就活生が選んだ「印象のよい面接官がいた会社」ランキングの首位は日本航空(JAL)だった(撮影:尾形文繁)

就活の最後の関門が面接だ。学生は早く内定がほしいと願う。企業も内定を出したいと思うが、内定を辞退する学生を避けたいので、本気で志望しているのかどうかを見極めたいと考える。

志望度や適性を見極めるために根掘り葉掘りの質問が繰り返され、学生に嫌われることもある。圧迫面接とネットに書き込まれることもある。逆に、学生が感動する面接官もいる。そして学生はより強く志望するようになる。どういう面接官が学生に好感されているのか?

HR総研が「楽天みん就」と共同で、2020年卒就活生を対象に「印象のよい面接官がいた会社」を1人1社だけを選んでもらった(有効回答数:1489人)。上位の14社(1位〜9位)を紹介しよう。

学生の志望度は「面接官」に影響される

就活ステップを端的に説明すると、自分(適性)を理解し、仕事(職種)を知り、業界と企業を研究する工程だ。志望先を企業研究によって絞り込み、エントリーする。


『就職四季報』特設サイトはこちら

数十社にエントリーする学生は珍しくないが、正式な企業説明会や面接は3月以降に集中するので日程調整は容易ではない。出席できた説明会や面接の中から選ぶことになる。そして最も志望度に影響するのは面接官だ。

面接官が志望度に「非常に影響した」学生は文系で51%、理系で42%、「影響した」は文系で40%、理系で43%だ。合わせて文系91%、理系85%が影響を受けている(2019年6月、HR総研調べ)。理系は文系より影響されることが少ないが、専門性が高いからだろう。

「影響した」にもプラスとマイナスがある。圧迫面接などの上から目線の面接官に対しては嫌悪する学生が多い。逆に、志望度を上げる面接官もいる。

印象のよい理由で共通するのは「傾聴力」だ。話を遮らず、言葉に詰まっても待ち、学生を理解しようとする面接官を評価している。学生コメントで目立つキーワードは「笑顔」「うなずき」「よく聞いてくれた」「見てくれた」などだ。どの企業に対しても同じような言葉が使われているが、言葉の使い方に注意するとニュアンスの違いがわかる。

トップ10(同率9位が6社あるので14社)の1位は、文系18でポイント(理系は0ポイント)を獲得した日本航空(JAL)だ。大学クラスを見ると、「その他私立大」と「上位私立大」の女性が多そうだ。

「和やか」「話しやすい雰囲気」「圧迫など一切なく、つねに優しい」などの言葉があり、柔和な大人が面接し、学生の話を聞こうとしている様子が伝わってくる。

「一人ひとりの話を聞いてくださっている印象であったため」(文系・その他私立大)

「柔らかな雰囲気でお話を聞いてくださった」(文系・上位私立大)

「こちら側の話に興味を持って聞いてくれ、リアクションをしてくれたこと」(文系・早慶大クラス)

学生を尊重する東京海上日動火災保険

2位は東京海上日動火災保険(文系15ポイント、理系1ポイント)だ。「一生懸命私のことを知ろうとしてくださった」(その他国公立大)や「緊張感漂う中でもより詳しく知ろうとしてくれた」(上位私立大)と学生を理解しようとする意欲が強いようだ。

旧帝大クラスと早慶クラスの多さも目立つ。学生の意思を尊重する企業であることもわかり、品性を感じる。学生の好感度は高い。

「笑顔でうなずきながら話を聞いてくれて、話しやすかった」(文系・旧帝大クラス)

「内定承諾を待ってくれた。ぜひ来てほしいからこそ、意思を尊重すると言ってくれた」(文系・旧帝大クラス)

「1人当たりに割く時間が非常に多く、また幼少期のことまで聞いてくれて、より多面的に自分を見てくれたと感じたから」(文系・早慶大クラス)

3位のアクセンチュア(文系9ポイント、理系5ポイント)は旧帝大クラスと早慶クラスが目立ち理系が多い。学生の感想は「面白い」「楽しい」とあり、ウィットのある会話だったようだ。そういう対応ができる面接官に知性を感じる。

「よく話を聞いてくれたため、逆質問への答えが面白かったため」(文系・早慶大クラス)

「面接が楽しかった」(理系・旧帝大クラス)

「こちらの受け答えにうなずいて聞いてくれた」(文系・旧帝大クラス)

4位の三井住友銀行(文系11ポイント、理系1ポイント)は学生に寄り添い、励ましている。若者を勇気づけようとし、学生にエントリーシート(ES)や面接の指導もしている。大人の分別を感じる。

「親身だった」(文系・上位私立大)

「志望動機など聞かず、幼少期からの私の人間そのものを見てくれた」(文系・上位私立大)

「ESの添削、面接の練習を行ってくださった。また、たくさん勇気づけられ、電話をいただくこともあった」(文系・上位私立大)

5位のNTTデータ(文系3ポイント、理系7ポイント)は、IT業界の大手企業。当たり前だが理系が多い。コメントを読むと、逆質問に対し丁寧に回答し、鋭いが優しく、肯定だけでなく提案する面接だ。

「逆質問の回答が丁寧だったから」(理系・旧帝大クラス)

「鋭い質問が多かったが、終始優しい雰囲気であった」(理系・上位私立大)

「話をよく聞いて、肯定するだけでなく提案をしてくれたから」(理系・上位私立大)

ANAは人物本位の面接

6位の全日本空輸(ANA、文系6ポイント、理系3ポイント)は人物本位の面接だ。学生の経歴でなく人柄を知ろうとし、言葉に詰まったときには前傾姿勢で待つ。面接官の人間力がわかる。

「今までの経歴ではなく、人柄をよく知ろうとしてくださっているのが伝わったから」(文系・早慶大クラス)

「笑顔で丁寧に対応してくださったため。言葉に詰まっても、前傾姿勢で待ってくださる」(文系・中堅私立大)

7位の三菱UFJ銀行(文系8ポイント、理系0ポイント)は笑顔を絶やさない。笑顔はコミュニケーションの基本。とても優秀な大人が面接しているように感じる。

「終始笑顔で、どんな話題でもフォローしながら話している感じだった」(文系・上位私立大)

「圧迫感がなく、笑顔を絶やさず、話しやすい雰囲気を作ってくれていた」(文系・その他私立大)

「素の自分を評価してくれるような対応だったから」(文系・旧帝大クラス)

同率7位のキヤノン(文系3ポイント、理系5ポイント)は理系が多い。言葉を大事にしており、詰まっても待ち、一方的な質問ではなく対話で面接を進めている。

「非常にこちらの話を聞いていただける姿勢を感じた」(文系・早慶大クラス)

「受け答えに対して、詰まっても待ってくれ、話しやすい雰囲気を感じたため」(理系・旧帝大クラス)

「一方的な質問でなく、対話によって面接を進めようという意図が感じられたため」(理系・中堅私立大)

柔らかい雰囲気を演出するオリエンタルランド

9位は6社。オリエンタルランド(文系7ポイント、理系0ポイント)はエンターテインメント企業らしく、うなずきながら柔らかい雰囲気を演出している。

「うなずいてくれたりと、話を聞いてくれている感じが非常に強かった」(文系・上位私立大)

「笑顔でずっと聞いてくれて柔らかい雰囲気を出してくれた」(文系・早慶大クラス)

日本郵政グループ(文系7ポイント、理系0ポイント)の物腰は柔らかいが、学生をよく理解してアドバイスしている。

「こちらに対する物腰が柔らかかった。近い距離で話ができた」(文系・旧帝大クラス)

「話をしっかりと聞いてくださり、最後はアドバイスもくださったから」(文系・上位私立大)

住友商事(文系6ポイント、理系1ポイント)に対するコメントを読むと、「本質」という言葉があり、対話で進めているようだ。知性が高い印象を受ける。

「本質に迫ってきた」(文系・上位私立大)

「一方的に質問をするのではなく、質問に対するコメントやフィードバックを加えながら面接をしてくださった」(理系・旧帝大クラス)

IHI(文系4ポイント、理系3ポイント)は伝統のある重厚長大産業の代表的企業だが、面接はカジュアルで活気に満ちているようだ。

「楽しかった」(文系・上位国公立大)

「活気があった」(理系・中堅私立大)

東海旅客鉄道(JR東海、文系4ポイント、理系3ポイント)で目立つのは親身さ。面接官の傾聴力は高い。

「話を聞いてくれている感覚がある」(文系・旧帝大クラス)

「親身になって話を聞いてくれる」(文系・上位私立大)


上のロゴをクリックするとHRプロのサイトへジャンプします

日立製作所(文系3ポイント、理系4ポイント)は日本を代表する企業だが、面接官は「褒める」「面白い」とウィットに富んでいる。

「褒めてくれる」(文系・上位私立大)

「面白い質問をされたから」(理系・旧帝大クラス)

「印象のよい面接官がいた会社」を紹介してきたが、今回のコメントを見ると、面接官には個性があり、品性、知性、鷹揚さ、優しさ、温かさとさまざまだ。

「話を聞いてくれる」かが重要

ただし、学生が好感する理由は「自分の話を聞いてくれているか」という傾聴力だ。面接は自分をアピールする場だから、当たり前と言えば当たり前だが、「聞いてくれない」企業があることの証明にもなっている。いい採用をするためには「誰を面接官に起用するか」がとても大事である。