NECはマスクを着用したまま衛生的に使える顔認証エンジンを開発した。新型コロナウイルスの感染防止策として口元を覆うマスクの着用が拡大するなか、パソコンの起動や施設の入退場などで本人確認のために広く活用されている顔認証技術を感染拡大以前のように使用可能にする。10月上旬からサービスを販売開始する。

 一般的な顔認証は本人と「似ている他人」を区別するため、目や鼻、口の位置、形、大きさといった特異点を抽出して人物を認証する。新しい顔認証エンジンでは、まずマスク着用の有無を判定し、マスクを着用している場合は両目の周辺の特徴を集中的に抽出・照合する。同社はすでにマスク着用時の顔認証が技術的に可能だと確認していたが、新型コロナ以後の「ニューノーマル(新常態)」に合わせて実用化したかたちだ。

 社内検証では99・9%の高い認証精度を確認。今後はマスクを着用しない場合と同様に顔認証を使用できるようになる。また、さまざまな色や形のマスクでも認証可能なことを確認した。まずは9月30日までにNEC本社ビル(東京都港区)の入退場ゲートに導入し、実際の使用環境を使った検証を開始する。

 ニューノーマルでは感染防止の観点から、顔認証のほかに瞳のパターンを読み取る虹彩認証といった光学的な非接触認証の活用が期待されている。指紋や生体情報を使わないICカードによる認証は身体接触が必要で、非接触の場合も音声認証では人体からの発声をともなうためだ。

 NECはこうしたバイオメトリック認証分野の国際的なトップランナーで、静脈や耳などさまざまな生体情報を組み合わせるマルチモーダルの認証サービス「バイオイディオム」も併せて提供開始する。例えば食品や医療など、業務で作業者がマスクを着用する場面では、同時にゴーグルで目の周囲を保護している場合が多い。仮に顔単体で認証が困難な使用環境でも、マルチモーダル認証やICカード、個人端末と組み合わせて対応する。

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