスの連邦金融市場監督機構(FINMA)がウェブサイトに掲載した声明によると、中核的自己資本拡充のためクレディSのAT1債の価値はゼロに切り下げられる。
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