都内自治体、台風19号被害関連費用 補正予算案に計上
河川の増水などで台風19号の被害が大きかった東京都内の自治体が、2019年度の補正予算案に施設の復旧費用や今後の台風に備えた対策費用を相次ぎ計上した。多摩市など複数の自治体は河川敷の運動、公園施設を修復する。狛江市などは水位計やポンプなど今後の減災につなげる取り組みを進める。20年度予算でも対応を迫られる自治体が出てきそうだ。
補正予算案で計上した項目で目立ったのは、運営する河川敷の運動施設や公園などの復旧費用だ。多摩川の増水で冠水し、利用できなくなる被害を受けた自治体が多い。多摩、日野、調布の各市や世田谷、大田両区は河川敷のグラウンドに入り込んだ土砂やゴミを取り除いたり、削り取られた地盤を固め直したりする費用を計上した。多摩市は追加で計上する。
八王子市は多摩川水系の浅川の増水で橋が破損したり、市内の農地が冠水したりするなど「過去に経験したことのない記録的大雨で、市内に大きな爪痕を残した」(石森孝志市長)。台風19号関連では、破損した橋や農地を修復するため、21億7000万円の補正予算を市長の専決処分で支出する異例の措置をとった。
将来の減災につながる取り組みでは、狛江市が多摩川に市内の雨水などを流し込む2つの排水路に取り付ける水位計や監視カメラの費用を計上する。同市では2カ所の水路の水門を開けたままにした結果、水があふれ出し、市南部を中心に床上、床下計約300棟の浸水が発生した。
同市に隣接し、排水路が上流にあたる調布市も排水路に水位計や監視カメラの設置、浸水被害の模擬実験解析などに6900万円を計上した。長友貴樹市長は「被害は両市とも大きく、原因特定も必要だ。調査では狛江市とも協調したい」とする。
高齢者や障害者など「避難行動要支援者」の避難のあり方も、改めて課題として浮き彫りになった。日野市は要支援者の台帳と、市内の洪水・土砂災害ハザードマップを重ね合わせるシステム改修費用を計上した。台風などの災害時に被災の危険が迫る要支援者を優先して避難させられるよう、警察や消防とも情報を共有しやすくする。
一方、施設の被害が大きく、復旧費用の計上が20年度予算以降になりそうなところもある。府中市は多摩川河川敷の野球、サッカー場の地盤がえぐられ利用できないままだ。高野律雄市長は復旧の見通しについて「まず国土交通省が護岸工事をしなければならず、メドが立たない」とする。
浸水の被害を受けた郷土の森総合体育館の電気設備も含め、復旧費用の計上は来年度予算以降になりそうだ。