iPhoneは再び好調に、しかし懸念もいくつか…2020年のアップルはどうなる

ティム・クックCEO

アップルのティム・クックCEO。

REUTERS/Carlo Allegri

  • 2020年がアップル(Apple)にとって重要な1年になるだろうという兆候が、すでに現れてきている。アナリストたちは、2020年、iPhoneが1年にわたる売り上げ不振から復活し、AirPodsは年間を通じて売れ続けるだろうと予測する。
  • 次のiPhoneとiPad Proで、アップルが主要製品でどこへ向かおうとしているのかを垣間見ることができる。
  • だが2020年、アップルも他の大手テック企業と同様に、その規模と影響力が競争を阻害しているのではないかという懸念に、引き続き取り組まなければならない。

2019年は、アップルにとって波瀾に満ちた1年だった。

iPhoneの売り上げ不振、iPhoneへの追加関税回避有名幹部の退社、その規模と影響力が業界において競争を阻害しているかどうかをめぐるアメリカ司法省や連邦政府からの厳しい監視などがありながら、パーソナル・ファイナンスデジタル・エンターテインメントといった、新たな事業を展開した。

同社は今後、スマートフォン業界における優勢を取り戻しそうだ。アナリストたちは今年発売の5G対応のiPhoneが顧客に買い替えを促すと楽観的に見ている。大人気のAirPodsも、一年を通じて売れ続けるだろうと予測している。だが、2019年にアップルを取り巻いた問題、独占禁止法に抵触していないかなどは、すぐには解決しそうもない。

2020年に何がアップルを待ち受けているのか見てみよう。

iPhone 12が、スマートフォン・ビジネスを成長軌道に戻すと予測される

iPhone

Crystal Cox/Business Insider

iPhoneはスランプだ。2019年は年間を通じ、収益が前年比マイナスとなっていた。この穴は、サービスおよびウェアラブル部門の増収で辛うじて相殺することができた。特に、AirPodsとApple Watchなどが2019年にヒットしたためだ。

だが、5Gの利用が可能となる2020年のiPhoneの発売が、スマートフォン・ビジネスを成長軌道に戻すとアナリストたちは指摘する。これには大きく2つの理由がある。まずは、5G対応と予測されている他の新たな機能は、消費者に買い替えたいと思わせるのに十分なアップデートであるということ。そして2つ目は、2020年には買い替えを考えているiPhoneユーザーがここ数年の中でも特に多いと予想されることだ。

ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダニエル・アイブズ(Daniel Ives)氏は、アップルが2020年に「iPhoneスーパーサイクル」に向かうと考え、iPhoneユーザー約3億5000万人が「買い替え時である」と、最近の顧客への報告で予測している。9月の発売に先駆け、投資銀行のカナコード・ジェニュイティ(Canaccord Genuity)、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)、レイモンド・ジェームズ(Raymond James)のアナリストたちは、iPhoneは2020年、5Gの登場とともに成長軌道に戻ることが予測されると指摘。アップルも、iPhoneの売り上げは2020年に再び伸びると予測していると、2019年10月にブルームバーグが報じた。

AirPodsの人気は継続し、ウェアラブル市場のトップの座を不動のものにする

AirPods

Crystal Cox/Business Insider

AirPodsは2016年からあるが、2019年に突如、大ブレークした。この年、アップルは2種類の新型AirPodsを発売。ワイヤレス充電(対応ケースはオプション)とSiriのハンズフリー起動が可能となった初代のアップデート版と、アクティブノイズキャンセリングと耐汗耐水性能を搭載して新デザインとなったより高価なProモデルだ。

アップルはAirPodsの具体的な売上高を明らかにしていないが、250ドル(約2万7000円)のAirPods Proは10月の発売以来ヒットを続けていると複数のレポートが示唆している。ニッケイ・アジア・レビュー(Nikkei Asian Review)によると、需要に追いつくためAirPods Proの生産を倍増するとも言われ、ウェアラブル機器、HomeKitとアクセサリは、AirPodsとApple Watchの売り上げ好調に伴い50%以上成長した。

アナリストたちはこの成長が2020年いっぱい続くと予測している。CNBCが報じたところによると、バーンスタイン(Bernstein)のトニ・サッコナーギ(Toni Sacconaghi)氏が、2019年のAirPodsの売り上げは60億ドル(約6570億円)になる見込みで、2020年には150億ドル(約1兆6200億円)の収益を生み出すだろうと最近のメモに記した。これは先のアイブズ氏の予測と合致している。同氏はAirPodsの出荷は2019年の6000万台から、2020年には8500万から9000万台まで伸びるだろうと述べている。

拡張現実(AR)により注力し、次なる主力商品誕生のきっかけとなる可能性がある

iPad

Justin Sullivan/Getty

次世代iPhoneとiPad Proは3Dカメラを搭載すると予測されている。これにより、AR体験はより本格化するとブルームバーグは報じている。こうした機能の追加で、アップルのモバイル・ガジェットは現実世界をより正確にスキャンし、より忠実にデジタルで再現し拡張することが可能となる。長年発表が囁かれているARヘッドセットの実現には重要なポイントだ。iPhoneはARアプリに対応してきたが、ARを中心に据えることで、テクノロジーの活用が進み、開発が囁かれるARヘッドセットの需要を生み出すことにもなる。

アップルがウェアラブルARガジェットに取り組んでいることを示唆するレポートは昔からあるが、そのアプローチは時とともに変化している。2017年、ブルームバーグはアップルがスクリーンだけでなくプロセッサ、OSも備えた、出力をスマートフォンに依存しないスタンドアロン型ARヘッドセットを開発中と報じた。TFインターナショナル証券のアナリスト、ミンチー・クオ(Ming-Chi Kuo)氏による10月のレポートは、サードパーティーと協力してiPhone向けARアクセサリを2020年の第2四半期に発売する可能性を示唆した。また、2021年ないし2022年にARと仮想現実(VR)を組み合わせたヘッドセットを、2023年には軽量のARグラスを発売する計画もあると、ブルームバーグの最新レポートは述べている。

ティム・クックCEOは、ARとそれが顧客にもたらす価値に大きな期待を寄せている。クックCEOは長きにわたりこのテクノロジーへの支持を表明しており、2018年第1四半期の決算報告の際には、ARは「奥深く」、「人間の能力を拡張する」可能性があると見ていると述べている。

だが、新たなサービスがうまくいくかという問題は残る。例えばApple TV+

Apple TV+

Tony Avelar/AP

アナリストたちは、アップルのプレミアム・デジタルエンターテインメント・サービス、Apple TV+が、動画配信市場において、登録者を獲得することができると確信している。市場はネットフリックス(Netflix)の独占状態だが、徐々にディズニー(Disney)のような新規参入企業が競合できるようになってきている。

だが、2020年はApple TV+にとって非常に重要な年だ。2019年にアップルのデバイスを購入した顧客の多くは、12カ月の無料お試し期間が終了する。そのときには月額5ドル(約540円)を支払う価値があるかどうかを決断しなければならない。

バークレイズ(Barclays)のアナリストたちの予測では11月にサービスを開始したApple TV+は初年度で登録者数1億人を獲得することも可能だとCNBCは報じている。だがウェドブッシュ証券は、登録者数1億人の突破には3年から4年はかかるだろうと述べている。フロスト&サリバン(The Frost & Sullivan)のアナリスト、ダン・レイバーン(Dan Rayburn)氏は初年度は1000万人程度だろうと述べた、とフォーチュン(Fortune)は報じている。

アップルの規模や影響力が、特にApp Storeの運営面で強大過ぎるのではないかという懸念は続くだろう

ティム・クックCEO

Justin Sullivan/Getty Images

アップル、グーグル(Google)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)といった大手テック企業は2019年、競争を制限していないかどうか、厳しい監視を受けた。これはおそらく2020年もなくなることはないだろう。

例えば7月、アメリカ司法省は、オンライン検索、ソーシャルメディア、eコマースで市場をリードするプラットフォームの徹底的な調査を開始すると発表した。アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾンの代表は、下院の委員会でそれぞれの規模と影響力が競争にどう影響するかについて、厳しく問われた。

アップルが特に厳しく監視されているのはApp Storeだ。自社も競争に参加しているアプリ市場で、プラットフォームを自ら運営することが許されるのかどうかという懸念は以前からある。

「どちらかでなければならない」と2020年の大統領候補、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は以前、アップルのApp Storeとの関係についてザ・バージ(The Verge)に述べた。「プラットフォームを運営するか、ストア内での競争に加わるか。両方を同時に行うことはできない」

アップルが、Apple MusicやiPhoneの使用時間管理機能といった独自のアプリやサービスを開始するにつれ、アプリ開発者の中には、アップルの立場が不当に優位性を与えるのではないかとの考えを示す者もいる。例えば4月、ニューヨーク・タイムズは、アップルがiPhone向けのペアレンタル・コントロール・アプリを開始した際、同じ機能を持つ他社のアプリを一部削除または制限したと報じた。音楽ストリーミング大手Spotifyも今年初め、アップルに対し独占禁止法違反の申し立てを行った。Spotifyによると、App Storeでの取引の30%がアップルの取り分となるため、価格で勝負することが難しくなっている。

アップルはウェブサイトで、開発者の成功に投資していると述べており、アプリ開発者には他にも利用できるチャンネルがあると付け加えている。だが、独占禁止法に抵触していないかについては、 2020年も引き続き、議員と業界オブザーバーが注目するところであり、再び取り上げられる可能性があるだろう。

編集部より:初出時、「2019年のAirPodsの売り上げは600万ドル(約6億5000万円)になる見込み」としておりましたが、正しくは「60億ドル(約6570億円)」です。お詫びして訂正致します。 2020年1月10日 15:00

[原文:Next year is shaping up to be a huge moment for Apple as it's expected to reclaim dominance of the smartphone industry — here's what to expect in 2020 (AAPL)

(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)

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