情報セキュリティー株が軒並み高 仮想通貨流出事件で思惑
29日の東京市場ではサイバーセキュリティー関連銘柄の売買が盛り上がり、ウイルスメール対策が主力のFFRIなどが大幅高となった。仮想通貨取引所大手のコインチェックから大量の仮想通貨が流出した事件を受け、セキュリティー関連の需要が拡大するとの思惑から短期マネーが活発に流入したようだ。
FFRIは一時前週末比10%高まで急騰。大企業や自治体向けにサイバーセキュリティー製品を販売するセグエグループも一時9%高となった。同業のセキュアヴェイルは21%高と制限値幅の上限(ストップ高水準)のままで取引を終えた。
コインチェックでは26日に自社システムに不正アクセスがあり、仮想通貨の一種である「NEM(ネム)」約580億円分が抜き取られた。「社会問題化する規模であり、他の取引所も『安全』を全面に出さざるを得なくなる」(仮想通貨事業を手掛ける金融関係者)という。こうした思惑から個人投資家による物色が活発になったようだ。
今回の騒動では仮想通貨取引所の収益性にも注目が集まった。コインチェックは28日未明、ネムについて、失われた分を時価で再評価したベースで全額に当たる約460億円を補償すると発表した。スケジュールは未定で原資も不明とあやふやな段階だが、仮に手元現金ならかなりの高収益ビジネスだったことになる。
その結果、グループ内に仮想通貨取引所事業を手掛ける企業があるフィスコやGMOインターネットなどにも資金が向かった。仮想通貨ビジネスの準備をしているSBIホールディングスも大幅高となった。コインチェックによる「敵失」により、今後、ライバル企業は顧客を獲得しやすくなるとの思惑も意識されたようだ。
市場では「システム需要は膨らむだろうが、かつての外国為替証拠金(FX)市場のように、規制強化などで仮想通貨市場の拡大自体にブレーキがかかる可能性もある」(カブドットコム証券の河合達憲氏)との声も聞かれ、セキュリティー関連銘柄などの先行きを慎重に見る向きもあった。