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小野薬品 新型コロナ治療薬候補のフオイパン P3の結果次第で21年度上期に申請へ

公開日時 2021/05/12 04:50
小野薬品の相良暁社長は5月11日にウェブで開いた2020年度決算会見で、慢性膵炎治療薬フオイパン錠(一般名:カモスタットメシル酸塩)の新型コロナウイルス感染症の適応追加について、現在実施中の臨床第3相試験(P3)の結果次第で、21年度上期に承認申請するとの見通しを示した。P3は5月末までに投薬及び観察が完了する予定。相良社長は、「6月に判断して、申請にもっていきたい」、「できる限り早く進めたい。上期中に当社としての結論は出ると思う」と述べた。最主力品のがん免疫療法薬オプジーボは21年度の売上予想を1200億円(前年度比21.4%増)と設定したが、21年度中に再び適用される見通しの市場拡大再算定の影響は折り込んでいないと説明した。

新型コロナの原因ウイルスであるSARS-CoV-2は、人の気道などの細胞にあるACE2受容体に結合した後、ウイルス膜と細胞膜を融合させて侵入し、感染する。膜融合を起こすには、細胞側の蛋白分解酵素TMPRSS2にウイルス表面のスパイクタンパク質を切断させる必要がある。フオイパンはこの酵素の働きを抑えるメカニズムを有することから、新型コロナへの有効性が期待されている。

現在、新型コロナの患者を対象に二重盲検無作為化比較試験を実施中で、フオイパン600mgまたはプラセボを1日4回経口投与し、有効性、安全性を検証している。同試験開始時の予定被験者数は110人としていた。

出光清昭・開発本部長は会見で、「(P3で)良いデータが出たら、データを固定して承認申請する」と述べるとともに、「期待通りにデータが出れば、21年度中の承認の可能性があると思っている」との認識を示した。

◎20年度は増収増益 オプジーボ、フォシーガ、オレンシアなど2ケタ成長

同社の20年度連結業績は売上3092億円(前年度比5.8%増)、営業利益983億円(26.9%増)となるなど増収、各利益段階で2ケタの増益となった。新薬群が好調で、なかでもオプジーボは売上988億円、前年度比13.2%増と成長した。20年2月に承認を取得した食道がん適応での使用が拡大したことが成長要因のひとつとなる。20年11月に慢性心不全の適応を追加したSGLT2阻害薬フォシーガは224億円(23.7%増)、抗リウマチ薬オレンシアは219億円(10.4%増)――となるなど多くの新薬で2ケタ成長し、20年度に後発品が登場した抗認知症薬リバスタッチなど長期収載品の減収をカバーした。

オプジーボやキイトルーダに係るロイヤルティ収入も伸び、20年度の「ロイヤルティ・その他収入」は947億円(9.1%増)だった。

◎オプジーボ再算定に「薬だけでなく、広く医療費財源を考えていただく時期」

21年度は連結売上3500億円(13.2%増)、営業利益1050億円(6.8%増)を目指す。成長ドライバーはオプジーボ、フォシーガ、オレンシアや、4月発売のがん悪液質用薬エドルミズ、3月に承認された変形性関節症治療薬ジョイクルなどの新薬群となる。

このうちオプジーボは売上1200億円(21.4%増)を目指す。20年11月から非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療に、免疫療法薬ヤーボイとの併用など3つの用法で可能になったことや、21年度中に承認取得を見込む胃がんに係る1次治療が、オプジーボの主な成長要因となる。NSCLSの市場では競合品のキイトルーダがシェア約62%、オプジーボは約16%という。3つの用法でNSCLCの1次治療に使えることを訴求して患者貢献し、シェア30%を目指す。

オプジーボをめぐっては、12日に開催予定の中医協で、薬価を8月1日付で11.5%引下げる市場拡大再算定を行うかどうかが審議される。相良社長は売上計画の1200億円に今回の再算定は反映させていないとした上で、「(再算定の)ルールについては議論の余地を感じている。今後の課題と思っている」と話した。同剤は14年の上市時点から薬価が4分の1になり、さらに今回11.5%引下げられることに触れながら、「薬だけでなく、広く医療費財源を考えていただく時期にきているとの感想も持っている」とも強調した。

◎21年度承認見込みプロジェクト オプジーボで胃がん1次治療、食道がん術後補助療法など

21年度に国内で承認取得が見込まれるプロジェクトは多岐にわたる。順調に開発・審査が進んだ場合、例えばオプジーボでは21年度に、胃がんの1次治療、悪性胸膜中皮腫に対するヤーボイとの併用療法、腎細胞がんに対するキナーゼ阻害薬カボメティクスとの併用療法、小児のホジキンリンパ腫、食道がんの術後補助療法、尿路上皮がんの術後補助療法――が承認される見込みだ。オプジーボ以外では、フオイパンの新型コロナ適応や、パートナー企業のアストラゼネカが承認申請しているフォシーガの慢性腎臓病(CKD)の適応追加の承認取得が期待される。

◎すい臓がん、肝臓がん、大腸がんでオプジーボ併用療法を探索

同社はオプジーボを日本、韓国、台湾で、アジアに多い消化器系のがんで展開する戦略も掲げている。相良社長は、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体で十分な効果が出せていない消化器がんの▽すい臓がん▽肝臓がん▽大腸がん――でも患者貢献していきたい意向を示し、「オプジーボの併用薬を探索することでこれらのがんにリーチしていくことが、オプジーボの課題と認識している」と述べた。

◎個別面談はリモートでも効果的 新しく開拓する領域に「リモートでは難しい」

市川弘・営業本部長は会見で、コロナ禍の中で1年間、営業活動を展開した経験から、MRによる個別の医師面談はリモートでも効果的な面があったとの感触を示した。一方で、「反対に思うのは、リアルの重要性」とも振り返り、「特に新しく開拓しなければならない領域はリモートでは難しいところがある」と述べ、リアルとリモート両面の利点と欠点を踏まえた活動を展開していく構えをみせた。

【20年度連結業績 (前年同期比) 21年度予想(前年同期比)】
売上高3092億8400円(5.8%増) 3500億円(13.2%増)
営業利益983億3000万円(26.9%増) 1050億円(6.8%増)
親会社帰属純利益754億2500万円(26.3%増) 830億円(10.0%増)

【20年度の国内主要製品売上高(前年同期実績) 21年度予想、億円】
オプジーボ 988(873)1200
フォシーガ 224(181)300
グラクティブ 255(261)245
オレンシア 219(198)(174)225
パーサヒブ 81(71)80
カイプロリス 71(60)75
オノアクト 47(49)40
オパルモン 55(83)40
ベレキシブル 21(-)35
リバスタッチ 66(85)30
ビラフトビ 11(-)30
メクトビ 10(-)25
オノンカプセル 29(35)25
オンジェンティス 3(-)25
21年度新発売品(見込みを含む) -(-)70

ロイヤルティ・その他 947(868)1050
*BMSからオプジーボに係るロイヤルティ収入が19年度616億円、20年度598億円――、メルクからキイトルーダに係るロイヤルティ収入が同193億円、243億円――がそれぞれ含まれる。
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