スイス国民1人当たり負担額180万円も-クレディ・スイス救済で
Bryce Baschuk、Bastian Benrath-
納税者負担は最大1090億スイス・フラン-政府が支援のため用意
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抗議行動もあるが、最終コストが政府設定の上限に達する可能性低い
スイスが金融センターとしての評価を強固なものとするために、国民は男性、女性、子供を含め1人当たり1万2500スイス・フラン(約180万円)の負担を強いられる可能性がある。
クレディ・スイス・グループが同業UBSグループに緊急で売却されるのを支援するためスイス政府は流動性に関する保証を含め最大1090億フランを用意することを約束したが、人口870万人のスイスにとってこれは大きな負担だ。
それに加え、19日発表された合意に基づくと、スイス国立銀行(中央銀行)は政府保証がない1000億フランの流動性支援をUBSに提供する。
計2090億フランはスイスの国内総生産(GDP)の約4分の1に相当し、2021年の欧州全体の防衛費を上回る。スイスで過去最大となる企業救済コストは、08年に行われた600億フラン規模のUBS救済の3倍余りに達する可能性がある。
高額報酬を得ているバンカーに対する新たな救済策は抗議行動につながった。20日にはチューリヒの金融街中心地にあるクレディ・スイス本社前に約200人が集まり、「イート・ザ・リッチ」(金持ちを食いちぎれ)と繰り返し叫び、建物に卵を投げつけた。
チューリヒの税務コンサルティング会社MMEのパートナー、クリストフ・レヒシュタイナー氏は「十分に大きければ何でも手に入るという考え方にうんざりしている」とし、「法律は週末に変えられる」と語った。
金融面の保証に加え、スイス政府は株主の承認を省略する法改正に同意し、スイスの金融規制当局はクレディ・スイスの中核的自己資本拡充のため同行の「その他ティア1債」(AT1債)約160億フラン相当の価値をゼロに切り下げた。
レヒシュタイナー氏は電話で、「現時点で検討されている解決策は全てがうまくいけば、UBSが莫大(ばくだい)な利益を手にすることになる」と指摘。「クレディ・スイスをただ同然で手に入れ、政府が損失を支える」と批判した。
こうした不満はあるものの、金融専門家は最終的なコストが政府の設定した上限に達する可能性は低く、何もしなかった場合のコストの方がはるかに高いと見る。
ザンクトガレン大学のスイス銀行・金融研究所のディレクター、マヌエル・アマン氏は政府保証が付いたスイス中銀の1000億フランの流動性支援について、「リスクはやや限定的とみている」とし、「クレディ・スイス買収で生じ得る損失という点で政府が保証する90億フランの方がリスクは大きいとみている」と分析する。
アマン氏は、政府保証付きの1000億フランについては「統合会社が破綻した場合に限り支払い責任が発生するだろう」とし、「今のところ、これはかなり確率が低い」と指摘した。
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原題:Swiss Are On the Hook for $13,500 Each on Credit Suisse Bailout(抜粋)