マツキヨ、ココカラとの経営統合も検討
スギHDに対抗、争奪戦の様相が鮮明に
マツモトキヨシホールディングス(HD)は5日、資本業務提携を協議中のドラッグストア大手ココカラファインと、経営統合も含めて検討を進めると発表した。提携にとどまらず、統合まで踏み込んで協力関係を模索する。ココカラはスギHDとも経営統合の協議を始めている。マツキヨHDは選択肢の幅を広げて交渉を有利に進めたい考えで、ココカラ争奪戦の様相が一段と鮮明になってきた。
マツキヨHDは「あらゆる選択肢の検討と協議を進める」との方針を同日、ココカラに示した。両社は4月26日に資本業務提携の検討に入ると発表。プライベートブランド(PB)商品の開発・販売、医薬品の調達、物流網の協力を目指し、実務担当者同士でも相乗効果を精査してきた。
マツキヨHDは経営統合を提案した理由について「協議を重ねた結果、企業価値の最大化には統合を含めた広い選択肢を用意すべきだという結論に至った」とした。
ココカラを巡っては、マツキヨHDとの資本業務提携の検討開始の発表を受け、スギHDが4月27日付で経営統合案を策定。ココカラは4月30日に書類を受領し、約1カ月かけて内容を吟味。この結果、両社でも協議に入ると6月1日に発表していた。
マツキヨHDはこれまで「対等な資本業務提携にし、一緒に転ばないようにする必要がある」(松本清雄社長)とし、経営の独立性をそれぞれ維持する考えを強調してきた。だが、スギHDとの事実上の争奪戦に発展したことで、マツキヨHDも統合を視野に入れる方針を内外に示した。経営統合を提示したスギHDへのけん制ともとれる。
スギHD株の4割は創業家が握る。創業家色の薄いココカラと統合した場合、スギHD創業家の強い支配下に置かれる懸念がある。対等な統合を目指すスギHDは役員構成で配慮する意向を伝えているもようだ。
一方、マツキヨHDの直近のコーポレートガバナンス報告書では、創業家の出資比率が少なくとも13%以上に達していることが分かる。スギHDより割合は小さいとはいえ、創業家が一定の影響力を持つ可能性がある。
ココカラは「早々に設置する特別委員会で両社の提案を検討し、判断する」としている。ココカラはスギHDと7月末まで、マツキヨHDと9月末までの合意を出す方針だったが、「時期は特別委員会に任せる」(マツキヨHD)という。
マツキヨHDの発表を受け、スギHDは「答える立場にないのでコメントはない」とした。スギHD幹部は5日、日本経済新聞の取材に「業界首位の会社をココカラと一緒につくりたいという方針は変わらない」と強調し、注力する調剤薬局事業などでの相乗効果を訴え続けていく考えだ。
18年度の売上高はマツキヨHDが5位、スギHDが6位、ココカラが7位となる見通し。どちらか一方の経営統合が実現すれば、現在首位のウエルシアHD(7791億円)を抜き去り、売上高1兆円近くでトップに躍り出る。業界の中では特に他社との連携に前向きで、創業家色の薄いココカラを逃せば、首位の座は遠のくとの焦りがあるようだ。
ココカラはマツキヨHDとの提携を協議しつつ、割って入ったスギHDとも並行して話し合いを進める両にらみの戦略をとる。ココカラにも好条件を引き出したい思惑がありそうだ。
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