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日米欧製薬団体とIFPMA G20大阪サミットに向け共同声明 世界の「UHC実現」にアクセル

公開日時 2019/06/05 03:52
日米欧の製薬3団体とIFPMA(国際製薬団体連合会)は6月4日に東京都内で記者会見に臨み、6月28~29日に開催されるG20大阪サミットに向けて、日本の国民皆保険制度である「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現」に製薬産業として協力していく共同声明を安倍晋三首相に提出したことを明らかにした。健康、医療、予防・先制医療の各分野について、G20を通じ、日本の主導的な立場を世界に広める狙いが込められる。製薬産業としては、産官学のパートナーシップを通じて革新的新薬を創出し、AMRなどの世界的課題に貢献する。また、ビッグデータやAI(人工知能)を利活用した「データ駆動型医療システム」への変革を促し、高齢化社会に対応するUHCの実現にさらにアクセルを踏むよう要望した。

◎6月3日に安倍首相に共同声明を提出

国際製薬団体連合会(IFPMA)、日本製薬工業協会(製薬協)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の4団体が共同声明を取りまとめた。グローバルの研究開発型製薬企業を代表する最高責任者らが集う“バイオファーマシューティカルCEO・ラウンドテーブル”を開催し、6月3日に共同声明を安倍晋三首相に手渡した。

具体的には、①ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の実現、②革新的新薬創出によるアンメットメディカルニーズの解消、③データ駆動型医療システムへの変革―の課題解決に向け、G20の議長を務める安倍首相のリーダーシップを求めた。製薬業界側も全面協力することで、これら課題解決に取り組み、「世界中の人々の健康に全力を尽くす」ことを表明した。

◎革新的新薬の創出に取り組む覚悟滲ませ

声明では、製薬企業として健康社会の実現に向けて革新的新薬・医療技術の創出に取り組む覚悟を示した。高額な革新的新薬が数多く登場するなかで、先進国に限らず、低・中所得国でも革新的な新薬へのアクセスが課題となっている。グローバルヘルスの課題としてはAMR(薬剤耐性菌)など克服すべき課題が目前に迫っており、産官学が一体となったプラットフォームの構築などが重要だと指摘した。そのうえで、こうした領域での「薬事規制のハーモナイゼーションや各国政府から実効性のあるインセンティブが革新的な技術に対して付与されること、具体的には予測可能、かつ妥当な知的財産権の保護」を求めた。データ保護については、単独で議論するのではなく、「医療制度の本質的な課題と関連付けながら検討する必要がある」ことも盛り込んだ。

一方でこうした施策の実現にはAIを活用したビッグデータの解析が重要と指摘。治療だけでなく、予防や早期診断・治療、個別化治療、医療の効率化・適正化など連携の取れた“統合的な医療システム”へと変革が必要と指摘。世界に先んじて高齢化社会に突入し、“健康長寿社会”に臨む日本政府は、「高齢化社会に対応するUHCを実現させる力を持った国」であり、G20において主導的な立場で臨むべきとの見解を示している。

さらに革新的新薬の創出に向けて、リアルワールドデータ(RWD)の利活用を通じ、臨床試験で対照群(プラセボ)を置かない臨床研究の実現など、研究開発期間の短縮や効率化が見込めると強調。「結果的に我々の新薬を患者さんにより早く届けることができる」との見解を明示した。

◎製薬協・中山会長 「医療情報とゲノム情報が一体化したDB」構築求める

日本製薬工業協会(製薬協)の中山讓治会長は同日の会見で、「各国のCEOが日本のシステムに強い信頼感を持ち、さらに積極的な投資が日本になされ、その結果として新薬が生み出され、患者の苦しみを救うと信じている」と述べた。そのうえで、今後予防・先制医療の重要性が増すなかで、「ビッグデータと呼ばれる医療情報とゲノム情報が一体化したデータベースがあると、治験の短縮化やコスト軽減に貢献し、大きな医療の変革をもたらすことができる」と強調。国内でもがんゲノム医療実現に一歩踏み出した状況の中で、法整備を改めて求めた。

IFPMAのデイビッド・A・リックス会長(イーライリリー・アンド・カンパニー会長&最高責任者)は、細胞・遺伝子治療など革新的技術が登場する時代を“エキサイティング”と評した。そのうえで、慢性疾患には遠隔診療を活用し、医療へのアクセスを向上させることで、医療保険財政への影響を緩和できるとの考えを表明。新たな技術と、テクノロジーによる効率化を組み合わせることの重要性を強調した。

PhRMAのオリヴィエ・ブランディクール会長(サノフィCEO)は、隣国の中国で医薬品市場へのアクセスで法規制が整備され、グローバルメガファーマの熱い眼差しがこの市場に注がれることに警鐘を鳴らしながら、「日本は革新的医薬品創出について世界的リーダーだが、これから諸外国との競争は激化する。日本はそのポジションが危ういかもしれない。日本政府に協力し、日本の障壁や課題の特定・解決に貢献していきたい」と述べた。

EFPIAのジャン・クリストフ・テリエ会長(ユーシービーCEO)は、ビッグデータの利活用で様々なプレイヤーとの協業の必要性を強調した。そのうえで、日本は1か国でデータを集積できるメリットがあるとして、「追加的価値を患者のために使うことを積極的に考えてほしい」と訴えた。
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