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東洋紡せんい 紡績技術で熱可塑複合材

2024年05月07日 (火曜日)

 東洋紡せんいは島精機製作所と共同で、炭素繊維と熱可塑性繊維の複合紡績糸「CfC yarn」を開発した。島精機のホールガーメント横編み機で、同紡績糸による熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)の中間基材に仕上げ、立体成形することにも成功した。

2025年春以降の本格販売を目指し、今後は国内外での展示会で訴求する。

 第1弾として、8~10日、インテックス大阪で開催される「第4回サステナブルマテリアル展(大阪)」に出展し、初披露する。

 CfC yarnは炭素繊維と、熱可塑性のナイロン6繊維の3層構造糸。芯部分のナイロン6長繊維を炭素繊維で覆い、さらにナイロン6短繊維を鞘部分に配した上で、ナイロン6長繊維が再度、糸全体をラップする。糸種は1K(1束千本の炭素繊維トウで構成)、3K、6Kを技術確立しており、現在は12K、24Kを評価中。

 東洋紡の富山事業所庄川工場(富山県射水市)に専用の試験機を置く。基本は糸売りだが、UDシート、織物、組ひもなどでも供給できる。

 CfC yarnは衣料用の長短複合糸「マナード」を参考にしつつ、3層構造糸「フィラシス」の技術を応用して開発した。熱可塑性炭素繊維複合材料向けには、他社が混繊糸(コミングルヤーン)を開発しているが、同社によるとコミングルヤーンよりも樹脂の含侵性が高いと言う。

 炭素繊維複合材料は炭素繊維を樹脂など異なる材料で固めて生産する。エポキシ樹脂など熱硬化性樹脂使い(CFRP)が主体だが、生産性や環境配慮から長期保存や再成形が可能な熱可塑性樹脂使い(CFRTP)が増えている。ただ、熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂の含侵性が悪いと強度が上がらず、柔らさがないと複雑な形状に成形しにくいなどの課題があった。

 CfC yarnはそれを解消するもので、ホールガーメント横編み機による中間基材を成形すると、熱硬化性樹脂使いと同等の性能を持ち、自由度の高い成形品が可能となる。

 同技術を応用し、現在のナイロン6繊維以外の熱可塑性繊維(ポリプロピレンやポリカーボネート)使いや、炭素繊維以外の高性能繊維を活用した、複合紡績糸の開発も視野に入れており、これらによって産業資材用途の開拓を進める。

紡績技術を産資に 珍しい衣料用途外

 日本の紡績はこれまで、さまざまな複合紡績糸を開発してきた。しかし、衣料用が大半で、複合紡績技術を産業資材用途に応用するケースはほとんどない。その面で東洋紡せんいのCfC yarnの開発は画期的な試み。2年前から開発をスタートし、含侵性の向上や柔らかさの追求などを試行錯誤。当初はUDシートで成形品の評価を進めていたが、島精機がホールガーメント横編み機を改造し、中間基材の制作を自動化する技術を確立したことを知り、アプローチ。共同開発に着手した。

 同社は非衣料分野の強化に取り組んでおり、その一環として、4月1日付で、技術開発部に新規事業開発グループも設けた。CfC yarnも新規事業開発グループが担当する。