三菱ケミカル、コロナワクチン「21年秋にも申請」
三菱ケミカルホールディングス(HD)の越智仁社長は24日に都内で開いた株主総会で、傘下の田辺三菱製薬がカナダで開発を進める新型コロナウイルスのワクチンについて「来年秋にも申請して認可を得られるようにしたい」と語った。
今後の成長戦略では「社会問題をリストアップし、対応製品を出していきたい」と、通信やヘルスケア関連の素材を強化する考えを示した。
株主総会の会場に出向いた株主の数はまばらだった。例年は2千人超集まるというが、今年は新型コロナの影響で数十人程度にとどまった。
三菱ケミカルHDは3月に田辺三菱製薬を完全子会社化した。田辺三菱製薬は新型コロナのワクチンの開発を進めており、カナダの子会社が8月以降に臨床試験(治験)を始める予定だ。三菱ケミカルHDの越智社長は「大変興味を持ってもらっている。カナダや米国の政府からも援助したいとの申し出がある」と述べ、今後の開発に全力を注ぐ考えを示した。
三菱ケミカルHDは現在、2021年度から25年度まで5カ年の次期中期経営計画を策定中だ。経営戦略部門長の池川喜洋執行役は「今後の5年間は非常に不透明感がある。新型コロナの影響は22、23年ごろまで続くと考えている。今回は2年間プラス3年間で考えていこうとしている」と語り、5年間の期間をさらに区切って経営計画を策定する考えを示した。
三菱ケミカルHDの業績は苦しい状況が続く。20年4~9月期の連結純利益(国際会計基準)はゼロになる見通しだ。自動車関連の素材の販売が減少することが響く。今期の年間配当予想も24円と前期比8円減らす。
名古屋市から出席した50代の個人投資家の男性は「配当減は不満。コロナの影響が収束した頃に再び成長ができるのか、見極めていきたい」と話した。越智社長が「リスクはチャンスでもある」と述べたように、コロナ禍の社会の変化を捉えた大胆な戦略を示すことが求められそうだ。
(福本裕貴)
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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